ゲノム編集の新手法「クリスパー・キャス9」開発、ダウドナ氏らにノーベル化学賞
スウェーデン王立科学アカデミーは10月7日、2020年のノーベル化学賞を「ゲノム編集」の新たな手法を開発した米仏の女性研究者2氏に授与すると発表した。
受賞するのは、仏出身で独マックスプランク感染生物学研究所所長のエマニュエル・シャルパンティエ氏と米ハーバード大医学部出身でカリフォルニア大バークレー校教授のジェニファー・ダウドナ氏。
シャルパンティエ氏とダウドナ氏は、動物、植物、微生物のDNAを高い精度で変化させる「CRISPR/Cas9」(クリスパー・キャス9)と呼ばれる新技術を2012年に開発。この技術は生命科学に革命的なインパクトを与え、新しいがん治療法の開発を進めるとともに遺伝性疾患の治療に希望をもたらすなど医学・医療の進歩にも大きく貢献している。
阪大病理学教授の仲野徹氏は、CRISPR/Cas9によるゲノム編集ついて「その応用範囲は、医学のみならず、畜産、水産、農業などとてつもなく広い。それだけに倫理的な問題も懸念されている。いろいろな意味でこの技術の未来から目を離せない」とコメントしている。
■仲野徹阪大病理学教授の話「これほどノーベル賞が確実だった人たちも少ない」
今年のノーベル化学賞はエマニュエル・シャルパンティエとジェニファー・ダウドナに決まった。授賞理由はもちろん「ゲノム編集手法の開発」。これほどノーベル賞が確実だった人たちも少ない。問題は「いつもらうか」と「化学賞と医学生理学賞のどちらをもらうか」だけだったと言っても過言ではない状況だった。
CRISPR/Cas9という方法を用いて、あらゆる生物のゲノムを自在にと言っていいほど自由に操れるようになったのだから当然だろう。その応用範囲は、医学のみならず、畜産、水産、農業などとてつもなく広い。それだけに倫理的な問題も懸念されている。
いろいろな意味でこの技術の未来から目を離せない。詳しく知りたい人は、ダウドナが書いた『CRISPR(クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見』(文藝春秋)をぜひ読んでほしい。いかにしてCRISPR/Cas9の開発にこぎつけたかが実に活き活きと描かれている科学読み物だ。
研究分野の違う女性研究者2人が知り合い、共同研究のお手本のようにして研究が進められた。この技術開発の初期の段階から、ダウドナがいかに倫理問題を気にかけていたかもよくわかる。
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出典:Web医事新報
薬+読 編集部からのコメント
2020年のノーベル化学賞は、「ゲノム編集」の新たな手法「CRISPR/Cas9」(クリスパー・キャス9)を開発した独マックスプランク感染生物学研究所所長のエマニュエル・シャルパンティエ氏とカリフォルニア大バークレー校教授のジェニファー・ダウドナ氏に決まりました。同技術はあらゆる生物のゲノムを自由に操れるもので、新しいがん治療法の開発や遺伝性疾患の治療などへの貢献といった医学・医療分野のみならず、畜産、水産、農業などへの応用も期待されます。