妊娠リスクの低減に効果~緊急避妊薬調査で報告書 厚生労働省
厚生労働省は14日、2024年度「緊急避妊薬販売にかかる環境整備のための調査事業報告書」を公表した。緊急避妊薬のスイッチOTC化を検討するため協力薬局を対象に試験販売を行った同事業では、23年度事業にはなかった「服用3週間後の妊娠の有無の確認」を手順に追加。購入者の避妊成否確認については販売後3~5週間後の調査で「確認した」「今後確認する」が約8割に達し、望まない妊娠に気付かないままとなるリスクを低減できたとしている。
24年度事業では都道府県でバラツキがあった協力薬局を全国145薬局から339薬局に拡大した。そのほか、予期せぬ望まない妊娠や中絶機会の喪失を防ぐため、妊娠の可能性に関してチェックリスト・フロー等の資材の見直しや販売する薬剤師に対する追加的研修の実施、購入者に対し服用3週間後をメドに避妊成否を確認するよう指導徹底するなど事業を見直した。
昨年9月から今年1月末まで実施した結果、23年度事業で抽出した課題を改善する成果が得られた。購入者の避妊成否確認については販売後3~5週間後の調査で6割が「確認した」と回答。
「今後確認する」の2割を合わせると約8割が確認し、望まない妊娠に気付かないままとなるリスクを低減できたとした。
その確認方法については、緊急避妊薬と同時に購入した妊娠検査薬において確認した割合が37.5%、別途購入した検査薬での確認が59.3%、産婦人科への受診による確認が3.4%となった。妊娠の判断にかかる追加的研修に対しては9割近くの薬剤師が「役に立った」と回答した。
23年11月末から今年1月末までの販売数は6813件で、都道府県によりバラツキがあるものの、22都府県で100件超を販売した。最大は東京都の682件、最小は山形県の18件だった。
チェックリストに基づく判断結果については、全件数6813件のうち6433件が「販売可」、327件が「販売可とするが受診が必要」、53件が「販売不可」であった。
協力薬局への来局時期・曜日について大きなバラツキは見られなかったが、来局時間に関しては概ね9時から19時に集中しており、21時から8時まで夜間・早朝の来局は全体の2%程度だった。購入者の年齢層は多くが20~39歳であったが、16~19歳も9%程度存在した。
調査事業では、休日・時間外対応等を同一地域における協力薬局間で満たすことを要件としていたが、報告書では、▽スイッチOTC化された場合には薬局が少ない地域など協力薬局・薬店間での協力関係を求めるのが困難▽実態として夜間・休日対応が必要となった事例がわずかだった▽性交後72時間以内に服用する剤であるため、必ずしも夜間・早朝に即座に対応する必要性が高くない場合がある――などの課題が指摘され、「販売側に求める対応可能時間を検討する必要がある」と考察した。
購入者への満足度調査では「薬剤師の対応」「説明の分かりやすさ」「プライバシーへの配慮」への満足度は高い一方、7000~9000円の範囲で各薬局が設定した販売価格については、満足度が低い傾向にあった。
また、13薬局では販売対象外の16歳未満者に対する問い合わせがあり、11薬局では面前服用を拒否したために販売できなかった人がいた。
そのほか、協力薬局への事後アンケートにおいて研究参加の負担について尋ねたところ、「かなり負担」「やや負担」の割合が7割を超え、負担が大きいと感じたプロセスは、「可否判断のための聞き取り」が最も多く、次いで「電話相談への対応」であった。
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出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
厚生労働省が、2024年度「緊急避妊薬販売にかかる環境整備のための調査事業報告書」を公表。2023年度事業にはなかった「服用3週間後の妊娠の有無の確認」を手順に追加し、望まない妊娠に気付かないままとなるリスクを低減できたとしています。