薬剤師が薬剤選択に介入へ~長期品選定療養で事務連絡 厚生労働省
10月に長期収載品の選定療養がスタートすることを受け、薬剤師は医師の処方に懸念があれば疑義照会や変更調剤を行うなど、薬剤選択に関与する機会が増えることになりそうだ。厚生労働省は12日の事務連絡で、長期収載品を処方する医療上の必要性について懸念がある場合には薬局薬剤師から医師に疑義照会するよう求めた一方、「飲みにくい」「吸湿性によって一包化できない」など剤形上の違いで長期収載品の処方必要性に懸念があれば、疑義照会不要で薬剤師の判断により後発品への変更調剤を許容するとした。ただ、現場で運用するには複雑で「疑義照会の判断がしやすいよう考え方を単純化すべきではないか」との声も出ている。
後発品の上市後5年以上経過した品目または後発品の置き換え率50%以上の長期収載品101社1095品目が選定療養の対象となり、これらの品目が処方・調剤された場合は後発品との価格差の4分の1は患者の自己負担となる。長期収載品を処方する医療上の必要性が認められる場合は選定療養の対象外で、保険給付対象となる。
事務連絡では、長期収載品を処方する医療上の必要性が認められると想定されるケースを提示。先発品と後発品の効能・効果の差異から長期収載品を処方する場合、後発品服用時の副作用や相互作用、治療効果から安全性の観点で長期収載品に医療上の必要性がある場合などが想定されるとした。
処方箋を応需する薬局薬剤師は、医療上の必要性に懸念することがあれば医師に疑義照会することが考えられるとした一方、剤形上の違いにより長期収載品を処方する医療上の必要があると判断した場合の懸念点や、剤形の好みによって長期収載品を選択している場合は、疑義照会不要で薬剤師が変更調剤を判断することも考えられるとした。
また、後発品を提供することが困難な場合については、出荷停止・出荷調整など安定供給に支障を来している品目かで判断するのではなく、その医療機関・薬局で判断できるとした。
今回の事務連絡について、チェーン薬局の関係者は「処方医と患者の間に立ち、薬局薬剤師が薬剤選択に介入するといった視点においては新たなステージに入った」と評価する一方、「現場の薬剤師一人ひとりが実務の中で理解するには複雑すぎる気がする。もっと考え方を単純化したほうがいい」と薬剤師が判断しやすい運用が必要と訴える。
「剤形が飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより長期収載品を処方等をする医療上の必要があると判断する場合は、薬剤師が判断することも考えられるとは思うが、ケースバイケースだと思うので疑義照会が不要とは言い切れない」とし、今回の通知からさらに考え方を明確化する必要性を指摘する。
薬剤師が医療上の必要性に関して疑義照会するにしても「現時点では薬局薬剤師が正確に疾病を把握できているわけではないので、判断の難易度は上がる」とした。
一方、長期収載品の選定療養では、薬局ごとでサービス提供に差が生じてしまう恐れから、地域単位での対応も求められるかもしれない。地域で疑義照会を簡素化するプロトコル(PBPM)を運用する地域薬剤師会の会長は、長期収載品の疑義照会に関する運用について、「厚労省からの詳細な説明を待って対応しようと考えている」と話している。
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選定療養の対象1095品目~田辺三菱が49品目と最多 厚生労働省
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
厚生労働省は、長期収載品の選定療養について事務連絡を発出。長期収載品を処方する医療上の必要性について懸念がある場合には薬局薬剤師から医師に疑義照会するよう求めた一方、「飲みにくい」「吸湿性によって一包化できない」など剤形上の違いで長期収載品の処方必要性に懸念があれば、疑義照会不要で薬剤師の判断により後発品への変更調剤を許容するとしました。