喘息患者、新型コロナに「感染しにくい」~研究成果
国立成育医療研究センター免疫アレルギー・感染研究部は、気管支喘息患者が新型コロナウイルスに感染しにくい可能性があるとの研究結果を公表した。感染患者の気管支喘息合併率が感染していない人に比べて低いことなどを理由としており、気管支喘息の発症に関わる蛋白質がウイルスの受容体発現を抑えている可能性があるとした。研究結果は米アレルギー喘息免疫学会誌「ジャーナルオブアラジーアンドクリニカルイムノロジー電子版」に掲載された。
同研究部は、中国、米国、メキシコから報告された1万7485人の新型コロナウイルスに感染した患者に関する論文の解析を実施した。その結果、気管支喘息の合併率は5.27%だった一方、ウイルスに感染していない人における気管支喘息の有病率は7.95%だったことから、気管支喘息患者が新型コロナウイルス感染症にかかりにくいことが考えられた。
中国と米国の新型コロナウイルス患者2199人のうち、軽症者に比べて重症者では慢性閉塞性肺疾患、糖尿病を基礎疾患として持つ人の割合が高かった一方で、軽症者と重症者に占める気管支喘息患者の割合は比較的差が小さく、気管支喘息の存在は新型コロナウイルス感染症の重症化と相関していないことが示唆された。
また、気管支喘息の発現に関わるインターロイキン(IL)13が新型コロナウイルスの受容体(ACE2)を刺激すると、ACE2の発現が弱まることも分かった。
同研究部は、喘息がウイルスの罹患率と死亡率に影響を与えるかどうかを最終判断するためには、さらに慎重な調査が必要との考えを示し、「気管支喘息患者の新型コロナウイルス感染症を過小評価してはならず、現在の治療ステップを下げることを支持、推奨するエビデンスはない」ともしている。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
気管支喘息患者さんが新型コロナウイルスに感染しにくい可能性があるとの研究結果が、国立成育医療研究センター免疫アレルギー・感染研究部から公表されました。感染患者さんの気管支喘息合併率が感染していない人に比べて低いことなどが理由とされており、気管支喘息の発症に関わる蛋白質がウイルスの受容体発現を抑えている可能性があるとしています。また、気管支喘息の発現に関わるインターロイキン(IL)13が新型コロナウイルスの受容体(ACE2)を刺激すると、ACE2の発現が弱まることも判明しています。