買収で振り返る今年の製薬業界[3]~ファイザーが新薬強化へ転換
ファイザーは、特許切れ医薬品とOTC医薬品を自社から分離し、癌に強い製薬企業を買収した。6月に低分子抗癌剤に強い米アレイ・バイオファーマを114億ドル(約1兆2210億円)で買収すると発表。一方でOTC医薬品、特許切れ医薬品事業は業界トップ企業と手を組み、合弁会社を設立した。売上トップ企業として規模追求型の大型買収を繰り返してきた同社だが、多角化経営を捨て、戦略的に優先度が高い新薬に集中するための買収となった。
アレイの買収は、低分子抗癌剤を獲得し、癌領域の製品ポートフォリオを拡充させる狙いがある。BRAF阻害剤「ビラフトビ」(一般名:エンコラフェニブ)と「メクトビ」(一般名:ビニメチニブ)は、BRAF変異の悪性黒色腫適応でグローバルで承認を取得している。
癌領域では、2016年8月に米メディベーションを約140億ドルで買収し、売上3000億円超に成長した前立腺癌治療薬「エンザルタミド」を獲得。癌領域では後発となる同社だが、18年売上高は前期比19%増の72億ドルと拡大が続いている。
新薬事業を強化する一方、事業構造改革も進めている。8月に米後発品大手「マイラン」と特許切れ医薬品の統合新会社を設立すると発表し、来年半ばの手続き完了を予定。新会社の売上は来年に約200億ドル(約2兆1700億円)となる見込みで、特許切れ医薬品市場ではイスラエルのテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズを抜き、世界最大手に浮上する。
同社は医療用医薬品事業について、新薬と特許切れ医薬品の両輪で展開。15年には病院市場の注射剤やバイオ後続品に強いホスピーラを約170億ドル(約2兆円)で買収するなど、特許切れ医薬品市場でのシェア拡大を図ってきた。
しかし、個別化医療へと進む新薬事業とローコストオペレーションが優先される特許切れ医薬品では乖離が大きくなっており、医療用医薬品事業の中で同列に扱えなくなっている。戦略的優先度の高い新薬事業に集中するため、特許切れ医薬品に特化したビジネスモデルが必要と判断。後発品大手であるマイランと合弁会社を設立した。
マイランとの契約により、来年の売上収益は400億ドルまで低下する見通し。OTC医薬品では、昨年12月に英グラクソ・スミスクライン(GSK)と合弁会社を設立し、新薬以外の事業分離を進めている。
過去には、00年に米ワーナー・ランバート、03年に米ファルマシア、主力製品の高脂血症治療剤「リピトール」の特許切れを控えた11年には、ワクチンとバイオ医薬品に強いワイスを買収し、規模を追求する大型買収を繰り返してきた。14年4月には英アストラゼネカに約12兆円で買収提案を行い、15年11月にはアイルランド・アラガンの買収に約20兆円で合意するも実現しなかった。
それ以降、1兆円を超える大型買収は、癌領域に強いメディベーションとアレイの2社に限られる。ファイザーは事業の多角化から新薬に集中し、事業ポートフォリオの再構築を図っている。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
数々の大型買収が実現し、改めて薬剤業界の再編を思い知らされた2019年の振り返り企画第3弾はファイザー株式会社(本社・東京都渋谷区)編です。6月に低分子抗癌剤に強い米アレイ・バイオファーマを114億ドル(約1兆2210億円)で買収することを発表。一方、8月には米後発品大手・マイランと特許切れ医薬品の統合新会社の設立を発表し、2020年半ばの手続き完了とともに特許切れ医薬品市場において世界最大手に浮上します。ファイザーが事業多角化から新薬に集中し、事業ポートフォリオの再構築を図っていることが分かります。