調剤報酬で病薬不足対応を~薬局との業態偏在問題視 中央社会保険医療協議会総会
中央社会保険医療協議会は10日に総会を開き、2026年度調剤報酬改定に向けた議論を開始した。薬局・薬剤師の地域偏在が課題となる中、森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「地域医療を支えている薬局への配慮が必要」と主張。地域の中小薬局が確実に賃上げを行えるよう評価の拡充を求めた。これに対し、他の委員からは、薬局薬剤師と病院薬剤師の業態偏在を問題視する意見が相次ぎ、支払側は「病院薬剤師が不足する問題を医科の報酬だけではなく、薬局の調剤報酬で対応することも検討すべき」と迫った。

この日の総会で森氏は、物価高や人件費高騰、毎年薬価改定、医薬品の仕入れ価格の高騰などにより「薬局経営は厳しい状況。地域医療を支えている中小薬局は特に厳しい」と訴え、薬局経営の地域差を課題に挙げた。
今後、地域差が拡大することが見込まれる中、「地域により人口構造、医療資源、医療提供体制が異なってくるため、医療上の配分が必要」とした上で、「地域医療を支えている薬局への配慮が必要。薬局が医薬品供給拠点としての機能を保持し、経営体力をつけられるようにすべき」と支援を求めた。
地域の医薬品供給拠点の役割を維持・強化するためには、「いわゆるファーマシーフィーとしての調剤基本料の加算により、薬局の供給業務を下支えすることが必要」とし、薬局薬剤師に対する賃上げが確実に行われるよう調剤基本料での加算を求めた。
しかし、他の委員からは薬局・薬剤師の地域偏在よりも、薬局薬剤師と病院薬剤師の業態偏在を解消するべきとの意見が相次いだ。
江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「先進国の中でも人口当たりの薬剤師数はわが国が最も多いが、病院薬剤師数は逼迫している。薬局が算定できる薬学管理料と差があり、薬剤師の処遇に病院と薬局で大きな差がある。今後、病院薬剤師の評価はこれまでの例にとらわれることなく忌憚のない議論が必要」と主張した。
池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)、患者代表の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)も「病院薬剤師の確保が課題」と同調した。
さらに、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「薬局から病院へ薬剤師をシフトさせ、病院の薬剤関連業務の負担を軽減するために、医科の報酬だけではなく薬局の調剤報酬で何ができるかも検討すべき」と述べ、調剤報酬上の対応も選択肢に病院薬剤師不足の問題解決を図る必要性を提言した。
これら主張に対し、森氏は「病院薬剤師不足は喫緊の課題」としつつ、「29府県で薬局薬剤師の偏在指標が1を下回っている。薬局薬剤師を確保し、医薬品提供体制を構築するのも課題」と牽制し、薬局薬剤師の確保に理解を求めた。
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出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
2026年度調剤報酬改定に向けた議論が、中医協総会で開始されました。薬局薬剤師と病院薬剤師の業態偏在を問題視する意見が相次ぎ、支払側の委員からは、調剤報酬上の対応も選択肢に病院薬剤師不足の問題解決を図る必要性が提言されました。