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【和医大 岡田氏】薬剤師処方10カ国に拡大~医師不足や医療費増背景

薬+読 編集部からのコメント

薬局薬剤師が独立して薬剤を処方する制度が欧州を中心に世界10カ国に広がったことを、和歌山県立医科大学薬学部社会・薬局薬学研究室教授の岡田浩氏が日本社会薬学会年会の講演で語りました。背景には医師不足や高騰する医療費への対応があります。

和歌山県立医科大学薬学部社会・薬局薬学研究室教授の岡田浩氏は6日、同大キャンパスで開かれた日本社会薬学会年会で講演し、薬局薬剤師が独立して薬剤を処方する制度が欧州を中心に世界10カ国に広がったと語った。背景には医師不足や高騰する医療費への対応があり、薬局薬剤師への期待は強い。独立した処方だけでなく、世界各国の地域薬局は予防接種や検査など幅広い役割を担うようになったとして、さらなる職能拡大に向けて薬剤師自ら臨床研究を実践し、その効果を数値で示すよう呼びかけた。

薬剤師による独立した薬剤処方は、イギリス、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、スイス、デンマーク、フランス、ポーランド、アイルランドの10カ国に広がった。イギリスでは2026年から新卒薬剤師全員が処方権を持ち、既卒者も一定の研修を経て処方可能になる。カナダのアルバータ州では2年以上の実務経験を持つ薬剤師が自己申告で処方できる制度に移行した。

 

約20年前から世界でリフィル処方箋が普及したことを契機に、薬剤師に処方を任せても良いのではないかという認識が広がった。実際に海外の臨床研究で、薬剤師が処方を担ったところ、薬剤師管理群の方がアウトカムは良いことや、抗菌薬が適正に使用されることなどが明らかになった。岡田氏は「臨床研究の後押しもあって世界に薬剤師の独立した薬剤処方が広がった」と話した。

 

世界各国で高齢化や医師の専門化が進み、地域で糖尿病や高血圧等の慢性疾患患者の管理を行う医師の確保が難しくなっている。医療費が高騰し、医療保険制度を維持できないとの危機感もある。岡田氏は、こうした背景もあって「薬局を活用するという方向に変わってきた」と説明した。

 

合わせて地域薬局の役割も広がった。25年前に世界保健機関(WHO)と国際薬剤師・薬学連合(FIP)は「薬剤師はカウンターの奥から出て、薬だけでなく患者へのケアを提供すべき」との声明を発表。実際に現在では、HIV検査や相談、新型コロナ感染症検査、予防接種、緊急避妊薬提供などに取り組む薬局が世界各国で増え、薬局は地域ケアの拠点へと進化している。

 

岡田氏は、これまで海外の事例を参考に国内で一連の「COMPASS研究」を実施し、薬局薬剤師の継続的な支援で血糖値や血圧が下がることを明らかにした。この経験を踏まえ、「薬局が社会に貢献できる可能性について研究する地域薬局学という学問が必要ではないか」と強調。「地域薬局が果たす役割について、立場が異なる人でも納得できるようにする。科学的な手法で明らかにすることも薬剤師の仕事ではないか」と投げかけた。

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出典:株式会社薬事日報社 

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