4件をオーファン指定‐強皮症にトシリズマブなど
薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2月26日、中外製薬のトシリズマブ(遺伝子組み換え)など4件を希少疾病医薬品に指定することを了承した。
▽トシリズマブ(中外製薬):予定する効能・効果は全身性強皮症。同疾患は皮膚や内臓臓器の線維化、末梢循環障害などを特徴とし、指定難病に指定されている。
全身性強皮症には、肺線維症に対するシクロフォスファミドが治療薬として承認されているが、悪性腫瘍の誘発など安全性に関する懸念があるため、投与期間が1年に制限されている。トシリズマブは、全身性強皮症の疾患形成に深く関与しているIL-6のシグナルを阻害するため、症状の改善が期待でき、医療上の必要性は高いと判断した。既に海外では、第II/III相試験が実施され、皮膚硬化のみならず、肺機能やQOLを改善する傾向が示された。この結果を受け、現在、日本を含む国際共同第III相試験が進行中で、開発の可能性は高いと判断した。
▽ヒトα1プロテアーゼインヒビター(グルフォリス):予定する効能・効果は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症した重症α1-アンチトリプシン欠乏症。同疾患はα1-アンチトリプシンの欠乏により、若年性にCOPDを発症する疾患で、指定難病に指定されている。
わが国では、COPD治療薬として気管支拡張薬などが承認されているが、いずれも対症療法であり、原因であるα1-アンチトリプシン欠乏症に対して承認されている薬剤はなく、医療上の必要性は高いと判断した。
既に同剤は、世界5カ国で承認されており、日本では国内第I/II相試験が開始予定であることから、開発の可能性は高いとした。
▽ヒト血漿由来プロトロンビン複合体濃縮製剤(CSLベーリング):予定する効能・効果は、ビタミンK拮抗薬療法中の患者における急性重篤出血時、外科手術または侵襲的処置が求められる場面でのPT-INRの速やかな是正。ワルファリン等の服用患者ではPT-INRが高まり、出血リスクが高まることが知られる。国内推定患者数は約3万5600人程度。
わが国では、出血時などにPT-INRを是正する目的でビタミンK、新鮮凍結血漿が承認されているが、学会等のガイドラインでは、緊急手術時などに短時間でPT-INRを是正できるヒト血漿由来プロトロンビン複合体濃縮製剤の使用が推奨されており、厚労省の検討会でも開発要請がなされていることから、医療上の必要性が高いと判断した。
既に海外では、世界30カ国・地域で承認されているが、日本で国内第III相試験が実施中であり、開発の可能性が高いとした。
▽ニボルマブ(遺伝子組み換え)(小野薬品):予定する効能・効果はホジキンリンパ腫で、国内推定患者数は約2000人。再発・難治性のホジキンリンパ腫に対しては、多剤併用化学療法の後に自家造血幹細胞移植を併用(ASCT)しているが、予後不良であることが報告され、これら治療が適応とならない患者への多剤併用化学療法に延命効果を示す成績はないため、医療上の必要性は高いと判断した。
海外では、ASCT施行後の再発・難治性ホジキンリンパ腫患者を対象に第II相試験が実施中。未治療患者を対象に標準治療と多剤併用化学療法の併用投与を比較する国際共同第III相試験が計画中で、日本からも参加が検討されていることから、開発の可能性は高いとした。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は中外製薬のトシリズマブなど4件のオーファン指定を了承しました。トシリズマブの予定する効能・効果は全身性強皮症。海外では皮膚硬化以外に肺機能、QOLの改善傾向も示されているということです。