改正薬機法、全会一致で成立~緊急時承認制度を導入
緊急時の薬事承認制度導入などを盛り込んだ改正医薬品医療機器等法が、13日の参議院本会議(写真)で全会一致で可決、成立した。感染症の蔓延時など緊急時に医薬品全般を対象に、安全性の「確認」、有効性の「推定」をもとに概ね2年を期限に承認する。改正法の公布と共に施行され、現在審査中の新型コロナウイルス治療薬などに実際に適用されるかが注目される。
改正薬機法では、新型コロナウイルスの感染拡大下でコロナワクチン・治療薬の承認が諸外国よりも遅れた経験を踏まえ、緊急時の薬事承認制度を導入する。ワクチンや治療薬に限定しない医薬品全般、再生医療等製品、医療機器が制度の対象となる。
国民の生命と健康に重大な影響を与える恐れのある疾病の蔓延といった緊急時に、他に代替手段がないと政府が判断した場合、安全性については通常の薬事承認と同等水準で「確認」、有効性は入手可能な臨床試験成績から「推定」した上で承認可能としたが、承認の際には薬事・食品衛生審議会から意見を聴く必要がある。
承認期限は概ね2年間の短期間とし、期限内に改めて有効性を確認する。必要に応じて1年を超えない範囲内で期限の延長を可能とした。有効性に関するデータ収集などの条件を付与し、有効性が確認できない場合は承認を取り消す。
同制度により承認された医薬品等で健康被害が確認された場合は、医薬品副作用被害救済制度の適用対象となる。
塩野義製薬が承認申請中の新型コロナウイルス経口治療薬「S-217622」に同制度が適用されるか注目される中、後藤茂之厚生労働相は同日の閣議後会見で「企業の意向があれば、緊急承認制度の承認可否について審査することが想定される」との見解を示した。
また、来年1月からの電子処方箋運用開始に伴い、必要な手続きの整備も法改正で行った。医師による電子処方箋の交付、患者が電子処方箋の内容を閲覧できるようにするほか、医療機関と薬局の連携協力に関する規定などを盛り込んだ。
本会議に先立ち12日の参議院厚生労働委員会では、計16項目の附帯決議も可決された。緊急時の薬事承認制度に関して、不適切な拡大適用されないよう運用すること、製造販売業者による安全性監視計画の設定などを求めた。
電子処方箋については、基盤整備の期間中は国が財政支援するほか、マイナンバーカードの健康保険証利用の促進に向けた措置を取ることなどが必要とした。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
新型コロナウイルス感染拡大下でコロナワクチン・治療薬の承認が諸外国よりも遅れた経験を踏まえて、緊急時の薬事承認制度が導入される「改正医薬品医療機器等法」が、5月13日の参議院本会議で全会一致で可決、成立しました。感染症蔓延時など緊急時に医薬品全般を対象に、安全性の「確認」、有効性の「推定」をもとに概ね2年を期限に承認。改正法公布と共に施行となり、現在審査中の新型コロナ治療薬などに実際に適用されるかが注目されています。