医療費

2019年度医薬関係概算要求の概要

薬+読 編集部からのコメント

厚生労働省が2019年度の医薬関係費の概算を発表しました。
薬剤師・薬局の専門性の向上や機能強化などの推進枠は7億1500万円。そのうち薬剤師の専門性の向上は新規5000万円、薬局機能の強化が2憶2300万円となっています。

I 革新的な医薬品・医療機器等への迅速なアクセス確保、安全対策の充実等 【一部推進枠】20億3600万円

 

1.革新的な医薬品・医療機器等の実用化促進

 

(1)革新的医薬品等の実用化促進のための医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査体制の強化(新規:1億4300万円)

革新的な医薬品・医療機器等の実用化を促進するため、先駆け審査指定品目の審査チーム及び承認までに必要な工程の管理を行うコンシェルジュを拡充し、PMDAの審査体制の強化を図る。

 

(2)医薬品・医療機器等申請・届出手続のオンライン化(新規:4億4600万円)

医薬品医療機器申請・審査システムにオンライン機能を追加する改修を実施することにより、申請等資料を紙媒体で提出することなくオンラインでのデータ送信を可能とし、行政手続きの簡素化、事業者の負担軽減を図る。

 

(3)アジア医薬品・医療機器トレーニングセンター機能の充実(1億6200万円)

PMDAのアジア医薬品・医療機器トレーニングセンターにおいて、eラーニングによるセミナーを実施する。また、品質試験等の研修に関して、大学におけるアカデミアの研究技術力を生かした研修の提供体制を構築するためのパイロット事業を実施する。

これにより多くのアジア諸国等の規制当局担当者に効果的・効率的に研修の機会を提供する。

 

(4)小児用医療機器の実用化の促進(新規:1400万円)

小児用医療機器については早期開発が望まれている中、対象疾患は先天性疾患など患者数が少ないことや採算性の問題から、企業はその開発には積極的ではない。小児を対象とした医療機器の実用化を促進するため、小児用医療機器の承認申請手数料の支援を行う。

 

 

2.安全対策の充実、信頼性の確保

 

(1)MID-NET(医療情報データベース)の連携・拡充(5億7700万円)

医薬品等の安全対策の高度化を目的としたMID-NETの本格運用が本年度から開始され、企業やアカデミアによる利活用が可能となった。今後は、医薬品の開発から安全対策まで一貫して大規模医療情報を活用できる環境の整備を目指す。そのため、他の医療情報データベースとの連携や、データ規模の拡充に伴うデータの標準化を進める。

 

(2)GMP査察体制の強化(2億5700万円)

都道府県、PMDAの医薬品GMP担当者に対して実地研修を行うことや、都道府県が行うGMP査察に際して、PMDA職員または近隣都道府県のベテラン薬事監視員等が同行し、技術的助言・指導の強化を行うこと等により、日本全体のGMP査察レベルの強化を図る。

 

また、医薬品製造所に対する無通告査察体制を強化すると共に、製造所から収去した製品の試験検査体制を強化し、日本で製造される医薬品の品質に関する国内外での信頼性の向上を図る。

 

(3)革新的医薬品生産技術の品質確保(新規:1200万円)

日本で製造される医薬品の品質に対する国内外での信頼性向上を図るため、連続生産(※)に関するGMP調査のあり方を整理し、GMP査察のガイダンスを作成する。

 

※原料または混合物を連続的に製造工程内に投入し、製造後の生産物を連続的に取り出す生産方法。

 

 

(4)PIC/S総会・セミナーの開催(新規:3800万円)

PIC/S総会を来年11月に日本(富山県)で初めて開催することにより、GMP査察の国際調和に積極的に取り組み、加盟当局間での査察結果の相互利用を促進する。

 

 

(5)薬害の歴史展示コーナーの設置(新規:1300万円)

「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」(2010年4月)において、いわゆる「薬害研究資料館」を設置すべきとされ、その後の薬害肝炎大臣協議において被害者団体からも要望がされてきた。

こうした経緯を踏まえ、薬害の歴史や教訓への理解を深め、社会の認識を高めるために、PMDAの施設内に「薬害の歴史展示コーナー」を設置する。

 

II 地域包括ケアシステムにおける薬剤師・薬局の専門性の向上や機能強化 【推進枠】7億1500万円

 

1.薬剤師の専門性の向上(新規:5000万円)

地域包括ケアシステムの下で患者と医療機関、薬局をつなぐことができる薬剤師を育成していくことが必要である。そのため、医療機関が取り組む薬剤師の卒後研修に対して、研修指導員(医師・薬剤師)の人件費等を補助するモデル事業を実施し、将来の横展開につなげる。

 

2.薬局機能の強化(新規:2億2300万円)

薬機法の見直しの中で、薬局の果たすべき役割を整理し、地域包括ケアシステムにおいて、より国民・患者が利益を享受できるような医薬分業及びかかりつけ薬剤師・薬局を推進することとしている。このため、薬剤師・薬局が地域において果たすべき役割や薬局間・医療機関等との連携体制を構築するためのモデル事業を実施する。

 

また、「患者のための薬局ビジョン」の進捗状況に係る患者・国民視点の評価を把握するための調査を行うと共に、先進・優良事例を収集して事例集等を作成し、地方自治体等と情報共有することにより、かかりつけ薬剤師・薬局を推進する。

(参考:18年度限り)

 

患者のための薬局ビジョン推進事業費(18年度予算額:2億0700万円)

 

3.電子処方箋の普及・推進、電子版お薬手帳の利活用の推進(新規:1億2700万円)

電子処方箋については全国的な保健医療情報ネットワークの本格稼働に合わせて普及・推進が求められているため、18年度に実施する実証事業の結果を踏まえて、より効果的・効率的な電子処方箋の仕組みについて調査・検討を行う。

また、電子版お薬手帳については、その利活用を推進するための方策の検討(フォーマット・機能追加等)及び電子処方箋等との連携についての検討を行う。

 

4.一般用医薬品適正使用推進のための研修事業(新規:500万円)

消費者が安心して一般用医薬品を購入・使用できる環境を整備するため一般用医薬品の販売に従事する登録販売者の質の向上が必要である。このため、登録販売者が消費者の状況に応じてより適切に対応できるよう、研修プログラムの作成及び研修や指導が行える登録販売者の育成を行う。

 

 

III 医薬品等の適切な流通・販売の確保 【一部推進枠】1億3800万円

 

1.医療用医薬品の広告活動等の適正化(5100万円)

16年度に構築した医療用医薬品を対象とした広告活動監視モニター制度について、精神疾患や慢性疾患患者がいる中規模病院にもモニターの範囲を拡大する。

また、モニター配置施設以外の医療機関からも幅広く不適切事例を受け付け、広告活動の一層の適正化を図る。

 

2.個人輸入・指定薬物等への対策(4600万円)

インターネットを介した商取引の普及により、海外事業者が国内では承認されていない医薬品や化粧品などを個人輸入の形式で販売する旨の広告が多数確認されている。そのため、これらの製品に興味・関心がある消費者をターゲットとしてリスティング広告等を行い、集中的な注意啓発を行う。

 

 

IV 薬物乱用対策の推進 【一部推進枠】5億5800万円

 

第5次薬物乱用防止5カ年戦略(18年8月、薬物乱用対策推進会議決定)に基づき、薬物乱用者に対する再乱用防止対策を推進するため、乱用防止プログラムの開発・実施や普及啓発、関係機関との連携を強化し、薬物乱用者の社会復帰支援等を図る。

※前記のほか、密輸対策等の強化のため、地方厚生局麻薬取締部の捜査体制の充実を図る。

 

 

V 血液事業の推進 1億300万円

 

「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」に基づき、血液製剤の安全性の向上や安定供給の確保等を図るため、引き続き、未知の感染症等の新たなリスクに迅速に対応するための体制整備や献血の普及・啓発等を実施する。

 

VI 後発医薬品等の品質確保対策の推進 3億2700万円

 

後発医薬品の信頼性向上を図るため、「ジェネリック医薬品品質情報検討会」において、学会発表等で品質に懸念が示された品目や市場流通品について、品質確認検査の実施方針の決定や検査結果等の学術的評価を一元的に実施し、有効成分ごとに品質情報を体系的にまとめた情報集(ブルーブック)などを公表すると共に、市場に流通する後発医薬品の品質確認検査を実施し、その検査結果を積極的に公表する。

また、バイオシミラーについても、品質に対する信頼性の確保の観点から、品質確認検査を実施する。

 

 

VII 医薬品・医療機器等の承認審査の迅速化 25億6400万円

医薬品・医療機器等の承認審査に係る調査、試験、確認等を円滑に実施すると共に、新たな承認審査の基準の作成や薬事規制の国際調和を促進すること等により、承認審査の迅速化を図る。

 

 

VIII 医薬品・医療機器等の安全対策の推進 3億3200万円

国内外の医薬品・医療機器等の安全性に関する情報を幅広く収集・整理し、的確な評価に基づき国民・患者等に情報提供を行う等により、安全対策を引き続き推進すると共に、医薬品等に起因する医療事故の防止や、副作用等の被害の迅速な判定等を円滑に行う体制を確保する。

 

 

IX 適切な承認審査や安全対策の在り方に関する研究(レギュラトリーサイエンス研究等)の推進 【一部推進枠】16億5200万円

革新的医薬品も含めた医薬品・医療機器等について、開発から承認審査、市販後安全対策に至るまでの規制の研究等を推進することで、その適切な評価方法を開発し、実用化への道筋を明確化し、科学技術と社会的要請の調和を推進する。

 

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出典:薬事日報

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