緊急避妊薬の議論先送り~医師委員が追加データ要求
厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」は10日、緊急避妊薬をスイッチOTC化する上での課題に関する議論を次回会合に持ち越した。海外における販売状況等の調査結果が公表され、薬剤師構成員はOTC化の実現性が高いとの考えを示したものの、医師構成員を中心により詳細な精査や追加データなどを求める声が出たためだ。
この日の検討会議では、厚労省が緊急避妊薬に関する海外の実態調査結果を公表した。米国、英国、シンガポールなど7カ国を対象に販売状況、影響・効果、制度の背景などを調べた結果、米国や英国など5カ国でOTC医薬品として承認されており、英国を除いて購入者の年齢制限を設けている国はなかった。
薬剤師の関与については、米国は薬剤師の関与なしに購入でき、英国やドイツなど4カ国では一定の指導と説明が必要としている。人工妊娠中絶率に関しては、米国とフィンランドで低下したが、ドイツは横ばい、英国は上昇していた。
調査結果を踏まえ、薬剤師の岩月進構成員(日本薬剤師会常務理事)は「薬剤師が関与し、社会的な問題にはなっていない。OTC化によりリテラシーが低下するとの議論もあったが、(カテゴリーを医療用医薬品に戻す)スイッチバックは行われていない」と主張した。
松野英子構成員(日本保険薬局協会常務理事)も、「服用後のフォローなど各国が準備して実際に使用しており、OTC化が順調に進んでスイッチバックされていないのは非常に心強い」と評価した。
ただ、長島公之構成員(日本医師会常任理事)は「ガイドラインの内容や、どのような制限があるかなど具体的内容が漏れ落ちている」と指摘したほか、報告書が構成員に公表されてから検討会までの期間が短かったとして、「時間がなくて詳細な報告書を読めていない」とし、再度議論するよう求めた。
湯浅章平構成員(章平クリニック院長)も、「熟読できていないので、もう少し時間がほしい」と述べたほか、「一部の薬局だけが協力するのでは意味がないが、全ての薬局が緊急避妊薬に関わりたいとは考えていないと思う。詳細なデータが次回会合までに必要」とした。
堀恵構成員(ささえあい医療人権センターCOML)は、「最初は年齢制限を設けてだんだんと緩和している国が多く、日本でも導入時に年齢制限を設けるかが大きな課題」とした上で、年齢制限を設けた場合、本人確認の有無が購入希望者にとってハードルになると懸念した。
また、開店日時や立地などの面から「薬局にアクセスしやすい環境が整っていなければ、OTC化されても元の木阿弥」として、各国におけるアクセス状況に関する報告も追加で求めた。
今回の会合では、調査結果を受けてOTC化する上での課題を議論してまとめ、厚労省がパブリックコメントを募る予定だったが、笠貫宏座長(早稲田大学特命教授)は「課題の前段階に関する意見が多かった。海外調査も含めて新たな資料を示してもらいたい」とまとめ、次回会合に議論を持ち越した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
3月10日、厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」は緊急避妊薬をスイッチOTC化する上での課題に関する議論を次回会合に持ち越しました。海外における販売状況等の調査結果が公表され、薬剤師構成員はOTC化の実現性が高いとの考えを提示したものの、医師構成員を中心により詳細な精査や追加データなどを求める声が出たためです。薬剤師の関与については、米国は薬剤師の関与なしに購入可能で、英国やドイツなど4カ国では一定の指導と説明が必要としています。人工妊娠中絶率に関しては、米国とフィンランドで低下しましたが、ドイツは横ばい、英国は上昇しています。