【NPhA調査】個人宅在宅に重い負担~作業時間は外来の8倍 日本保険薬局協会
日本保険薬局協会(NPhA)は、1件の訪問にかかる個人宅への在宅業務の作業時間が外来業務における処方箋処理時間の約8倍とする調査結果を公表した。薬剤師3.6人、薬剤師以外2.9人の平均的な薬局において薬剤師1人が1時間の在宅業務で得る収益は4715円と、薬剤師1人が1時間換算した給与費を下回るとの結果も示した。
次期調剤報酬改定では、個人宅への在宅訪問薬剤管理にかかる運営コストに見合った持続可能な評価を求めている。
調査によると、個人宅1訪問にかかる在宅業務の作業時間は平均98分で、厚生労働省タイムスタディ調査における「薬局における処方箋1枚の処理時間」である12分41秒の約8倍に相当するとした。
「訪問調整や事務連絡・問い合わせ」が8分、「調剤業務」が24分、「移動」が25分、「患者や患者家族とのコミュニケーションや薬学的管理業務」が16分、「在宅訪問の報告書作成」が11分、「訪問に紐付く多職種とのコミュニケーション」が6分、「訪問に紐付かない他職種とのコミュニケーション」が8分となっている。
NPhAは「薬局全体のリソースが大きく割かれている。1訪問当たり在宅業務の作業時間が100分かかるのは大きな負担になる」としている。
また、終末期ケア患者は117分、癌患者、腎不全患者は106分と特に長い作業時間を要しており、終末期ケアの訪問では無菌調剤業務やPCAポンプ利用にかかる業務に長い作業時間がかかっていた。
「精神的負荷を感じる認知症患者」は128分となった。認知症患者で精神的負荷を感じる在宅業務については、「薬の過量服用を起こしたり、それを起こさないように対策を講じてもうまくいかなかったり、予定外の受診が多くなったりした場合は負荷を感じる」などの理由が挙げられた。
医療経済実態調査をもとに、薬剤師3.6人、薬剤師以外2.9人を配置している平均的な薬局をベースに、在宅1訪問当たりの収益5815円を調剤時間を抜いて薬剤師1人、1時間換算した収益を算出したところ4715円となり、薬局の年間給与費3662万円から薬剤師1人・1時間換算した給与費4890円を下回った。
効率が悪い在宅業務は「患者の個人宅往訪のための移動時間」「訪問時に患者が不在なための待ち時間」「報告書の作成、FAXを利用した送付」などとなった。
NPhAは、給与費以外に家賃や水道光熱費、交通費など様々な費用が発生していることを踏まえると、「在宅業務では大きな赤字が生じている」と考察。個人宅の在宅業務に適した対価を求めている。
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出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
1件の訪問にかかる個人宅への在宅業務の作業時間は、外来業務における処方箋処理時間の約8倍とする調査結果を、NPhAが公表しました。平均的な薬局において薬剤師1人が1時間の在宅業務で得る収益は、薬剤師1人の1時間換算の給与費を下回るとの結果も示されています。