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生活習慣病薬、OTC化目標~武藤代表理事「薬剤師と医師の協働環境を」 日本ジェネリック・バイオシミラー学会

薬+読 編集部からのコメント

日本ジェネリック・バイオシミラー学会が、2023年11月にOTC医薬品分科会を設立。武藤代表理事(衣笠病院グループ理事)は、分科会の設立について「生活習慣病治療薬のスイッチOTC化が最大の目標」と語りました。また、医療用からスイッチ化したOTC薬が安全・安心に使われるためには「薬剤師と医師がOTC薬を学び、地域の中で両者が協働してOTC薬を含む薬物治療管理を行える環境が必要」とも指摘しました。

日本ジェネリック・バイオシミラー学会は、昨年11月にOTC医薬品分科会を設立した。武藤正樹代表理事(写真=衣笠病院グループ理事)は本紙の取材に対し、分科会設立について、「生活習慣病治療薬のスイッチOTC化が最大の目標」と語った。「OTC薬の推進は後発品の使用促進に続く“第2のジェネリック”の位置づけになる」と意欲を示す一方、医療用からスイッチ化したOTC薬が安全・安心に使われるためには「薬剤師と医師がOTC薬を学び、地域の中で両者が協働してOTC薬を含む薬物治療管理を行える環境が必要」とも指摘した。OTC薬のエビデンス集積に向け、学会創設を目指す考えも明らかにした。

後発品の供給不安の中、医療用医薬品と同じ成分を有するスイッチOTC薬への代替に対する関心が高まっている。同学会は、後発品の使用推進や品質・安定供給確保に取り組んできたが、OTC薬の普及拡大を目的とした分科会を立ち上げる。まずはOTC薬の開発や承認、流通、価格、政策等に関する現状や課題を明らかにするための調査研究を行う。

 

分科会長には武藤氏、分科会長代理には岩月進氏(日本薬剤師会常務理事)、分科会委員には佐々木忠徳氏(昭和大学薬学部特任教授)、折井孝男氏(医薬品情報標準化推進協議会代表)、川上純一氏(日本病院薬剤師会副会長)、磯部総一郎氏(日本OTC医薬品協会理事長)などが名を連ねる。

 

日本パブリックアフェアーズ協会がまとめたスイッチOTC薬推進のための五つの提言を活動の柱に据え、▽スイッチOTC薬ロードマップ委員会を設置し、スイッチOTC薬に関する政府目標やロードマップを策定▽「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」の運用見直し▽OTC薬データベースの構築▽セルフメディケーション税制と連動したOTC薬お薬手帳作成▽日本OTC医薬品学会創設――の施策を実現する。5月に名古屋市内で行われる同学会学術大会シンポジウムで具体的な活動概要を公表する予定だ。

 

武藤氏は、OTC分科会設立のタイミングについて「今が絶好の時期」と述べた。来年度から厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で改正医薬品医療機器等法に関する議論が本格化する見通しで、医薬品販売制度で要指導医薬品の中に一般用医薬品に自動移行せずとどめ置く区分の創設も検討されている。要指導医薬品でインターネットでの購入が可能な一般薬に自動移行しない区分が創設されれば、スイッチOTC化が進むとの読みがある。

 

さらに、6月の調剤報酬改定では地域支援体制加算の要件に、一般薬・要指導薬等(基本的な48薬効群)の販売や緊急避妊薬の取り扱いを含む女性の健康にかかる対応などが追加される方向で、OTC薬を取り扱う薬局が増えることも期待される。

 

こうした追い風を受け、医療用で多く使われている生活習慣病治療薬のスイッチOTC化を大目標に掲げる。実現した場合に課題となるのは、医薬品提供体制の確保だ。地域の中で生活習慣病のOTC薬が安心・安全に使われるよう医師と薬剤師が患者に対する薬物治療を共同管理する体制を構想している。

 

武藤氏は、「リフィル処方箋の導入で医師と薬剤師の協働による薬物治療管理の考え方が浸透してきた。それがOTC薬にも波及していく」と見通した。近い将来、分科会から学会に格上げすることも視野に入れており、OTC薬に関するエビデンスの集積と日本の医療制度に合った活用方法を議論する学術研究や政策提言を行うことを検討する。また、医療用医薬品とスイッチOTC薬の重複投与や併用禁忌を検出できるOTC薬のデータベース整備も国に対して働きかけていく。

 

武藤氏は「今は助走段階だが、来年はスイッチOTC元年にする。セルフケア・セルフメディケーション推進に向け、薬剤師の方々には一歩前に出てほしい」と呼びかける一方、「OTC推進には医師へのインセンティブも検討する必要がある」との課題も挙げた。

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出典:薬事日報

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