面対応薬局が4割占める~医療的ケア児の処方応需【日本薬剤師会】
医療的ケア児に対応している薬局の約4割が様々な医療機関から処方箋を応需している面対応の薬局であることが日本薬剤師会の調査で明らかになった。専門医療機関や大学病院による患者が多いものの、診療所やクリニックでも対応していた。ハイリスク医薬品の使用率の高さや製剤加工が必要な患者が多いことなど、薬局が調剤や薬学的ケアに多大な労力を要している現状も浮き彫りになった。日薬は今年度に10都県でモデル事業を実施し、小児薬物療法に関する病院と薬局の地域医療連携体制構築を目指す。
地域連携体制が重要な課題
調査は、全国の医療的ケア児の処方を応需していると予想される約749薬局を抽出し、207薬局から回答を得た。
医療的ケア児に対応している薬局は122薬局で医療的ケア児の応需症例は881人だった。医療的ケア児の処方箋を受け付けた薬局と医療機関の関係を見ると、「様々な医療機関からの処方箋を応需している薬局」(39%)、「主に近隣にある特定の病院・診療所の処方箋を応需している薬局」(57%)だった。
1カ月間の処方箋受付回数は、「1000未満」(21%)、「1000~3000未満」(68%)、「3000以上」(17%)となっており、処方箋受付枚数が比較的少ない薬局でも対応していた。
1カ月間における医療的ケア児についての処方箋受付回数は11.7回。医療的ケア児に当てはまると思われる患者の処方箋受付人数は1薬局当たり7.2人で、「0~6歳未満」(29%)、「6~12歳未満」(28%)、「18歳以上」(20%)となった。
処方箋を発行した医療機関ごとに処方箋受付回数の割合を見ると、「大学の附属病院」(44%)、「国公立の小児医療、小児・周産期医療専門病院」(27%)、「診療所・クリニック」(17%)、「地域の中核病院」(11%)となり、診療所・クリニックで2割程度対応していた。
医療的ケアごとに見ると、「胃瘻」(31%)、「経鼻経管栄養」(21%)、「気管切開」(21%)、「人工呼吸器」(16%)の順で多かった。処方された医薬品群は、「抗てんかん薬」(30%)、「経腸栄養剤」(28%)、「循環器用薬」(14%)、「筋弛緩薬」(11%)とハイリスク医薬品の使用率が非常に高かった。
調剤者自身や周囲への曝露対策が必要な医薬品の調剤環境については、「通常の調剤室内で換気に気を付けて実施」が75%と最多で、「安全キャビネットを使用」は9%、「ハザード室を使用」は2%にとどまった。
ハイリスク医薬品が多いにもかかわらず、薬剤師への曝露対策については設備設置に至っていない薬局が多かった。
医療的ケア児の調剤を行う上で特別に配慮している薬学的管理は「規格単位に満たない薬用量の調節」が19%、「散剤の配合変化や使用状況に配慮して混合せずに別包とする判断」が14%、「誤薬や服用忘れを防ぐための散剤の服用時点ごとの計量混合」が13%だった。
過去1年間における医療的ケア児に対する連携の状況は、「受診医療機関の主治医と連携」が18%、「訪問診療・往診を行う医師と連携」が17%、「訪問看護師と連携」が13%、「病院の薬剤部との連携」が12%と、医師・薬剤師間だけではなく、訪問看護師など様々な職種と連携していた。
宮崎長一郎副会長は20日の定例会見で、「門前薬局だけではなく、地域の薬局が地域の患者さんから請け負って対応していることが分かった」と述べた。
その一方で、「医療的ケア児への対応で各薬局が孤独に頑張っていることが分かった。孤独に頑張っている薬局を連携させていく必要がある」と指摘。各都道府県薬のモデル事業を通じて、小児分野でも地域医薬品提供体制構築を目指す。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
日本薬剤師会の調査(全国の医療的ケア児の処方を応需していると予想される約749薬局を抽出。207薬局から回答)によりますと、医療的ケア児に対応している薬局の約4割が様々な医療機関から処方箋を応需している「面対応の薬局」であることが明らかになりました。専門医療機関や大学病院による患者が多いものの、診療所やクリニックでも対応。ハイリスク医薬品の使用率の高さや製剤加工が必要な患者が多いことなど、薬局が調剤や薬学的ケアに多大な労力を要している現状も、調査によって浮き彫りとなっています。