薬剤師の早わかり法律講座 薬剤師の早わかり法律講座

法律とは切っても切れない薬剤師の仕事。自信を持って働くためにも、仕事に関わる基本的な知識は身につけておきたいですね。薬剤師であり、現在は弁護士として活躍中の赤羽根秀宜先生が、法律についてわかりやすく解説するコラムです。

第12回 患者さんがお金を払ってくれない!薬局の未収金を回収するには(2)

前回 のポイント】

  • ・患者さんが薬剤の一部負担金を払ってくれないときは、まず「内容証明郵便」で請求を!
  • ・内容証明郵便で支払ってもらえなければ、簡易に利用できる法的手続き「少額訴訟」や「督促手続」を利用しよう
  • ・法的手続きを行う場合も、患者さんが任意で払ってくれるよう現実的な妥協点を探ろう

薬局の未払金回収には時効がある

前回は、患者さんが薬剤の一部負担金を支払ってくれないときの法的な回収手続きについてお話ししました。ひとつ覚えておきたいのは、回収できる期間には時効があるということです。調剤報酬の消滅時効は通常の債権よりも短く、3年しかありません(民法170条1号)。請求できるときから3年を超えてしまうと、時効の援用(時効が成立しているため債務を支払わない旨の意思表示をすること)をされた場合、その後、請求はできなくなってしまいます。

○(三年の短期消滅時効)
民法第170条 次に掲げる債権は,三年間行使しないときは,消滅する。ただし,第二号に掲げる債権の時効は,同号の工事が終了した時から起算する。
一 医師,助産師又は薬剤師の診療,助産又は調剤に関する債権
二 工事の設計,施工又は監理を業とする者の工事に関する債権

しかし、前回ご紹介した「少額訴訟」や「督促手続」などの法的手続きをすれば、話は別です。「3年」という期間を超える前に裁判上の請求を行えば、時効は完成しません。前回、法的手続きをしても未収金回収は簡単ではないとお話ししましたが、回収までは至らなくても、これらの手続きで債務名義(判決等)を取っておけば、時効を中断させる効果が得られるのです。

なお、「内容証明郵便」の場合は裁判外の請求の扱いになり、これを「催告」といいます。時効が成立する直前であっても、内容証明郵便で催告すれば、時効の完成を6ヶ月遅らせることができます民法153条)。また、催告をして6ヶ月以内に裁判上の請求等をすれば、時効を中断できる効果もあります。


薬剤の一部負担金を保険者が請求してくれる?

健康保険法および国民健康保険法には、患者さんが一部負担金を支払わない場合に、保険者が医療機関等の代わりに未収金を徴収してくれるという制度があります(国民健康保険法42条2項、健康保険法74条2項)。

この制度は、個々の医療機関等が善良な管理者の注意義務をもって未収金の回収を試みたにもかかわらず、回収できなかった場合に適用されます。医療機関等が保険者に請求をすることによって、保険者が代わりに患者さんから一部負担金を強制的に徴収してくれるという制度です。ここで注意していただきたいのは、あくまで保険者が医療機関等の代わりに徴収してくれる制度であって、保険者が立替払いをしてくれる制度ではないということ。すなわち、保険者が患者さんから強制的に徴収し、実際に回収された金額が、医療機関等に支払われるのです。

したがって、患者さんに資金力がない場合や、患者さんが他に税金などの滞納をしている場合などは、保険者も回収できないことが考えられます。回収できなければ、当然のことながら医療機関等にも未収金は支払われないということになります。また、保険者が処分をするのは未収金が60万円を超える場合としているようですので、薬局での適用場面は少ないかもしれません。
もっとも、強制的に徴収しない場合でも、保険者から患者さんに対して、一部負担金を支払うように催促の協力をしてくれることもあるようです。本当に困ったときは、「保険者に相談してみる」という方法もひとつの手だと思います。

なお、「善良な管理者の注意義務を尽くした」とするためには、単に患者さんが来局したときに口頭で催促している程度では認められません。実際に患者さん宅に出向いて請求するなど、回収のために他にも手を尽くしていることが必要になります。
また、保険者に対して徴収の依頼をするにあたっては、催促をしていることの記録を求められるので、催促の記録を残しておく必要があります(「一部負担金の徴収猶予及び減免並びに療養取扱機関の一部負担金の取扱いについての一部改正について」平成22年9月13日保発0913第2号厚生労働省保険局長通知参照)。具体的な手続き方法などは各保険者によって異なるようですので、詳しくは各保険者に問い合わせるのがよいでしょう。


赤羽根 秀宜(あかばね ひでのり)

昭和50年生。中外合同法律事務所所属。

薬剤師の勤務経験がある弁護士として、薬局や地域薬剤師会の顧問を務め、調剤過誤・個人情報保護等医療にかかる問題を多く取り扱う。業界誌等での執筆や講演多数。

赤羽根 秀宜(あかばね ひでのり)

昭和50年生。中外合同法律事務所所属。

薬剤師の勤務経験がある弁護士として、薬局や地域薬剤師会の顧問を務め、調剤過誤・個人情報保護等医療にかかる問題を多く取り扱う。業界誌等での執筆や講演多数。

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