薬剤師確保事業スタートへ~来年度、3県が2000万円超
医療計画の追い風背景に
各都道府県における2025年度予算案では、病院薬剤師不足解消に向けた薬剤師確保対策事業が新設または拡大された。医師や看護師確保に比べると予算規模は小さいものの、第8次医療計画で薬剤師確保策が盛り込まれたことが後押しとなり、茨城県、青森県、大分県では2000万円以上の規模となった。県内で薬剤師が不足している病院に一定期間就業した場合、奨学金返還を支援する制度を導入したり、インターンシップ事業を通じてPRを強化する県もあり、全国で薬剤師確保に向けた施策が本格的にスタートする。

病院薬剤師の偏在指標で全国ワーストの青森県は2298万円の予算を新規計上し、そのうち病院薬剤師奨学金返還支援事業費補助に1800万円を計画する。県内医療機関等における薬剤師の確保・定着を図るため、新たに県内病院に就職した薬剤師に対して奨学金返還支援を行う病院を支援するもので、病院に奨学金返還支援額の半額までを補助し、1人当たり上限60万円を6年間補助する。
大学薬学部がなく、病院薬剤師の地域偏在が深刻な茨城県も2700万円を計上。薬剤師不足地域内の病院で新たに勤務を開始した薬剤師について、日本学生支援機構等に奨学金を返済した額の一部を補助する制度を始める。
大分県は、薬剤師確保対策事業に2044万円を充て、奨学金返還を免除する制度を設ける。返還免除条件は貸付期間の1.5倍以上の期間で、薬剤師が不足する病院や県の行政機関に就職することとしている。
薬系大学生への返還免除付き修学資金の貸付対象人数は5人で、公立の場合は授業料等年80万円、入学金28万2000円、私立は授業料等年96万4000円、入学金26万円を貸与し、条件を満たせば返済不要となる。
また、医療機関が行う奨学金返済支援への助成についても15人までを対象に実施する。補助率は2分の1から3分の2とし、上限額は助成を受ける薬剤師1人または年間で80万円としている。
福井県は、地域医療介護総合確保基金を財源に薬剤師確保対策事業に356万円、薬剤師確保奨学金支援事業に400万円を充てる。地域の公的病院に就職した薬剤師への奨学金返還支援、地域の公的病院に就職する意思のある薬学部5.6年生への奨学金貸与を行うことにより、地域の医療提供体制を担う薬剤師を確保する。薬剤師には上限額として年間80万円を6年間、薬学生には年間80万円を2年間貸与する。
山形県は、病院薬剤師奨学金返還支援金の貸付や、薬系大学訪問による県内病院への就業促進、県出身者を対象とした就職情報セミナーを開催し、継続して病院薬剤師確保に取り組む。25年度は、新たに薬剤師不足が深刻な病院に対する薬剤師の派遣体制構築に向けた検討事業も計画する。
長野県は薬剤師確保対策事業費を増額し、薬剤師が不足している病院に勤務する薬剤師の奨学金返還補助を実施する。
薬学生に県内病院の魅力を発信する取り組みも重要となる。長崎県は薬剤師確保の予算を約3倍に拡大し、薬剤師確保対策事業費426万円のうち、薬学生の修学ツアー費用に290万円を充てる。26年度には奨学金返還支援制度を開始するため、25年度から募集を開始する。
滋賀県も薬剤師確保対策事業として411万円を新規計上し、そのうち薬学生インターンシップ実施に対する補助事業に325万円を盛り込む。
行政職の薬剤師確保も喫緊の課題となっており、宮崎県は薬剤師確保対策事業に890万円を計上し、県内の病院薬剤師の確保に加え、県職員薬剤師の安定的確保を図る方針。また、薬務関係資格試験業務委託事業として821万円を充て、資格試験業務の委託により不足する県職員薬剤師の業務軽減を図る。
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病院薬剤師に数値目標導入、地域病院への出向明記も~薬剤師確保計画が始動
出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
病院薬剤師不足解消に向けた薬剤師確保対策事業が、各都道府県における2025年度予算案で新設または拡大されました。第8次医療計画で薬剤師確保策が盛り込まれたことが後押しとなり、茨城県、青森県、大分県では2000万円以上の規模となっています。