医療

妊娠糖尿病、外来で薬剤師説明~専門医不在病院で職能発揮

薬+読 編集部からのコメント

糖尿病の患者数は年々増え続けており、糖尿病専門医だけで全ての患者さんを支えきれないのが現状です。大阪市の愛染橋病院は総合周産期母子医療センターが設置されているため妊婦さんや小児患者さんが多いのが特長。そんな中、妊娠に伴い血糖値が高くなり発症する妊娠糖尿病の患者さんも多く、常勤の糖尿病専門医がいないため、糖尿病薬物療法認定薬剤師の資格を持つ柳瀬昌樹氏が他職種と連携しながら関わりを強化。妊娠糖尿病と聞き、漠然とした不安を抱く患者さんに正しい情報や展望を示し、安心して分娩できるように支えています。

日本くすりと糖尿病学会学術集会がウェブ開催され、シンポジウムで関係者は、糖尿病専門医がいない病院や地域での薬剤師の役割について討議した。糖尿病の患者数は多く、年々増え続けており、糖尿病専門医だけで全ての患者を支えきれないのが現状。愛染橋病院薬剤科の柳瀬昌樹氏は、妊娠糖尿病患者の外来で説明を受け持ったり、医師の依頼を受けて薬物療法を提案したりしているとし、「そこにいるスタッフで患者のためにできることは何かを考えることが大事ではないか」と投げかけた。

 

愛染橋病院は大阪市にある253床の中規模病院。総合周産期母子医療センターを設けているため、妊婦や小児患者が多い。妊娠に伴って血糖値が高くなり発症する妊娠糖尿病の患者も少なくないが、常勤の糖尿病専門医はいないため、糖尿病薬物療法認定薬剤師の資格を持つ柳瀬氏が他職種と連携しながら関わりを強化している。

 

外来では、妊娠糖尿病と診断された全ての患者を対象に、柳瀬氏がオリジナルのパンフレットで説明を行う。妊娠糖尿病とは何か、高血糖によるリスクや治療の必要性、今後の具体的な治療、食事療法のポイントなどをひと通り解説。妊娠糖尿病と聞いて漠然とした不安を抱く患者に正しい情報や展望を示し、安心して分娩できるように支えている。

 

分娩時に適切な血糖コントロールが行われる体制作りにも関わった。血糖値が高いまま分娩することがないように、非常勤の糖尿病専門医の協力を得てプロトコルを作成。分娩時の目標血糖値や血糖を下げる具体的な薬物療法などをプロトコルに盛り込み、内科医や産婦人科医の合意を得て院内で運用している。

 

1型、2型糖尿病の新規発症やコントロール不良で入院してきた患者にも関わる。医師から依頼を受けて薬物療法を提案したり、非常勤の糖尿病専門医と一緒に薬剤師を含む多職種で糖尿病回診を週1回実施したりして、薬物療法の最適化を支援している。

 

周術期の血糖コントロールについても、内服薬一時中止やインスリン投与など手術ごとの対応を医師に提案している。

 

2020年度の1年間で、外来で妊娠糖尿病患者を指導した件数は約100件。薬物療法の提案など入院患者への介入件数は約1300件に達した。

 

柳瀬氏は「糖尿病専門医がいないからできないのではなく、そこにいるスタッフで患者のためにできることは何かを考えることが大事ではないか」と語った。

 

愛染橋病院に非常勤で週1回出向いている糖尿病専門医の田中永昭氏(関西電力病院糖尿病・代謝・内分泌センター)は、今後多くの高齢者を少ない労働力で支える時代になるとし、「糖尿病のチーム医療でも各職種がそれぞれの技能を生かすだけでは不十分かもしれない」と言及。「これからは1人多役の時代がくる。各職種の専門性にプラスアルファが求められる」と強調した。

 

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出典:薬事日報

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