医療

病院薬剤師に数値目標導入、地域病院への出向明記も~薬剤師確保計画が始動

薬+読 編集部からのコメント

2024年4月より全国で第8次医療計画がスタートしたことに伴い、各都道府県が薬剤師の地域・業態偏在を解消するための薬剤師確保計画を始動。病院薬剤師については、多くの県が数値目標を導入するなど、人材不足の解消に取り組む方針を示しました。

今月から2029年度まで6年間の第8次医療計画が全国でスタートしたことに伴い、各都道府県は薬剤師の地域・業態偏在を解消するための薬剤師確保計画を始動させている。多くの県が不足傾向にある病院薬剤師に関する数値目標を導入するなど、病院薬剤師の確保を強調した計画となった。大学卒業後に県内病院に一定期間就業すれば奨学金返還を免除する奨学金返還支援事業や基幹病院から地域病院への薬剤師出向などの施策を講じることで、病院薬剤師不足の解消を目指す。

 

病院薬剤師数に関する目標を盛り込んだのは福島県、茨城県、千葉県、山梨県、静岡県、滋賀県、島根県、広島県、山口県、福岡県。高知県や青森県は数値目標は示していないが、現時点から病院薬剤数を増加させる目標を明示している。

静岡県は、県内病院の不足薬剤師数を23年の127人から29年にゼロを目指し、島根県は病院薬剤師の充足度を29年までに95%に引き上げる。

 

病院薬剤師不足の解消に向けた主な施策は、地域医療介護総合確保基金を活用した取り組みが柱となっており、▽奨学金返還支援事業▽基幹病院から地域病院への薬剤師派遣/出向▽大学薬学部の地域枠――が挙げられる。

 

宮城県は、昨年度にモデル事業として実施していた東北大学病院から地域の自治体病院に薬剤師を派遣する「病院薬剤師出向・体制整備支援事業」を継続し、病院薬剤師の地域偏在解消につなげたい考え。

 

広島県も、基幹病院から薬剤師が不足している地域病院に薬剤師を出向させる事業を計画している。26年には、こうした薬剤師確保対策により「確保された病院薬剤師数」を44人にするとしている。

 

茨城県は、既に順天堂大学薬学部と茨城県地域枠に関する協定を締結しており、対象学生には奨学金を貸与し、一定期間にわたって県内病院に就業すれば奨学金の返済を免除する修学資金貸与制度を活用することで人材確保を図る。

 

三重県は短期的な施策として、薬剤師の奨学金返還助成制度の創設や県内における薬剤師の派遣・出向事業に取り組む。

 

島根県は、中山間地域・離島の病院薬剤師を確保するための薬学生への奨学金貸与、高知県は急性期病院の薬剤師確保に向けた奨学金返還支援制度を計画している。

 

病院薬剤師に関する成果指標で見ると、「病棟薬剤業務実施加算を算定している病院数」と他の都道府県に比べて踏み込んだのが京都府だ。

 

「圏域に関わらず、府民が同等の医療(薬物療法)の提供を受けることが可能な状態」を打ち出し、「病棟薬剤業務実施加算2を算定している地域医療支援病院」について23年の12病院から29年に15病院、「病棟薬剤業務実施加算1を算定している一般病床200床以上の病院数」に関しては30病院から33病院とするなど具体的な目標を設定した。

 

一方、病院薬剤師に比べると充足している薬局薬剤師では、在宅医療に対応した人材の確保を目指す計画が多いようだ。福島県は「在宅医療エキスパート薬剤師人材育成セミナー受講者」を23年の219人から26年には320人に増やす。広島県は「在宅医療の質向上のための知識・技能を習得し、他職種連携研修を修了した薬局薬剤師数」を22年の303人から26年には537人とする。

 

薬局機能では、一部の県が健康サポート薬局や認定薬局の数を計画に盛り込んだ。滋賀県は「健康サポート薬局、または特定の機能を有する薬局数」を29年に100薬局、研修受講者数では年間50人を目標とした。

 

佐賀県は、地域連携薬局数を23年4月の9薬局から30年4月には36薬局、専門医療機関連携薬局を2薬局から7薬局に増やす。長崎県は、地域連携薬局数を22年の17薬局から29年に124薬局と大幅増を目指す。

 

一方、愛知県は医薬分業の質を評価するなど独自色を出す。「電子版お薬手帳または電子薬歴システム等、ICTを導入している薬局の割合」「医師へ患者の服薬情報等を文書で提供した薬局の割合(過去1年間に平均月1回以上)」など、4指標全てで全国平均を上回ることを目標に掲げている。

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出典:薬事日報

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