調剤薬局を取りまく状況は、時代とともに変化しています。特に近年は、慢性疾患による長期療養を必要とする患者さんが増えたことや、高齢化によって介護施設で生活しながら療養する人が増えたことによって、医療機関以外で薬物治療を受けるケースが多くなりました。さらに、処方日数の制限が撤廃され、生活習慣病の薬などは長期処方が可能になったこともあり、調剤薬局の薬剤師が担う役割はより重要になっています。
本書では、薬局のあり方を時代ごとに3つの段階に分類して定義しています。小売業として一般医薬品を販売していた時代の薬局が「薬局1.0」。1974年の医薬分業によって始まった調剤薬局として医療用医薬品を提供する薬局が「薬局2.0」。そして、医療提供施設としての薬局が「薬局3.0」です。
今後、調剤薬局が生き残っていくためには、この「薬局3.0」を目指すことが大切だと著者はいいます。患者さんのニーズを考え、それにしっかりと対応していくことが求められており、それにはマーケティングの手法を薬局経営に取り入れる必要があるとのこと。本書では、マーケティングの手法である「ランチェスター戦略」や「エクスペリエンスマーケティング」、「SWOT分析」などの基本と、それを薬局経営に生かすにはどのような考え方をすればよいかも紹介されています。
さらに本書では経営戦略について考えるだけでなく、薬剤師が変わっていく「薬剤師3.0」も必要だと強調されています。薬を出した後の患者さんの状態を薬学的にチェックすることで、前回の処方が妥当であったかどうかを評価する。そして、それを次回の処方前に医師に伝えてディスカッションを行い、薬物治療の適正化を目指す、といった患者さんに薬を渡した後のアフターフォローをしっかりと行うことがより重要になっていきます。そのようなフォローをしっかり行える「薬剤師3.0」こそが、これからの時代に求められる姿なのです。
薬局や薬剤師のあり方をマーケティングの観点から考えることで、これまで見えていなかった課題や改善点が見つけやすくなるかもしれません。薬局のあり方、そして、薬剤師個人としての仕事との向き合い方を、新しい視点から考えてみたいという人におすすめの1冊です。