薬剤師会

学校薬剤師の報酬引き上げ~県と2市、働きかけ実る 奈良県薬剤師会

薬+読 編集部からのコメント

奈良県薬剤師会の働きかけにより、2024年度から県と2市で学校薬剤師の報酬引き上げが実現されました。奈良県薬剤師会の一連の行動は関西の他府県の学校薬剤師からも注目されており、今後他府県にも同様の動きが広がる可能性があります。

奈良県薬剤師会は関係者に働きかけて今年度から、学校薬剤師の報酬引き上げを県と2市で実現させた。地方交付税を財源とする学校薬剤師の報酬の基準額は、同税の計算式から推定すると年間約16万円になるが、実際には県や市町村の判断でそれぞれの報酬額が設定される。奈良県薬の調べでは、基準額に満たない報酬額の市町村が多く、格差も大きかったことから、県議会議員や各市町村長、教育委員会などに働きかけて改善を求めた。今後も活動を継続し、理解を広めたい考えだ。

一般的に公立学校のうち、小学校や中学校は各市町村が運営し、高校は県が運営する。各学校薬剤師の報酬は、地方交付税をもとに運営主体の県や市町村が独自の判断で設定するが、前年の実績を踏襲して決まることが多いようだ。

 

奈良県薬の一連の働きかけで、今年度から奈良県の公立高校では報酬額が数千円上がり、地方交付税の基準額近くになった。大和郡山市の小学校と中学校でも報酬引き上げが実現し、基準額に近づいた。他地域に比べて低額だった桜井市では、基準額とはまだ差はあるものの、以前に比べてほぼ倍額になった。

 

奈良県薬は、約2年前から学校薬剤師の待遇改善や活動強化に向けて取り組みを開始した。まずは実態を把握するため、各学校薬剤師の報酬額を調査。その結果、全体としては基準額に満たない市町村が多く、バラツキも大きいことが分かった。

 

基準額に近い市がある一方で、年間数万円の自治体もあった。町村では報酬額は低い傾向にあったが、市でも低い報酬の地域が少なくなかった。

 

奈良県薬学校薬剤師部会の木曽江律子部会長(写真㊧=介護センターとらいあんぐる)は、「地域の格差や低額の報酬に愕然とした」と振り返る。

 

学校薬剤師は、プールや水道水の水質検査、教室内の照度や空気検査など学校内の環境衛生を検査し、生徒の快適な教育環境を維持する役割を担う。そのほかにも、健康相談や保健指導に応じ、薬物乱用防止教育に関わるなど、近年その役割は広がっている。

 

自らも学校薬剤師を務める木曽氏は、年に10回は学校に出向く。電話での相談対応を含めると、学校での仕事は多いという。

 

奈良県薬は、こうした学校薬剤師の活動について社会から認知され、適切な評価を得たいとして関係者への働きかけを強めた。奈良県薬顧問の県議会議員との話し合いの中で学校薬剤師の待遇改善の要望を伝え、関係者を紹介してもらった。地域薬剤師会の意向を踏まえ、県や市町村の教育委員会、県や市町村の議員、各市町村長らのもとに出向き、学校薬剤師の活動内容や報酬の現状を訴えた。

 

2年間で県のほか13市町村にアプローチを実施。今年度から県と2市で報酬改善が実現した。今年度は間に合わなかったが、増額を検討するとの返事を得た自治体がいくつかある。今後、前向きな自治体を後押しする活動を続けるほか、まだアプローチできていない市町村と対話する機会を設けたい考えだ。

 

学校薬剤師の活動への理解が評価につながった。奈良県薬の後岡伸爾会長(写真㊨=センザイ薬局)は「報酬のことが前面に出ているが、基本的には、子供たちに良い環境で教育を受けさせてあげたいという学校薬剤師と関係者の思いが一致して実現したことだと思う」と強調。今後2年ほどかけて、「地元の薬剤師が希望する市町村については全てアクションをかけて、改善してもらうように努めたい」と話す。

 

奈良県内の学校薬剤師の数は約210人。各学校での薬物乱用防止教室の実施を推進するなど、活動の強化にも取り組んでいる。

 

奈良県薬の一連の行動は、関西の他府県の学校薬剤師からも注目されている。奈良の事例がモデルとなって今後、他府県にも同様の動きが広がる可能性がある。

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出典:薬事日報

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