薬局でRMP資材活用進む~患者向けの内容に課題も
製薬協はMR向け施策
医薬品の適正使用推進や副作用などのリスク最小化に向け、薬局現場でも医療従事者・患者向け資材の活用が進んできた。6月の調剤報酬改定で医薬品リスク管理計画(RMP)の資材を活用して薬剤師が患者に説明を行った場合、報酬上の評価が新設されたことを契機に薬局から製薬企業にRMP資材の要望が増えている。一方で、患者向け資材がない医薬品が全体の8割を占め、資材があってもポイントが絞り切れておらず分かりづらいとの声もある。MRから薬局にRMP資材の紹介が不十分との声もあり、日本製薬工業協会ではMRの行動に変化を起こすための施策など検討していく方針だ。
医師・薬剤師から患者に対する医薬品のリスク最小化活動では、通常は添付文書による情報提供が行われるが、資材による情報提供が必要と判断される医薬品についてはRMP資材を作成し、患者への説明に活用することとなっている。
RMPの活用は病院に比べて薬局で低いのが課題だったが、RMP資材を活用した説明が報酬上で評価されることにより、薬局現場に変化が生じている。ネクスウェイが薬剤師向けに実施した調査によると、RMPを認知し、RMP資材を活用している施設は全体の約7割に上った。
回答者の約8割が薬局勤務で、活用施設におけるRMP資材活用のきっかけについて7割超が調剤報酬改定を挙げた。リスク最小化につながった事例は、「妊娠の可能性がある場合の注意喚起に、より詳しい説明も書いてあるため、口頭で伝えるだけでなく、デリケートな内容のため文章にされている方が伝えやすかった」などが報告されている。
ただ、RMP資材で記載されている内容は患者視点で見ると十分とは言えないようだ。製薬協によると、患者からは「読む気がしない」「どれが大事な情報か分かりにくい」などの声が薬剤師に届いているという。
製薬協は、RMP資材で今後改善すべき点として「よりRMP資材で伝えるべきリスクを簡潔に伝えること」とし、ポイントを明示した資材を挙げた。また、薬局での現状の活用方法を踏まえ、「今の提供方法が最適か見直す必要がある」と問題提起した。
様々な処方箋を応需する薬局では、患者の来局時にその場でRMP資材があるかを確認し、急いで印刷して説明している状況にある。医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトに掲載されているRMP資材は、必ずしも現場での印刷を想定した形で掲載されていない。
今後、製薬協は、調剤薬局におけるRMP資材の活用方法に関してインタビュー調査で確認し、実態に合わせた資材のあり方を提案していく。RMP資材がリスク最小化に寄与しているかの効果検証事例が限定的なため、効果検証を行うと共に、医療現場に資材を提供するMRの行動に変化を起こすための施策、患者の視点を入れた資材の作成に力を入れる方向だ。
デジタルを活用した医療従事者、患者向け資材の情報提供も始まっている。くすりの適正使用協議会(RAD-AR)は、2022年に製薬企業が作成している患者向け資材を「くすりのしおり」に連携した情報提供プラットフォームサイト「くすりのしおりミルシルサイト」を構築した。
月当たり数百万の閲覧数を誇り、その大半は患者。くすりのしおりを作成している製薬企業の約4割に相当する74社が利用する。4月には患者向け資材を搭載した最初の薬歴管理サービスもスタートした。
俵木登美子理事長は、「くすりのしおりの約5枚に1枚しか患者向け資材が載っていない」と問題認識を示し、「多くの企業がくすりのしおりに患者向け資材を載せれば、患者さんに資材を届けられる」と語る。
デジタルによる情報提供の有用性については、「薬剤師によるオンライン服薬指導や、薬局店頭でもタブレットを使用して説明する場合もある。紙媒体では分かりづらい吸入剤の服薬方法などの動画コンテンツを作っている企業もあり、役立てられるのではないか」と話している。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
調剤報酬改定でRMP資材を活用して患者に説明を行った場合の評価が新設され、薬局現場におけるRMP資材の活用が進んでいます。一方で、患者向け資材がない医薬品が全体の8割を占め、資材があってもポイントが絞り切れておらず分かりづらいとの声も出ています。