【日薬 岩月会長】薬局の新たな評価軸実現へ~地域単位の調剤報酬制度も 日本薬剤師会

日本薬剤師会の岩月進会長は、本紙の取材に対し、2026年度調剤報酬改定に向けた議論で全国の薬局や薬局薬剤師が都市部に集中していることが問題視されている点について、「患者が薬局を選ぶ基準として立地から機能への移行が提唱されていたにも関わらず、機能で評価される仕組みを作ってこなかったことは反省すべき」と指摘。今後は地域薬剤師会によるアクションリストの作成を通じてスキルを持った薬剤師を配置し、需要者の価値観に対応した薬局が評価される仕組みを実現していく考えを表明した。一方、地方の薬局は厳しい経営状況にあり、「全国一律ではなく地域単位での評価を検討していくべき」と訴える。
患者のための薬局ビジョンが策定されてから10年が経過したが、「全ての薬局がかかりつけ機能を備える」「患者が考える薬局の選択基準を立地から機能に変える」といったビジョンの姿は実現されているとは言えない。中央社会保険医療協議会総会では、薬局数が増加し、都市部医療機関の門前薬局に集中している現状が問題視された。
岩月氏は、「薬局や薬剤師が適正に評価される仕組みを作ってこなかった」と総括し、地域薬剤師会が主軸となり、▽医薬品に対する深い知識がある▽手順通りに薬剤師業務を行える▽コミュニケーション能力が高い――といった三つのスキルを持った質の高い薬剤師を各地域に配置し、需要者の価値観に合った薬局づくりに取り組むとした。
需要者の価値観に合った薬局づくりから、薬局・薬剤師の新たな評価軸を作りたい考えだ。内閣府の消費動向調査によると、過去の調査では消費者のサービス購入動機として最も重視されていたのは「価格」だったが、近年は価格よりも「自分の価値観に合ったサービス」が選択されるなど、消費行動が変化している。
岩月氏は「サービスは安ければいいという人たちが『自分の価値に合うものを買う』『機能が洗練されているものを買う』と消費行動を変えているように、ライフスタイルに合ったものを買ってくれる時代となっている。地域住民一人ひとりの価値観に合う薬局であれば利用してくれるし、需要者に選択される薬局を実現できれば、全国約6万3000軒の薬局数が多すぎるということにならない」と話す。
医薬品・薬剤師サービスの提供を地域体制の観点から再点検・再構築するために、地域薬剤師会がアクションリストの作成を進めている。アクションリストのゴールは、地域住民の動向を把握して需要者の価値観がどこにあるのかを特定し、薬局・薬剤師が提供するサービスの価値を地域住民や行政、他職種に見える化していくことにある。
岩月氏は、アクションリストを「地域薬剤師会の成績表」と位置づけ、「地域薬剤師会が自分たちの地域にいる薬局、薬剤師を評価できるようにならなければいけない」と説明する。
一方で、地域差を考慮した報酬上の評価の仕組みも求めた。患者数の減少などで地域の個店薬局の経営は厳しく、赤字に苦しむ。医療機関・医師は少なく、地域特性から処方箋集中率も高くなる構造であるため、報酬上不利になる場合も多い。
岩月氏は「東京・大阪の都市部と人口減少が進む地方では、薬剤師1人当たりの患者数が違うため、薬剤師1人当たりの患者数を都市部と同水準にするためには、一つの薬局がカバーするエリアを広げなければならず、薬局に在籍する薬剤師数を増やさないといけない」と強調。地域単位での評価を検討していく必要性も指摘した。
出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
日本薬剤師会の岩月会長が薬事日報紙の取材に応じ、2026年度調剤報酬改定に向けた議論で全国の薬局や薬局薬剤師が都市部に集中していることが問題視されていることを受け、地域薬剤師会によるアクションリストの作成を通じてスキルを持った薬剤師を配置し、需要者の価値観に対応した薬局が評価される仕組みを実現していく考えを表明しました。