医療

津波警報、薬剤提供で混乱~営業薬局の情報共有に課題

薬+読 編集部からのコメント

2025年7月30日午前にロシアのカムチャツカ半島付近を震源とする巨大地震で日本列島の太平洋沿岸の広い範囲に「津波警報」が発表されたことを受け、一部地域では薬局の一時閉鎖に伴い、患者への医薬品供給に混乱が生じました。

7月30日午前にロシアのカムチャツカ半島付近を震源とする巨大地震で日本列島の太平洋沿岸の広い範囲に「津波警報」が発表されたことを受け、一部地域では薬局の一時閉鎖に伴い、患者への医薬品供給に混乱が生じた。日本薬剤師会は「薬剤師のための災害対応マニュアル」を策定しているが、今回は地震被害がない状況で津波警報が発表される想定外のパターンだったことも影響した。病院・診療所は地域で対応可能な薬局を見つけることができず、緊急時の薬局開局状況について地域の薬局間、行政、他職種と情報共有する仕組み作りの重要性が改めて突き付けられた格好だ。

 

 「医薬品提供体制」教訓に

太平洋沿岸の広い範囲で津波警報が発表されたことに伴い、全国の各自治体から地域住民に避難指示が出された。薬局・ドラッグストアも30日午前に臨時閉店するなどの対応を取り、各社ホームページ上から営業休止の案内を行った。

 

課題となったのは、地震被害がない状況下で津波警報が発表された場合の対応方法が各社判断に依存し、それが地域医療の関係者間で共有されず、足並みが揃わなかった点だ。

 

薬局・ドラッグストアは、事業継続計画(BCP)に沿って薬局店舗の営業継続・休止を決めるが、地域行政や薬剤師会に薬局の開局状況を報告するプロセスが定められておらず、医療機関や患者に影響が生じた。

 

相模湾や三浦半島に津波警報が出された神奈川県内では、藤沢市や茅ヶ崎市などに避難指示が出た。ある地域薬剤師会ではチェーン薬局などが相次いで営業休止を決め、診療所が営業している薬局を探せない状況に直面していたため、薬剤師会幹部が経営している薬局が自主的に営業を継続した。

 

営業を継続した薬局には津波の状況を確認し、津波のリスクが高いと判断した時には迅速に閉店・避難するよう指示。医師会とも情報共有した。その結果、地域での医薬品提供体制を何とか維持した。

 

神奈川県薬剤師会の幹部は、「津波警報の発表は初めての経験だったので今後の教訓にしたい。大手チェーン薬局だと勤務薬剤師が多く、公共交通機関を考えると営業休止せざるを得ない。個店薬局は地域密着なので、緊急時にも薬局機能を生かせるようにしたい」と話す。

 

営業休止、営業再開などの状況を共有する仕組み作りが重要となり、今後、東京都や千葉県、茨城県薬剤師会などの関東・東京ブロック災害対策連絡会の場で津波警報が出た場合の対応について広域で検討していきたい考えを示す。

 

また、組織率100%を誇る青森県の八戸薬剤師会は、地震や津波が発生した場合に会長の指示で災害対応を行える事業継続計画(BCP)を策定している。津波警報発令後、災害の連携協定を結ぶ青森県や八戸市と連携しつつ、会員薬局にはSNSを駆使して地域の開局状況を把握し、行政や医師会に情報提供した。その結果、営業休止した薬局は多くなく、地域医療の継続については特に大きな混乱がなかったという。

 

阿達昌亮会長は、「災害への備えを行っていたのが良かった」と収穫を語った上で、「地震被害がなく津波警報が発表されるケースは想定外。BCP発動の条件をもっと具体的に落とし込む必要があると感じた」と課題を口にした。

 

一方で「会員薬局も被害を受けていないため、薬剤師会に連絡するという意識が薄かったように思う。薬剤師会に連絡することの意識付けと効率的に情報収集できる方法についても考えていきたい」と語った。

 

亀田総合病院薬剤部も対応に追われた。30日午前8時37分に千葉県鴨川市に津波注意報、同9時40分に津波警報が発表され、津波の高さは3m予想とされた。医薬品卸はMSの安全確保のため、物流はストップした。

 

同院薬剤部の舟越亮寛部長は、つくば市内で開催された日本病院薬剤師会関東ブロック学術大会での講演で「医薬品の備蓄が必要だということを実感した」と語った。

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出典:株式会社薬事日報社 

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