創薬・臨床試験

血糖測定器で生活習慣介入~薬剤師が糖尿病患者に面談

薬+読 編集部からのコメント

京都大学大学院医学研究科岡田浩氏らの研究グループは、今月から持続血糖測定器「FreeStyleリブレ」を用いて薬局薬剤師が2型糖尿病患者の生活習慣改善に介入する効果を検証する臨床研究を開始しました。リブレとは、皮膚に貼付したセンサーで血糖値の持続的な変動を測定し、値をスマートフォンでも確認できる測定器で、血糖値の変動に影響する食事や運動を可視化することで、生活習慣の改善を薬剤師が支援しやすくなると期待されます。

京大グループが研究開始

京都大学大学院医学研究科健康情報学特定准教授の岡田浩氏らのグループは、今月から持続血糖測定器「FreeStyleリブレ」を用いて薬局薬剤師が2型糖尿病患者の生活習慣改善に介入する効果を検証する臨床研究を開始した。リブレを使用し、血糖値の変動に影響する食事や運動を可視化することで、的を絞った生活習慣の改善を薬剤師が支援しやすくなると見込む。エビデンス構築を目指すほか、研究を通じて糖尿病領域で活躍する薬剤師を育成する狙いもある。

 

研究は前向きランダム化非盲検並行群間比較試験として実施する。2型糖尿病患者80人を従来型の糖尿病支援群40人、リブレを用いた支援群40人に分類し、薬局薬剤師の介入効果を比較する。約60薬局の参加を見込んでいる。

 

リブレは、皮膚に貼付したセンサーで血糖値の持続的な変動を測定し、その値をスマートフォンでも確認できる測定器。リブレ支援群の患者には毎月1回、1週間分の持続的な血糖値変動に基づき、期間中の食事や運動が血糖値変動にどのような影響を与えたかを分析してもらう。

 

事前に渡す「ドリル」には、患者記入欄を設置。実際の測定値をもとに、自身の血糖値推移パターン、血糖を上げる食事や間食、血糖を下げる運動などを書き込んでもらう。ドリルには午前や午後、夕食後など各場面での血糖対策ポイントも記載している。

 

薬局薬剤師は月1回、リブレ支援群の患者と面談。血糖測定値や患者が記入したドリルに目を通し、血糖値の変動に影響する生活習慣に的を絞って改善のアドバイスを送る。従来型の支援群では血糖測定は行わず、月1回の面談も義務づけない。これまで通りの介入を行う。

 

岡田氏は「平均血糖値は高くなくても、食後血糖値が高くなる患者は多い。食後血糖が認知症や心筋梗塞のリスクを高めることが分かっており、コントロールが重要になる。薬剤師には、食後血糖や間食、野菜や運動に注目して改善を指導してもらうようにしたい」と話す。

 

薬剤師の介入効果はタイムインレンジ(TIR)で評価する。これは測定期間中に血糖値が目標域にどれだけ収まっているかを表す指標で、両群共に介入前後のTIRをリブレで測定する。従来型支援群に比べてリブレ支援群では、薬剤師の介入によってTIRの数値が改善すると見込む。

 

今月から研究をスタートさせ、日本薬剤師会の薬剤師職能振興研究助成事業で得た200万円を活用し、リブレ購入費などに充てる。まずは参加する薬局薬剤師にリブレの知識やノウハウなどを身に付けてもらう研修を開始した。

 

今後も研修会を開いて参加薬局を増やしつつ、参加薬局を通じて患者に研究への参加を呼びかける。時間をかけて症例数を積み上げる計画で、症例確保やデータ解析に早くて2年かかると見ている。

 

主任研究者の岡田氏は、これまで薬局薬剤師の介入効果を示す様々なエビデンスの構築に力を入れてきた。「経口血糖降下薬の服用患者を対象にリブレの効果を実証したエビデンスは十分に確立されていない。しかも、薬局薬剤師の介入を検証した研究はほとんどない」と研究の意義を語る。

 

1型糖尿病患者と違って2型糖尿病の患者は、自身の生活習慣の何が問題なのかを十分に把握できていないことが少なくないという。岡田氏は「1度だけで良いので、どこかの段階でリブレを使えば改善すべき生活習慣の気づきを得られる」と指摘。「高度管理医療機器のリブレは薬局で販売できる。糖尿病専門医の数に限りがある中、全国に6万軒ある薬局でリブレを販売するだけでなく、その後の支援もできれば良い」と期待をかける。

 

さらに、「パーソナルヘルスレコードやライフログなどの患者情報を医療者や薬局で共有する時代はすぐそこまで来ている。今回の研究を通じて、時代に対応できる薬剤師も育成したい」と話している。

 

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出典:薬事日報

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