国試過去問 国試過去問

薬剤師国家試験は薬剤師なら誰もが必ず通った道。毎年、試験の難易度や合格率が話題になりますが、国試は“現役薬剤師”として基本的な知識を再確認するチャンス。橋村先生の解説で、国家試験の過去問を「おさらい」しましょう!

第5回 熱中症? 感染症? ペットから? 夏場に注意したい病態とは

夏から秋にかけては、家族や友人などとバーベキューやピクニックを楽しむ人が増える季節。屋外での食事やお弁当を持ってのお出かけは、気持ちがいいものですよね。そんな夏場に注意したい病態、それは「カンピロバクター」です。カンピロバクターは食中毒を発現する病原菌の一つで、生息する場所は一般的に牛、羊、豚、鶏、犬、猫など動物の消化管であり、これらの動物の糞尿によって周辺環境が汚染されます。ただ、十分な加熱(65℃以上で数分程度)を加えることで感染を防ぐことが可能な病原菌でもあるため、これまでは調理時の加熱といった注意だけで済んでいました。しかしペットを飼う家庭が増えた昨今、カンピロバクターを持っているペットを触った後、消毒を十分にしなかったことで感染してしまうケースも増えてきています。

【過去問題】

第101回 問230~231から出題

少年スポーツクラブの懇親会のバーベキューで、大人3名、子供10名が鶏肉を焼いて食べた。その3日後に、この懇親会に参加した者のうち、子供4名が発熱及び下痢を伴う腹痛を発症した。患児の全員が近医を受診し、点滴静注などの治療を受けた。その後、この食中毒の原因はカンピロバクターと同定された。

問230(実務)

カンピロバクターによる食中毒に罹患した患児の保護者に対する、薬剤師による衛生管理を含めた指導及び助言として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  • 1 下痢が続いている間は、糖分や電解質を含むスポーツ飲料の摂取は控える。
  • 2 下痢が続いても、下痢止めは使用しない。
  • 3 鶏肉の内部は汚染されていないので表面を軽くあぶってから、子供に食べさせる。
  • 4 鶏肉を取扱った手を洗ってから、他の食品を取扱う。
  • 5 鶏肉を生食する際には一度冷凍し、カンピロバクターを死滅させる。

問231(衛生)

カンピロバクターによる食中毒に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

  • 1 カンピロバクターは鳥類等の腸管に常在し、鶏肉を汚染しやすい。
  • 2 野生生物により汚染された環境水を飲むことにより発症することがある。
  • 3 牛レバーの生食により発症することがある。
  • 4 カンピロバクターは乾燥に弱いため、殻の表面が乾燥している鶏卵の生食による発症のリスクは低い。
  • 5 再興感染症の1つに位置づけられている。
<解答>
問230:2、4
問231:5

解説

問230
カンピロバクターは牛、豚、羊、鶏、犬、猫、鳩などの消化管に生息しています。この中でも特に鶏肉には高い確率で感染しているため、鶏肉を調理した際には部位に関係なく手洗いや調理器具などの消毒が必要です。また、野菜類と一緒に調理する際は、最後に扱うようにしましょう。もしカンピロバクターのような菌類やウイルスによる感染症と診断された場合は、治療時の下痢止めの使用は避けるよう指導します。そして、まずは十分な体液補充を行いながら、可能な限り排泄するようにすすめましょう。

参考:厚生労働省ホームページ

問231
再興感染症の定義とは、「その感染性病原微生物は既に知られていて、それによる疾病の発生数は減少し、公衆衛生上ほとんど問題とならない感染症と認識されていたが、近年再び増加してきたもの、あるいは将来的に問題となる可能性がある感染症」とされています。たとえば、マラリア、ペスト、結核、サルモネラ感染症、コレラ、狂犬病などがこれにあたります。

参考:国際保健用語集

– 実務での活かし方 –

カンピロバクター食中毒の主な症状には下痢、腹痛、発熱があげられ、他にも頭痛やめまいなどが発現します。
通常夏の暑い時期にこの症状に遭遇したら……それはまさに熱中症!と思ってしまうかもしれません。

この両者は、原因や治療の目的は異なるものの、症状だけではなく初期治療の対処法も似通っています。食中毒であれば原因菌の排泄促進と下痢による体液バランス維持、熱中症であれば体液バランス維持のための対応が必要です。しかし、水分補給で対処する点では同じですし、抗生物質もカンピロバクター属に効能のあるマクロライド系の抗生物質が処方されていれば、カンピロバクターによる感染だったのか熱中症だったのか不明のまま治癒してしまいます。

カンピロバクター食中毒が問題となるのは、不適切な抗生剤使用や自主的な経過観察によって治療が遅延した際に、「結腸炎」が発現してしまった場合。結腸炎になった場合、1000人に1人の確率で筋力が大きく低下したり、麻痺や呼吸困難が生じる「ギラン・バレー症候群」発現の可能性が出てくるなど、治療と身体的負担が増加します。

本来カンピロバクターが人から人へ感染することは稀です。しかし、感染しているペットとのスキンシップによって感染、発症する可能性は十分にあります。熱中症の疑いがある患者への問診で、バーベキューでの生焼けの肉類の摂取の可能性や、ペットを飼っていて継続的に同症状を繰り返す患者には注意が必要です。

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会生涯学習部会所属。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。
ICLSアシスタントインストラクター。

ファーマブレーングループ オフィス・マントル:
http://mantle-1995.com

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会生涯学習部会所属。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。
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