薬剤師のスキルアップ 公開日:2021.07.21 薬剤師のスキルアップ

薬剤師が疑義照会をする上で知っておきたいポイントは?疑義照会の事例も紹介 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

疑義照会とは、薬剤師法24条によって義務付けられている薬剤師の重要な業務の1つです。「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」(薬剤師法第24条)と定められています。今回は、薬剤師が疑義照会をする上で知っておきたいポイントと注意点をお伝えするとともに、疑義照会により処方が変更になった事例と対処法を紹介します。

1. 疑義照会とは?

疑義照会とは、処方せんの内容に不明点や疑問点がある場合、処方せんを発行した医師に問い合わせる業務を指します。疑義照会を行うことは、患者さんの安心安全を確保できるだけではなく、医療費節減の効果も期待できます。まずは、疑義照会の種類と医療費節減効果について見てみましょう。

 

1-1. 疑義照会の種類

疑義照会には、形式的疑義照会と薬学的疑義照会の2種類があります。疑義照会を適切に行うためには、まず基本となる形式的疑義照会から学び、徐々に薬学的疑義照会の知識を深めると良いでしょう。ここでは、それぞれの違いについて詳しく解説します。

 

1-2. 形式的疑義照会

形式的疑義照会とは、処方せんの記載内容に不備がある場合に行う疑義照会のことです。薬の規格や用法用量の記載漏れがあったり、医師の押印がなかったりした場合などが形式的疑義照会にあたります。特に医師の押印確認は、偽造処方せんによる薬剤交付を防ぐために必ず確認しなければならない重要な項目です。偽造処方せんのなかには、カラーコピーされたものもあるため、紙質がいつもと異なるといった違和感を察知した場合も、万が一を考えて形式的疑義照会が必要でしょう。

 

1-3. 薬学的疑義照会

薬学的疑義照会は、薬学的観点から用法・用量、相互作用、副作用の可能性などをチェックし、疑問点があれば処方医に確認を行うことです。特に、処方された薬剤に対して慎重投与にあたる疾患を患っていたり、併用禁忌の薬剤となったりする場合には、患者さんの安全を確保するためにも必ず疑義照会をしなければなりません。処方内容によっては患者さんの命に関わることもあるので、薬学的疑義照会は注意深く確認する必要があります。

 
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1-4. 薬剤師の薬学的疑義照会による医療費節減効果

公益社団法人日本薬剤師会委託事業が行った「平成27年度全国薬局 疑義照会調査報告書」によると、年間推定薬剤費節減額が平成25年度調査では約82.3億円。27年度調査では約102.8億円で、年間推定薬剤費節減額は増加傾向にあります。

 

全国の薬局薬剤師が行う薬学的疑義照会により、重篤な副作用回避による潜在的な医療費の節減額は年間約133億円と算出されていることから、合わせて年間約236億円の医療費節減効果があるとされています。薬局薬剤師が行う疑義照会は、薬物の適正使用や偽造処方せんによる薬剤交付の防止、薬剤による副作用の回避だけでなく、医療費節減への貢献が期待できます。

 

2. 薬剤師が疑義照会を行う上でのポイント

疑義照会は知識だけでなく、経験や医師とのコミュニケ―ションスキルも求められます。ここでは、薬剤師が疑義照会を行ううえでの知っておきたいポイントを見ていきましょう。

 

2-1. 知識だけでなく経験も必要

形式的疑義照会は、処方せんが正しく成り立っているかを確認する作業です。処方せんに必要な記載内容をきちんと暗記して1つずつ確認するので、特別なスキルは必要ありません。

 

一方、薬学的疑義照会は薬剤師としての経験と豊富な知識が求められます。例えば、小児に処方された薬の用量は、体重換算なのかVon Harnack の換算表やAugsberger式で計算されたものかによって用量が変わることがあります小児薬物療法テキストブックより)。また、症状に合わせて適宜増減が可能な薬剤は、体重や年齢に比べて多かったり少なかったりすることもあるでしょう。医師の治療方針や適応外処方などで用量用法が変わることがあるため、薬学的疑義照会は知識や経験が求められる業務です。

 

2-2. すべて疑義を行うわけではない

新人薬剤師は特に、全ての項目について疑義照会を行う必要があると考えてしまうこともあるでしょう。しかし、薬局によっては、あらかじめ病院と疑義照会が不要な項目について取り決められていることもあります。また、事前に医師から患者さんへ適応外での使用を説明しているケースもあり、内容に応じて疑義照会するべきかどうかを判断する必要があります。

 
 

2-3. 医師との信頼関係を築くことも大切

疑義照会は医師のミスや漏れを指摘する業務ともいえます。そのため、伝え方や言葉遣いはもちろん、医師との信頼関係が築けていることもスムーズな疑義照会を行うためのポイントです。

 

医師と信頼関係を築くためには、日頃から医師の考え方や価値観を知るために合同で勉強会を行うといったコミュニケーションの場を設けることも大切でしょう。疑義照会が必要な処方であっても、考えがあっての処方なのか、抜けやミスなのかを判断しやすくなるかもしれません。特に、最新情報が更新されやすい領域では、医師の治療方針も変わりやすいですので、医師とのコミュニケーションの積み重ねが重要です。

 

3. 薬剤師が疑義照会を行う時の注意点

実際に疑義照会を行うためには事前準備に加え、医師や患者さんへの配慮が欠かせません。ここでは、薬剤師が疑義照会を行う際の注意点についてお伝えします。

 

3-1. 要点をまとめて伝える

医師は、他の患者さんの診察をしながら疑義照会に対応することもあるので、なるべく手短に要件をまとめて簡潔に伝えることが大切です。電話をかけてから疑義内容の伝え方を考えているのでは遅すぎます。疑義照会に慣れていない場合は、考えをまとめてから伝えたり、メモを使って要点をまとめたりすることで、スムーズに疑義照会が行えます。

3-2. 代替案を準備

疑義照会では医師が迅速に答えられるように準備することが大切です。例えば、小児用量についての疑義照会では投与可能な用量を提示したり、併用禁忌についての問い合わせであれば代替薬を提案したりして、できるだけYesかNoで答えられるように提案すると良いでしょう。外来患者や入院患者の診療に追われている医師も多いので、代替案の準備を怠らないことがスムーズに疑義照会をするためのポイントです。

 

3-3. 医師への伝え方に配慮する

疑義照会の際、医師のミスをあからさまに指摘してしまうと、トラブルに発展する可能性があります。疑義照会において、医師への伝え方は十分に配慮する必要があるでしょう。「この処方は間違っている」といった伝え方は避け、「通常、食前に服用するお薬が食後で処方されていますが、このままお渡ししてもよろしいですか?」と指摘ではなく確認をすることで、トラブルなく疑義照会を行うことができます。

 

 

3-4. 患者さんへの配慮も大切

疑義照会を行う場合、医師への配慮に加え、患者さんへの配慮も欠かせません。疑義照会は電話やファクシミリを使って行うことがほとんどのため、ある程度の時間がかかってしまうものです。疑義照会を行う前に患者さんに疑義内容を説明し、医師から説明があったかどうかを確認しましょう。そのうえで、電話やファクスを使った問い合わせを行うため回答に時間がかかる場合があることを伝えます。この時に、「30分ほど時間がかかる」など待ち時間の目安を伝えると、患者さんは薬局で待つのか後日来局するのかなど選択ができます。

 

4. 薬剤師が行う疑義照会後に必要な記録事項

疑義照会が終わった後は、処方せんの備考欄または処方欄の以下余白部分と調剤録に疑義内容を記入することが義務付けられています。ただし、処方せんの裏に調剤録を印字する場合はどちらか一方で良いとされています。

 

管理薬剤師.comによると、疑義照会後に必要な記録事項は以下のとおりとされています。

 

・日時(○月○日○時○分)

・医療機関側の回答者の名前(応対した人の名前)(○○病院のDr○○)

・照会の方法(telにて)

・照会内容

・回答内容

・照会した薬剤師の名前(フルネーム印鑑)

 

疑義照会を行った後は、処方せんや調剤録への必要事項の記載を忘れないようにしましょう。

5. 実際に薬剤師が行った疑義照会の事例と対処法

公益財団法人日本医療機能評価機構では保険薬局からのヒヤリ・ハット事例を収集・分析し、医療安全対策に有用な情報を「共有すべき事例」として公表しています。ここでは、公益財団法人日本医療機能評価機構で紹介されている「薬剤師から積極的な薬学的疑義照会を行ったことで処方内容が変更された事例」とともに、対処時の注意点についてお伝えします。

 

事例1)処方医が患者さんの既往歴を知らなかったケース

心療内科から統合失調症の治療に用いるオランザピンを服用中の患者さんが、糖尿病を患ったため内科から糖尿病治療薬であるトラゼンタを処方された事例です(薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2018年No.5 事例2より)。

 

オランザピンには血糖上昇の副作用があるため、糖尿病の患者さんには禁忌です。薬剤師はオランザピンを処方した担当医に疑義照会を行い、オランザピンからリスペリドンへ処方変更されています。

 

患者さんがお薬手帳を医師に提示しなかったり、服用中の薬がお薬手帳に記載されていなかったりすると、患者さん自身から申告がない限り、処方医は既往歴を知る機会がありません。こういったケースでは、併用禁忌の薬剤が処方される可能性が高まるため、薬剤師はお薬手帳の確認に加え、口頭での併用薬の確認が必要です。

 

事例2)処方医が患者さんのコンプライアンスを把握していなかったケース

高血圧症などの治療薬であるアムロジピンの処方量が、倍量に増量された事例です(薬局ヒヤリ・ハット事例収取・分析事業 2018年No.4 事例2より)。

 

薬剤師が服薬指導時に、服用状況や増量の経緯を確認したところ、今までアムロジピンを処方通りに服用していなかったことが判明しました。薬剤師がそのことを処方医に報告したところ、今回は増量せずに「処方薬は飲み忘れることなく毎日服用するように」と指示されています。

 

患者さんのなかには、指示通りに服用できてないことを処方医に伝えられない人もいます。処方医に比べると薬剤師は身近な存在になりやすく、医師には伝えにくいことも薬剤師には打ち明けてくれる患者さんは少なくありません。薬剤師は、患者さんにとってどんなことでも打ち明けられる存在になることで、安心安全な医療を提供できます。

6. 薬剤師が疑義照会する意義は大きい

患者さんへ適切な医療を提供するためにも、薬剤師が疑義照会を行う意義は大きいものです。処方せんの記載の疑わしい点に気が付くには、医薬品や医療に関する知識を蓄積しさまざまな経験を積むことに加え、多くの事例に触れることが大切です。薬剤師として知識や経験を積み重ねることで、薬物治療において患者さんの安心と安全を確保することにつながります。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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