院内フォーミュラリーで連携~地域の病院薬剤師が共通案
東北医科薬科大学病院を中心に、仙台市宮城野区、仙塩地区の病院薬剤師が連携し、共通の院内フォーミュラリーを作成する活動をスタートさせた。規模も経営母体も違う病院の薬剤師がフォーミュラリーを作成する経験を通じて中小病院にも運用の裾野を広げていきたい考え。地域でフォーミュラリーを作成、運用できる薬剤師の育成を目指す。第1弾として、H1受容体拮抗薬の共通フォーミュラリー案をまとめた。東北医薬大病院の渡邊善照薬剤部長は、「将来の地域フォーミュラリーにつなげるためにも、院内フォーミュラリーで病院薬剤師が経験を積み上げ、実際に運用できる人材を増やしていきたい」と意気込みを語る。
裾野拡大向け人材育成
院内フォーミュラリーの連携活動は、昨年に東北医薬大病院が仙台市宮城野区、仙塩地区の病院薬剤部長に呼びかけ、8病院から同意を得て「仙台市宮城野区・仙塩地区フォーミュラリー活動薬剤師連携協議会」を発足させ、本格的にスタートした。
その後、薬剤師不足などの理由で2病院が辞退。現在は東北医薬大病院のほか、自衛隊仙台病院、仙台オープン病院、仙塩総合病院、光ヶ丘スペルマン病院など、地域6病院で活動を行っている。
同協議会の狙いは、大病院、中小病院と規模が違う医療機関が連携し、共通の院内フォーミュラリー作成を目指すことで、薬剤師が少ない中小病院でもフォーミュラリーを作成できる人材の裾野を広げていくことにある。その結果として、フォーミュラリーの推進につなげたい考えだ。
急性期を担う大病院のフォーミュラリーをそのまま運用するのではなく、各病院の薬剤師が連携して共通のフォーミュラリー案を作成し、それぞれ採用薬の違いなど事情を踏まえながら検討の上、変更して使用できるようにしている。
具体的な活動としては、フォーミュラリー作成の実働を担う作業部会を立ち上げ、各病院の医薬品情報(DI)担当者を中心に月1回のペースで作業を進めてきた。各病院で共通する薬効群を検討した結果、抗ヒスタミン薬のH1受容体拮抗薬で進めることとし、3月には共通フォーミュラリーの第1弾として、「H1受容体拮抗薬」の推奨薬案を決定した。
推奨薬案では、対象疾患を成人患者におけるアレルギーに伴う鼻炎、皮膚症状とし、第1推奨薬については、自動車運転に制限がないという安全性と経済性を踏まえ、後発品のロラタジンとフェキソフェナジン塩酸塩を位置づけた。第2推奨薬は、デスロラタジン、ビラスチン、ベポタスチンベシル酸塩とした。
渡邊氏は「フェキソフェナジン塩酸塩は、後発品だから第1推奨薬にしたのではなく、有効性、安全性、経済性、薬物の評価を踏まえた結果である。必ずしも後発品ありきという議論で進めることではない」と強調する。H1受容体拮抗薬のフォーミュラリーは、既に東北医薬大病院で作成していたことから、スムーズに議論が進んだようだ。
同院薬剤部でDI室を担当する三浦良祐氏は、「共通フォーミュラリーは各病院で導入しやすい薬効群を考えていく必要があり、まとめるのは難しいが、H1受容体拮抗薬を通じて形はできてきたと思う。今後どのような病院が参加しても一緒にできる基盤は作ることができた」と手応えを語る。第2弾として、スタチンの共通フォーミュラリーを検討していく予定だ。
今回の取り組みは、規模のみならず、経営母体も違う病院が連携しているだけに、渡邊氏は「どこまで厳密に共通性を持たせることができるか難しい状況と思うが、大事なことは地域の病院薬剤師がフォーミュラリーを作り込む経験をして、各病院ごとに進めていける状況が醸成されていけばいいのではないか」と展望を語る。
その上で、渡邊氏は「地域フォーミュラリーの展開を考えた場合に、フォーミュラリーの概念を理解し、実際に運用できる薬剤師を育てておかなければ、いきなり地域と言ってもコントロールできる人材がいない」と指摘。
「将来につなぐために、病院薬剤師が院内フォーミュラリーで経験とノウハウを積み上げ、6病院に限らず参加してもらい、積極的に進めていってほしい」と話している。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
東北医薬大病院を中心に、仙台市宮城野区、仙塩地区の病院薬剤師が連携し、共通の院内フォーミュラリーを作成する活動をスタートさせました。この連携活動は、昨年に東北医薬大病院が仙台市宮城野区、仙塩地区の病院薬剤部長に呼びかけ、8病院から同意を得て「仙台市宮城野区・仙塩地区フォーミュラリー活動薬剤師連携協議会」を発足させたもの。同協議会の狙いは、大病院、中小病院と規模が違う医療機関が連携し、共通の院内フォーミュラリー作成を目指すことで、薬剤師が少ない中小病院でもフォーミュラリーを作成できる人材の育成。規模も経営母体も違う病院薬剤師がフォーミュラリー作成の経験を通じ、中小病院にも運用の裾野を広げていきたい考えです。