接種の担い手、6割が肯定~ワクチンで薬局薬剤師意向
薬局薬剤師の約6割はワクチン接種の担い手になることに肯定的という意向が、慶應義塾大学薬学部医療薬学・社会連携センター社会薬学部門の山浦克典教授らが実施した大規模アンケート調査で明らかになった。今後、欧米各国に倣って日本でも薬局薬剤師によるワクチン接種体制の構築を目指す上で、薬剤師自身の前向きな意思を示した結果は、実現を後押しするエビデンスの一つになり得る。一方、ワクチン接種の担い手になる場合、技能不足やアナフィラキシー発生時の対応などに不安を感じる薬剤師は多かった。大学教育や研修の増加で不安を払拭する必要がある。
調査は、全国から無作為に抽出した1000薬局に勤務する管理薬剤師を対象に実施。2022年5~7月に質問紙を郵送し、回答があった479件(回収率47.9%)のうち446件を解析対象とした。
薬剤師によるワクチン接種に対する認識について2段階で質問した。まず、「薬剤師によるワクチン接種行為が認められた場合、積極的に接種を担当したいか」と聞いたところ、「そう思う」16.8%、「ややそう思う」20.9%、「どちらともいえない」24.9%、「あまりそう思わない」20.9%、「そう思わない」15.0%との回答があった。
「どちらともいえない」以降の消極的な回答をした271人に、「国から協力要請があった場合に接種を引き受けるか」と聞いたところ、「引き受ける」17人、「おそらく引き受ける」92人、「どちらともいえない」79人、「おそらく引き受けない」50人、「引き受けない」26人などの回答があった。
2問の結果を合わせると、ワクチン接種を積極的に担当したい薬剤師や、要請があれば引き受けたい薬剤師の総数は446人中277人で62.1%に達し、過半数を超えた。要請があっても引き受けない薬剤師は76人で全体の17.0%を占めた。
薬剤師の意思を適切に把握するため、質問を工夫して2段階にした。同部門の岩田紘樹専任講師は「1段階目の質問では前向きな回答は約4割だったが、2段階目の質問の回答を合わせると、約6割が前向きに考えていた。今後の薬剤師の職能につながる結果になった」と話す。
一方、自身がワクチンの打ち手になる不安を聞いたところ、「技能の不足」(83.3%)が最も多く、続いて「アナフィラキシー発生時の対応」(63.6%)、「接種行為のミス」(59.2%)、「薬局の人員不足」(54.5%)、「知識の不足」(52.3%)があがった。
岩田氏は「未経験の人への注射に対する薬剤師の不安は大きい。今後の研修の増加などで不安を解消する必要がある」と語る。
このほか、研修を受けた薬剤師が薬局でワクチン接種を日常業務として行う場合に必要なことを聞いたところ、「接種スペース」(84.5%)、「アナフィラキシー対応の体制」(84.3%)、「薬剤師の確保」(67.5%)、「ワクチンの保管場所」(64.8%)、「診療報酬上の評価」(60.3%)などが挙がった。
近年の新型コロナウイルス感染拡大を受け、ワクチン接種の担い手を多職種に広げる措置がなされたが、薬剤師は候補に挙がったものの対象にならなかった。
山浦氏は「薬剤師自身、ワクチン接種に消極的ではないかとの見方もある中、今後に向けて薬剤師はワクチン接種で国民に貢献する意思があるというエビデンスがあれば良いと考え、調査を実施した」と言及。
「海外では先進国のうち半数以上で、薬局薬剤師によるワクチン接種が可能になっている。これから日本でもその議論が進むかもしれない。薬局には、国民の健康維持や増進、疾病予防を支援する役割がある。その一環で感染防止の機能を担うことも適切だと思う」と話している。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
慶應大薬学部医療薬学・社会連携センター社会薬学部門の山浦克典教授らが実施した大規模アンケート調査によりますと、薬局薬剤師の約6割が「ワクチン接種の担い手」となることに肯定的という意向が判明しました。欧米各国に倣い、今後、日本国内でも薬局薬剤師によるワクチン接種体制の構築を目指す上で、薬剤師自身の前向きな意思を示した結果は、実現を後押しするエビデンスの一つになり得そうです。