映画・ドラマ

更新日:2019.05.07公開日:2019.03.20 映画・ドラマ

医療の現場を描くドラマや映画は数多くありますが、中でも薬剤師さんにおすすめの作品をピックアップする本コラム。2018年診療報酬改定以降、かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき機能として、24時間対応や在宅対応、医療連携は必須の時代へ――。そこで今回は、今後薬剤師にますます求められる“在宅医療”をテーマにした映画に迫ります。

vol.36「ピア まちをつなぐもの」

医師、薬剤師、訪問看護師、介護福祉士、歯科医師、歯科衛生士、リハビリ職、管理栄養士――在宅医療に懸命に取り組む仲間たちの命と希望の物語『ピア まちをつなぐもの』が4月26日に劇場公開されます。
映画をこよなく愛する記者Kが、本作のみどころや制作秘話をレポート。映画を見る前にチェックしておくべき“5つのリアル”とは。

薬剤師にとって在宅医療の今がわかる5つのリアル

INDEX

 

 

1.プロデューサーの想い ~在宅医療のリアルとは

 

厚生労働省の調査によると、最期を迎えたい場所は「自宅」が54.6%で最も高く、在宅業務を実施している薬局は年々増加傾向。薬剤師をはじめ、医療人にとって「在宅医療」は年々重要性を増しています。

 

「在宅医療の“いま”を伝えたくて…」

 

映画のプロデューサー山国秀幸さんのそんな思いが込められたこの映画は、2年前に公開された映画『ケアニン~あなたでよかった~』の製作スタッフが再び集結。
前作は介護福祉士が主役でしたが、最新作では若手医師の視点から在宅医療が描かれています。

 

「2年前にケアニンを制作していく過程で在宅医療というテーマに出会い、その重要性を痛感し、次に取り組むべき映画の題材だと感じていました。また、最期まで患者さんやその家族に寄り添う医師を中心とした多職種の仕事の尊さを知り、それらもぜひ多くの方々に伝えたいという思いが募り、本作に着手しました」(山国さん)

 

本作の原作・プロデューサー 株式会社ワンダーラボラトリー代表・山国秀幸さん。

 

プロデューサーの山国さんは、映画製作にあたり、実際の医師、ケアマネジャー、介護福祉士、薬剤師、訪問看護師、歯科医師、リハビリ職、管理栄養士など在宅医療にかかわる医療関係者50人以上に取材や同行をしたり、研修や会議にも参加し、自ら原作を書き上げたそう。在宅医療とは何なのか、どんな仕事なのかが、その本質をリアルに実感できます。

 

 

>>在宅医療を経験できる職場はどんなところ?

 

 

2.在宅医療における多職種連携とは-薬剤師役がリアル

 

主人公は、細田善彦演じる若き医師。細田は、テレビドラマ『3年A組』(日本テレビ系)に刑事役として出演していた注目の若手俳優です。

そして医師と同級生で薬剤師役を務めているのが三津谷亮。NHK大河ドラマ『真田丸』などにも出演していたイケメン俳優です。

 

薬剤師役の三津谷亮(写真右)が登場するシーン。薬の飲み合わせやポリファーマシーなど薬剤師が関わるシーンには、日本薬剤師会が監修・制作協力を行っています。

 

「三津谷さんは、お姉さんが看護師さんなのだそうで、薬剤師を演じるにあたり、お姉さんに意見を求めたそうです。医療現場のことをかなり勉強してから現場に入られていました」(山国さん)

 

患者の自宅を訪れるシーンでは、お薬カレンダーに一包化された薬をセットし、高齢の患者さんに目線を合わせながらゆっくりと薬の説明をするなど、“こんな薬剤師さんがいたらいいなあ”と思わせるような優しい雰囲気。三津谷のリアルな演技から、在宅医療における薬剤師に求められているものを感じることができるのです。

 

医師役:細田善彦、ケアマネジャー:松本若菜、薬剤師:三津谷亮、介護福祉士:金子なな子、歯科医師:加藤虎ノ介、歯科衛生士:桜まゆみ、訪問看護師:田山由起、管理栄養士:枝元萌、理学療法士:村上和成、作業療法士:中野マサアキ、福祉用具専門相談員:大迫一平らが出演。在宅医療のチームとはどんなものかがわかりやすく描かれています。

 

3.ロケ地はどこ? ~現職の看護師や医師がリアルに登場

 

映画の主なロケ地となっているのは、在宅医療における先進地区ともいえる千葉県柏市。

主人公の父、升毅演じる高橋圭蔵先生は、柏市でいちはやく在宅医療に従事し、地域住民に親しまれていた実在の医師がモデルの一人となっています。

また、映画に登場する多職種連携会議のシーンには、現職の医師や看護師、介護福祉士らが出演しています。撮影場所として使われているのも、実際の会議が行われている地域医療連携センターなのです。

 

 

4.乳がん患者を演じた女優魂 ~水野真紀の演技がリアル

 

この映画は、医師や薬剤師など医療スタッフの葛藤を描く一方で、在宅医療を受ける患者と家族側の描写も見どころのひとつです。

映画のキーパーソンとなっているのが、乳がん患者を演じた水野真紀。がん患者とその家族の苦しみを描くシーンで水野の迫真の演技に圧倒されます。試写会会場にはすすり泣きが…。

 

 

「水野さんは、お知り合いを乳がんで亡くされた経験などがあり、この作品の社会的意義を感じて、出演を決められたそうです。役に合わせて食事制限をされ、体重をかなり絞った状態で撮影に入られました」(山国さん)

 

 

5.映画を見て感じた在宅医療のリアルとは

 

「在宅医療とは、患者の死と向き合うこと」。映画を見る前までは、在宅医療に対するイメージはどちらかといえばネガティブな印象でした。

しかし、ストーリーが進むうちに、最初は在宅医療に懐疑的だった医師が、患者と向きあっていくことで徐々に変わり始めるのです。

 

「在宅医療とは、幸せに生きてもらうための医療」

 

もがき苦しむ医師がたどりついたセリフが心にじんわり迫ります。

 

本作は、劇場公開が終わったあとにも全国で自主上映を予定しているという。薬剤師に今後求められる在宅医療の”いま“を知ることができる貴重な作品。薬剤師として次のキャリアを踏み出すきっかけになるのでは…。

 


 

映画の制作に協力している日本薬剤師会主催の映画試写に潜入する記者K。日本薬剤師会・山本信夫会長も映画をご覧になり、「薬剤師が描かれた映画は貴重。大きな課題であるチーム医療が現場の視点で取り上げられている」とコメント。

 

取材・文/廉屋友美乃