薬剤師団体「国主導で薬学部の改革を~病薬不足には給与改善必要
新薬剤師養成問題懇談会(6者懇)が14日に開かれ、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会の薬剤師団体側からは薬学部の定員抑制に向けた施策を急ぐよう行政側に求める意見が相次いだ。厚生労働省の需給調査を踏まえ、文部科学省の検討会で今夏をメドに対応策を検討している段階だが、「各大学の自発的な定員抑制策では限界がある」と指摘。国が問題意識を持って薬学部の改革を進めるよう強く要求した。
この日の6者懇では、日病薬が薬学部定員の適正化に言及。現在は学生過剰の状態が続いているとし、学生の質の担保や退学率増加など多くの問題が絡んでいると指摘した。
木平健治会長は「大学が設立され過ぎたのが根本的な問題で、かなり前から多くの人が指摘していた」と述べた上で、「これ以上薬学部ができると傷を深くする。定員問題は薬学と薬剤師にかかる大きな課題となるため、なるべく早く手を打つべき」とした。
日薬の田尻泰典副会長も、「質の良い学生が入ってこないと、6年かけても教育の質の確保が難しいのは立証済みだ。唯一残された方法は、何らかの形で定員を抑制すること」と指摘した。
文科省高等教育局医学教育課の伊藤史恵課長は、各大学が定員削減に取り組み続けていると説明した上で、薬学系人材養成のあり方に関する検討会でも定員規模等のあり方を議論しているとし、「国としてどのような定員規模を考えるか、今夏までにしっかりと方針を検討したいので時間がほしい」と応じた。
これに対し、日薬の山本信夫会長は「定員が自発的に減少するのを待つことは容易ではない。薬剤師を受け入れる側は定員が大きな課題と見ていることを検討会に伝えてほしい」と注文を付けた。
また、薬剤師の偏在と病院薬剤師の不足に関する問題として、日病薬は病院の業務内容に対して給与が見合わないこと、奨学金の返済に時間がかかることなどの課題を挙げた。
日本私立薬科大学協会の井上圭三会長は、「病院薬剤師の重要性ややりがいを学生に伝えているが、給与の問題が非常に大きく、奨学金を受けた学生が苦しんでいる」とし、山本氏も「一番の問題は給与が安いことだ。診療報酬や地域医療介護総合確保基金では短期的にしか給与が上がらないので、医療職俸給表を上げてほしい」と訴えた。
俸給表に関しては、木平氏も「変えていくことがかなり重要と認識しており、まずは国家公務員の俸給表を改善してもらった上で、薬剤師独自の俸給表も必要ではないか」との考えを示し、国に対応策を求めた。
地域偏在について、日病薬の奥田真弘副会長は地域医療介護総合確保基金に言及。「各都道府県に薬科大学が設置されている必要があるが、設置されていない地域もあるので、大学や都道府県を跨いで基金が生かせる仕組みを考えてほしい」と述べた。
厚労省医薬・生活衛生局総務課の太田美紀薬事企画官は、「薬剤師の偏在は大きな問題と認識している」とした上で、「まずはどこで偏在が起きているか、原因は何かエビデンスを取った上で対策を考えたい」と回答した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2月14日に6者懇(新薬剤師養成問題懇談会)が開催され、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会の薬剤師団体側からは薬学部の定員抑制に向けた施策を急ぐよう行政側に求める意見が相次ぎました。薬学部定員の適正化に言及した日病薬は現状で学生過剰の状態が続いているとし、学生の質の担保や退学率増加など多くの問題が絡んでいると指摘。文科省検討会では厚労省の需給調査を踏まえ、今夏をメドに対応策を検討している段階ですが、「各大学の自発的な定員抑制策では限界がある」と、国が問題意識を持って薬学部改革を進めるよう強く要求しました。