国試過去問 国試過去問

薬剤師国家試験は薬剤師なら誰もが必ず通った道。毎年、試験の難易度や合格率が話題になりますが、国試は“現役薬剤師”として基本的な知識を再確認するチャンス。橋村先生の解説で、国家試験の過去問を「おさらい」しましょう!

第6回 同種同効薬の薬剤変更にも十分な注意を!

今回の過去問は日常業務内ではもちろん、災害時の限られた状況下での薬剤の変更に関する問題です。過去問では非常に簡易な状況へ変更されていますが、薬効が似ている薬剤への変更時にこそ注意が必要です。では早速みていきましょう。

【過去問題】

第97回 問248~249から出題

67歳男性。災害時、救護所に本人のお薬手帳を持参し、医師に処方を求めた。お薬手帳を確認したところ、エナラプリルマレイン酸塩錠を服用していたことが判明した。救護所にはエナラプリルマレイン酸塩錠が置いていなかった。

問248(実務)

エナラプリルマレイン酸塩錠の代替薬として、以下の在庫品目のうち、薬剤師が医師に提案する最も適切な薬剤はどれか。1つ選べ。

  • 1 トラネキサム酸カプセル
  • 2 バルサルタン錠
  • 3 デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物錠
  • 4 ニトログリセリン舌下錠
  • 5 セフジニルカプセル

問249(薬理)

エナラプリルの薬理作用の機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。

  • 1 アンギオテンシン変換酵素を阻害して、アンギオテンシンⅡの生成を抑制する。
  • 2 アンギオテンシンⅡ受容体を遮断して、アンギオテンシンⅡによる血管収縮を抑制する。
  • 3 キニナーゼⅡを阻害して、ブラジキニン量を増加させる。
  • 4 一酸化窒素合成酵素を阻害して、一酸化窒素の生成を抑制する。
  • 5 ホスホリパーゼA2 を阻害して、プロスタグランジンの生成を抑制する。
<解答>
問248:2
問249:1、3

解説

問248問249
今回は問248と問249を通して解説します。
まず、問題のエナラプリルマレイン酸塩錠はアンジギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)です。血圧上昇に関わる物質の一つにアンギオテンシンⅡがあります。エナラプリルマレイン酸塩錠は、アンギオテンシンⅠからアンギオテンシンⅡに変換する際の変換酵素・アンギオテンシン変換酵素の働きを阻害することで、降圧作用が期待されます。

選択肢の中でこれと同様の効果が期待できるのは、アンギオテンシンⅡの受容体を阻害するアンギオテンシンⅡ受容体阻害薬(ARB)であるバルサルタン錠となります。ブラジキニンとは気道を刺激する体内物質。ACE阻害薬を使うことでブラジキニンが増加しすぎた場合、代表的な副作用である空咳を誘発します。
ただ最近では、ブラジキニン誘発の空咳を利用した誤嚥性肺炎予防のため、ACE阻害薬を使用している患者さんもいます。服用している理由についてはよく注意しておきましょう。

– 実務での活かし方 –

今回の問題のような特別な状況でなくても、日常業務ではACE阻害薬からARBへの変更は経験されている方が多いと思います。ARB製剤は安全性も高く、非常に多くの方に服用されていますが、代謝経路がすべて同じではないため注意が必要です。特に注意すべき薬剤は「テルミサルタン」。テルミサルタンは他のARB製剤と比べて代謝経路が異なるだけではなく、薬物動態としても重要な特徴があります。以下で2つ紹介しますので、参考にしてください。

1. 排泄経路が肝臓
腎排泄型の薬剤が多くある中で、テルミサルタンはほぼ100%肝臓から胆汁と一緒に排泄される薬剤。つまり、腎機能が低下している患者にも比較的安全に使用できる薬剤ですが、肝機能が低下している患者の場合には注意が必要です。

2. 薬物動態が非線形
非線形薬物とは、投与量と血中濃度が比例しない薬物のこと。分類としては血中濃度急速上昇型と血中濃度頭打ち型の2種類があり、テルミサルタンは血中濃度急速上昇型に分類されます。このタイプの薬剤は薬物代謝酵素の代謝能力が、一定量以上の薬剤投与で飽和状態となります。それ以上代謝できなくなると、追加された薬剤の未変化体濃度は急上昇します。

事例

・排泄経路が肝臓であるということは…
併用薬にB型やC型肝炎の治療薬がある場合には、肝機能に異常があることを確認しやすいと思います。しかし、ウルソデオキシコール酸や肝臓加水分解物、グルタチオンなど、慢性肝疾患の治療薬を併用している場合は肝機能が低下している可能性を見落としがちになります。注意しましょう。

・非線形性薬物であるということは…
臨床に使用されている薬剤として、非線形性薬物は決して多くはありません。しかしテルミサルタンは、非線形薬物のなかでも製剤品目数が多い薬剤。たとえば、テルミサルタンの種類も20mg・40 mg・80mgとあり、さらに利尿剤やCa拮抗剤との合剤などもあります。そのため増量された場合には効果だけではなく、他の降圧剤に比べて副作用発現の可能性が高まることにも注意が必要です。

テルミサルタンの薬効分類は毒薬や劇薬ではなく普通薬です。高血圧の治療薬でもあることから、他の非線形性薬剤(抗がん剤、抗不整脈、抗てんかん薬など)に比べると注意のハードルが下がりがちになります。作用機序の似ているACE阻害薬、ARB製剤からの変更や増量が行われた際には、患者の健康状態(腎機能や肝機能など)と、変更する薬剤の代謝経路や薬物動態まで確認しておきましょう。

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会生涯学習部会所属。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。
ICLSアシスタントインストラクター。

ファーマブレーングループ オフィス・マントル:
http://mantle-1995.com

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会生涯学習部会所属。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。
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