6年制定員を来年度半減~少人数制で臨床教育拡充 武庫川女子大学薬学部
武庫川女子大学薬学部は、来年度の入学生から、6年制薬学科の定員を従来の210人から105人へと半分に減らす。近年の定員割れに加え、低学年次の有償制インターンシップや3年次の病院でのチーム医療体験など、新たな教育プログラムを多くの学生に履修してもらうには、少人数での教育体制が必要と判断した。定員の半減は、他大学では見られない思い切った決断だ。薬系大学が増えて少子化が進行する中、大胆な改革で特徴を打ち出し差別化を図る。
薬学科の定員充足率は、2020年度の入学生から急激に落ち込み、21年度には58%に低下。その後に上向き、23年度は75%になったものの、以前のような100%前後の充足率には戻らず、定員割れ対策が課題だった。
一方、薬学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂を踏まえ、数年前から教育プログラムの改革を進めてきた。その一環として、薬学部の1~3年生が薬局やドラッグストアで働き経験を積む有償制インターンシップを22年度から開始。3年次の学生が病院に出向き、薬剤師や多職種の業務や役割を学ぶチーム医療体験プログラムを26年度から開始することを決めた。
入学後、低学年のうちに薬局や病院の現場で患者と話したり、業務を体験したりすることが、学生に社会で働く自身の姿を想像させるほか、学習意欲の向上につながる。
こうした教育の展開には定員を減らし、少人数教育へと転換する必要があると判断した。篠塚和正薬学部長は「学内の討議で、自分たちが行いたい教育を展開するためには、既存の定員では難しいとの意見が多かった」と話す。
定員の半減は大胆な決断だ。篠塚氏は「定員を削減した他の薬系大学の多くは、それでも定員充足には至っていない。少しずつ定員を削減するなど中途半端では同じことになるとの危機感があった。一気に削減して新たな教育プログラムで特徴を打ち出し、差別化を図る必要があると考えた」と語る。
26年度から始まるチーム医療体験プログラムは、薬学部近隣に24年1月に開院する「めいわリハビリテーション病院」に3年生が出向き、薬剤師を含む多職種のチームカンファレンスに参加したり、業務を体験したりするもの。今後、教育内容の具体化を進めるが、学内で必要な研修や講義を受けた学生が数日、午後の半日を使って病院に出向くことになりそうだ。選択科目になる見込みだが、ほぼ全ての学生に履修してもらいたい考え。
22年度から始まった有償制インターンシップは、低学年生に薬局やドラッグストアで1000円前後の時給で働きながら、現場の様々な業務を経験してもらうもの。受け入れ先として、現在4企業と西宮市薬剤師会が展開する55店を確保。実施期間は春休みと夏休みの1カ月間で、22年夏休みは11人、23年の春休みは9人、夏休みは14人の学生が参加した。今後、多くの学生が履修できるように拡充する計画だ。
一方、4年制の健康生命薬科学科の定員は40人から60人へと増やす。医薬品や化粧品、食品などの分野で幅広く活躍する人材を育成し、化粧品の研究に取り組めることや高い就職内定率を誇ることなどが理系志望の女性のニーズに合致しており、定員充足率は100%前後と高い。
定員変更に伴い、学生数に応じた面積になるように校舎の改修を進める。教員の編成も変える計画だ。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
武庫川女子大学薬学部(兵庫県西宮市)は、2024年度入学生から、6年制薬学科の定員を従来の210人から105人に半減。近年の定員割れに加え、低学年次の有償制インターンシップや3年次の病院でのチーム医療体験など、新たな教育プログラムを多くの学生に履修してもらうには、少人数での教育体制が必要と判断したものです。薬系大学が増加し、少子化が進行する中、大胆な改革で特徴を打ち出し差別化を図ります。