電子処方箋運用へ議論開始~ロードマップ作成求める声
厚生労働省の「健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ」は26日に初会合を開き、2023年度からの電子処方箋の本格運用に向けて必要な環境整備について議論した。構成員からは、現在の運用ガイドラインだけでは電子化の普及に不十分として、ロードマップの作成を求める意見や、患者の利便性の観点からQRコードを活用することに疑問の声などが上がった。4月中をメドに方向性を示す方針。
電子処方箋をめぐっては、23年度からの本格運用を目指し、政府が今夏をメドに工程表を策定する方針を示している。医療等情報利活用WGでは、電子化実現に向けた環境整備、特に患者情報をストックする管理サーバーの運営主体や費用をどのように確保するかを検討し、4月中に方向性を示すこととしている。
初会合で、山本隆一構成員(医療情報システム開発センター理事長)は、今年度に改定される電子処方箋の運用ガイドラインに言及。「ガイドラインは将来的に紙から電子処方箋に移行するためのもので、移行期では電子処方箋の方が不便」とした上で、「移行期を早く終了させ、電子処方箋が原本という時代を作る必要がある。そのためには、国民が利便性を享受できるロードマップを作るべき」との考えを示した。
渡邊大記構成員(日本薬剤師会常務理事)も、「ガイドラインを作成しただけでは電子処方箋が普及するとは思えない。しっかりとしたロードマップを作り、難関を越えないと進まない」と同調した。
QRコードを活用する点について、葛西重雄氏(厚労省データヘルス改革推進本部アドバイザリーグループ長)は「救急など様々な分野でコードの活用が検討されており、患者が混乱する可能性がある。フィンランドなど諸外国と日本の違いは、利便性を真剣に考えているかどうかなので、ユーザー視点でシステム設計をもう一度考えるべきだ」と訴えた。
印南一路構成員(慶應義塾大学総合政策学部教授)は、医療機関が薬局の医薬品の在庫を把握できるシステムの構築に関して、「特定の薬局での調剤を誘導してしまい、薬局側も経営の機微に関わることなので簡単に在庫情報は出さない」とした上で、「患者の利便性の観点から、合理的なシステムはそう簡単にはできない」との見方を示した。
高倉弘喜構成員(国立情報学研究所アーキテクチャ科学研究科教授)は、「紙を持参しないと調剤できない仕組みは面倒で、患者の待ち時間を何らかの方法でなくす必要がある。このままでは、紙ベースの処方箋よりも利便性が下がっている」と指摘した。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2023年度からの本格運用を目指し、政府が今夏をメドに工程表を策定する方針を示す電子処方箋をめぐり、厚労省の「健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ」は初会合(3月26日)を開き、2023年度からの電子処方箋の本格運用に向けて必要な環境整備について議論されました。構成員からは、現在の運用ガイドラインだけでは電子化の普及に不十分という意見が多く、ロードマップ作成を求める意見や、患者の利便性の観点からQRコード活用についてもに疑問の声などが上がりました。その方向性は4月中をメドに示される方針です。