mRNAワクチンで巻返し~SCARDA・古賀氏、報奨制度は「知恵絞るべき」
日本医療研究開発機構(AMED)先進的研究開発戦略センター(SCARDA)の古賀淳一プロボストは7日、都内で開催されたインターフェックスジャパンで講演し、一つのワクチンで様々な新型コロナウイルス変異株に対応できる国産のユニバーサルワクチン、海外産よりも安全性やコストに優れたmRNAワクチンの実用化に意欲を示した。上市後にワクチンの売上を保証する「プル型インセンティブ」については「国による買い上げだけでは企業はリスクに対応できない。インセンティブとしてどういった枠組みがいいのか知恵を絞るべき」と述べ、ワクチン開発の裾野拡大に向けた仕組みを検討するよう訴えた。
昨年3月に新設されたSCARDAでは、ワクチン開発に有効と考えられる新規モダリティの育成や感染症ワクチンへの応用等の研究開発を産学官が連携して実施している。
国が定める重点感染症に対するワクチン・新規モダリティ研究開発事業では10件以上を採択。古賀氏は「日本はワクチンどころかバイオ医薬品でも先進国になりきれていない。世界に伍して日本でワクチンを作り、ワクチン開発の裾野を広げないといけない」と訴えた。
一つのワクチンで様々な変異株に対応したユニバーサルワクチンの開発課題は2件採択しており、2027年3月には第II相試験を終了する計画だ。古賀氏は、「われわれはワクチン開発に遅れたが、その分既にある知識を使える。(特定抗原に対する)オリジナルワクチンよりも早くユニバーサルワクチンを作っていく」と語った。
また、海外勢が新型コロナウイルスワクチンとして実用化しているmRNAワクチンに対しては、国産技術で勝負する。採択された開発課題では、「PureCap法を基盤とした高純度mRNA国内生産体制の構築と送達キャリアフリーの安全なmRNAワクチンの臨床開発」に期待感を示した。
mRNAワクチンの製造で品質や安全性、コストなどの課題を改善でき、海外ライセンスに依存せずに製造できる可能性があるのが利点だ。27年3月に第I相試験を終了する予定としている。古賀氏は「mRNAワクチンは海外から完全に負けていると思われているかもしれないが、コストで見ても世界に勝てる技術。非常に期待している」と評した。
さらに現在、公募により採択待ちの事業が42件あり、8月にも「半分くらいは採択できる」との見通しを示した。早ければ9月にも再度、開発課題の公募を行うとしている。
古賀氏は、上市後のプル型インセンティブのあり方について、「買い上げも一つだが、企業も競争をしておりリスクの中で動いている。リスクに見合うインセンティブでなければならない。世界で開発していくための枠組みをもう少し知恵を絞って考えるべき」と述べ、国の買い上げにとらわれない方式を検討するよう提言した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
一つのワクチンで様々な新型コロナウイルス変異株に対応可能な国産のユニバーサルワクチン、海外産よりも安全性やコストに優れたmRNAワクチンの実用化にAMED(日本医療研究開発機構)SCARDA(先進的研究開発戦略センター)の古賀淳一プロボストが意欲を示しました。7月7日に都内で開催されたインターフェックスジャパン講演によるものです。