【昭和大 岸本教授ら】薬物乱用者7割に抑止効果~販売時の有資格者関与で
薬物乱用経験者の約7割が「薬剤師など有資格者による販売可否の判断は乱用目的の大量・頻回購入の抑止につながる」と回答したことが、昭和大学薬学部の栗山琴音氏、同大大学院薬学研究科の岸本桂子教授らの研究で明らかになった。空箱陳列による販売も乱用者の約6割が抑止効果を認め、アクセス確保と乱用防止の観点から「望ましい陳列方法」と評価した。岸本氏は「乱用者群の7割が有資格者の販売判断が抑止になると回答したのは想定外だった。規制だけではなく、対人的な対策として薬剤師などが行うべき応対や効果的な方法を検討する必要がある」と展望を語る。
医薬品販売体制について、一般消費者や乱用経験者の声を収集した調査は例がないという。調査は、5年以内に市販薬の使用経験がある18~39歳を対象に、「市販薬の乱用経験あり」400人、「市販薬の乱用経験なし」400人の計800人にウェブ上でアンケートを実施。乱用群313人、非乱用群400人から回答を得た。
販売方法や陳列方法、有資格者の販売判断などが購入行動にどのような影響を与えたかを質問し、乱用群は「大量・頻回購入の抑止」、非乱用群は「通常購入への支障」の両面で評価した。
主な購入経路は「薬局・ドラッグストア」が乱用群84.3%、非乱用群87.0%と8割を超え、ネットは一桁台と店舗での購入が圧倒的に多かった。
中でも乱用防止で最も有効とされたのが、薬剤師や登録販売者の有資格者による販売可否の判断だ。乱用群の71.2%が大量・頻回購入の抑止になったと回答した一方、非乱用群で通常購入に支障になったのは42.0%と半数を下回った。
空箱を陳列する方法については、乱用群の59.1%が「抑止になる」と答え、非乱用群で「通常購入の支障になる」と回答したのは22.3%にとどまった。実製品陳列で抑止になると考えた乱用群は33.9%、購入の支障になると回答した非乱用群は22.0%となった。
医薬品販売制度の見直しでは小包装に限定した販売方法が議論される中、包装量ごとに購入行動に与える影響を調査したところ、乱用群は「30日分」33.5%、「14日分」37.1%、「7日分」57.2%、「3日分」62.6%と少ないほど抑止になるとの有意な結果が示された。
一方、非乱用群で通常購入の支障になると回答した割合は「30日分」21.0%、「14日分」25.5%、「7日分」38.0%、「3日分」46.5%と少ないほど医薬品を入手するアクセス確保が難しいと考えていることが分かった。
乱用回数3回以下の乱用者では「30日分」「14日分」の販売による抑止効果を認めたのは4割未満に過ぎなかったものの、「3日分」「7日分」は6割を超え、初期対応に有効であることが示唆される結果となった。
包装表示による注意喚起についても、乱用回数3回以下の初期の乱用に対して抑止の働きがあることが示され、具体的には「使用方法を守らないと副作用が起こりやすくなります」との表示では59.8%が「抑止になる」と回答し、乱用回数4回以上の45.1%を上回った。
岸本氏は、「専門家が販売可否を判断することで大量・頻回購入の抑止効果につながる」と強調。一方で乱用が増えている実態を踏まえ、「現在の薬剤師等による乱用者の応対が十分でない」とし、規制対応だけではなく薬剤師などが行うべき応対などを検討する必要性を指摘した。陳列方法については「通常購入への支障が少なく、抑止にもなる空箱対応が望ましい」としている。
包装量については小包装にすることで抑止効果がある一方、非乱用者の通常購入への支障が一定程度見られた結果から「各成分の中毒量をもとにした包装制限など具体的な検討を行う必要がある」と提言する。
また、包装への注意喚起表示は、「設問設定時には効力がないと想定していたが、乱用経験がある人の方が有意に抑止になるとの回答割合が高かったのは興味深い知見だった」と述べ、外箱表示も有効な対応策になり得るとの考えを示す。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
薬物乱用経験者の約7割が「薬剤師など有資格者による販売可否の判断は乱用目的の大量・頻回購入の抑止につながる」と回答したことが、昭和大学の研究で明らかになりました。空箱陳列による販売も、乱用経験者の約6割が「抑止になる」と回答しています。