薬剤師兼美容家として活動する花田真理さんが、「薬剤師として知っておきたい美容の知識」「手軽にできるヘアアレンジ」など、“薬剤師と美容”をテーマに語るコラムです。

そもそも角質層とは？
前回、「角質層の状態を整えることが大切」とお伝えしましたが、そもそも「角質層」とはどんなものかご存知ですか？

角質層は「角層」ともいわれる、肌表面にあるわずか0.02mm（平均的数値）の層のことをいいます。この0.02mmの中には活動を停止した細胞がブロックのように重なり合っていて、細胞と細胞の間に細胞間脂質やNMF（天然保湿因子）が存在します。角質層は肌表面にあるものなので、全身に存在しますが場所によって厚さが異なります。

腕や身体のほとんどは細胞が15層程度重なっているといわれています。
しかし、外部からの刺激を受けることが多い部分……たとえば手のひらの角質層は50層、足の裏は70～80層、かかとは100層ともいわれ、非常に厚く物理的な刺激に強くなっています。その一方、顔の角質層は10層程度と薄くなっています。

乾燥肌の人の角質層はこんな状態
健康な肌は「皮脂膜」、「NMF（天然保湿因子）」、「細胞間脂質」という3つの物質がバリアを作り、外部刺激（アレルゲンや紫外線など）から肌を守ったり、肌内部の水分が逃げていかないようになっています。
この「バリア機能」によって肌の「もちもち感」や「柔らかさ」が作り出されています。
乾燥肌の人は「バリア機能」が低下している状態です。そのため、肌（角質層）の水分は蒸発しやすく、外部刺激を受けやすい状態になっています。

バリア機能をつくる3つの大事な物質とそれぞれの特徴
先ほども述べたように「皮脂膜」、「NMF（天然保湿因子）」、「細胞間脂質」という3つの物質が肌のバリア機能をつくるため、肌にとってはこの3つがとても大切です。

①皮脂膜

皮脂腺から分泌された皮脂と、汗腺から分泌された汗などが混ざり乳化してできたものを「皮脂膜」といいます。肌表面の膜となり、角質層の水分蒸散を防いだり、肌に潤いを与えたりと肌をなめらかにします。
皮脂膜に含まれる脂肪酸によって角質層の表面の弱酸性を保ち、細菌の繁殖を抑制する役割もあります。

②NMF（天然保湿因子）

NMF（エヌエムエフ）とは、Natural Moisturizing Factor（ナチュラル・モイスチャライジング・ファクター）の略です。「天然保湿因子」ともいいます。
NMFとは一つの成分のことではなく、皮膚にもともと備わっている、水となじみやすく水分を保持する力を持った物質の総称です。NMFは角質細胞内に存在し、角質層の水分を保持する力があります。
アミノ酸類、乳酸、ピロリドンカルボン酸（PCA）、尿素、ミネラル塩類、有機酸などから構成されており、アミノ酸（およびその誘導体）が大半を占めています。

③細胞間脂質

角質層を構成する「細胞と細胞のすきま」を埋めている脂質のことをいいます。
細胞間脂質はセラミドやコレステロール、遊離脂肪酸などから構成されており、なかでもセラミドが約半数を占めています。
細胞間脂質は「細胞と細胞のすきま」を埋めることで、外部からの刺激の侵入を防いだり、角質細胞内で水分を保持しているNMFが細胞内から溶け出さないようにしたりしています。また細胞間脂質自体もラメラ構造（層状構造）を形成しており、水分を挟み込むことで肌の潤いを保ちます。

これら3つの物質は皮脂膜が2%程度、NMF（天然保湿因子）が18%程度、細胞間脂質（セラミドなど）が80%程度の割合で角質層に保持されている水分を保つ役割を担っています。

角質層における角質層細胞と細胞間脂質の状態は、よくレンガ（角質層細胞）とセメント（細胞間脂質）の関係にたとえられます。レンガの塀などを想像するとわかりやすいかもしれません。

さて、乾燥肌に悩む人はこれからの冬に向けて何をするべきか？　次回は美容としても高齢の方へのアドバイスとしても役立つ乾燥肌対策をお伝えします！　お楽しみに。