厚労省・紀平薬剤管理官、新薬加算制度「趣旨再考を」~認定薬局は患者貢献を評価
厚生労働省保険局医療課の紀平哲也薬剤管理官は、本紙の取材に対し、次期薬価制度改革に向け、新薬創出等加算制度の考え方について「創出した薬剤に対する加算ではなく、次の開発につなげているかが加算の前提となっている」と強調。個々の医薬品の価値を企業の新薬開発状況を踏まえ加算対象を評価する現行ルールに反対し、企業指標の撤廃を求める製薬業界側に改めて制度趣旨の理解を求めた。一方、改正医薬品医療機器等法で来年8月に施行予定の地域連携薬局、専門医療機関連携薬局の診療報酬上の取り扱いは、「認定を取得したから点数を付けるのではなく、患者への貢献に対して評価するのが望ましい」との考えを示す。
紀平氏は、次期薬価制度改革に向け、イノベーションの評価を検討課題に挙げた。「イノベーションをより評価してほしいという声は認識している。例えば、製剤上の工夫は医療上の有用性が認められれば加算で評価されるようになっている一方、現行の薬価制度では製剤上の工夫などの製品の革新性だけでは評価しづらいところもあるため、もっと改善してほしいという意見はある」と指摘する。
その上で、医薬品が持つ価値だけではなく、保険財政に与える影響とのバランスを考慮し、薬価を検討していく仕組みが重要とした。「薬価は単価で評価しており、販売数量の概念が入っていない」とし、「『良いものだから高く売れる』ということと『良いものだからたくさん売れる』というのは、一般的な商品であれば両立する概念かもしれないが、保険財政上、薬価としては必ずしも両立しないのでバランスが必要」と述べた。高額医薬品に対しても、「患者負担の観点から、患者や保険者に納得感のある制度が必要になる」と話す。
新薬創出等加算の品目要件、企業指標などの見直しについては「現行ルールの評価を行った上で検討したい」との考えを示しつつ、製薬業界には、新薬創出等加算制度が持つ趣旨を改めて理解するよう求めた。
製薬業界は、新薬創出等加算要件の企業指標について、革新的新薬の創出やドラッグラグの解消に対する取り組み状況を判断するための指標では必要性を認めている。ただ、新薬開発の取り組み状況によって個々の医薬品の価値を変化させることは、新薬創出等加算制度の趣旨に合わないとしている。
紀平氏は、業界側の主張に対し、「新薬創出等加算制度の趣旨の捉え方が違う」との見解を示す。「その医薬品の価値が優れているから加算がついているのではなく、できるだけ短い期間に開発費用を回収して、次の開発につなげることが加算の前提になっている」と説明。「薬の価値だけではなく、その後の開発もセットにした新薬創出等加算制度の意味をもう一度考えてほしい」と語る。
改正薬機法で法制化された先駆的医薬品、特定用途医薬品の薬価上の取り扱いについては「既に現行ルールがあるので、見直しが必要であるかを考えたい」とした。
後発品、長期収載品の安定供給に向けた薬価については、医薬品卸と医療機関の価格交渉のあり方に言及。「薬価改定ルールは市場実勢価格に基づくルールになっているので、適正な市場実勢価格で売ってもらうのが前提になる。供給が厳しくなるということであれば適正価格でない可能性もあるため、長期的に供給できるような価格交渉をしてもらいたい」と要望する。
一方、地域連携薬局、専門医療機関連携薬局に対応した調剤報酬のあり方については、「認定を取得した薬局に調剤報酬点数が付くのがいいのかという議論はあり得る。薬局を利用した患者のアウトカムが改善し、地域医療に貢献した結果、点数化される方が患者から見ても望ましい」との考えを示す。
薬局認定制度は来年8月施行を予定されているため、「2022年の次期診療報酬改定なのか、その次の改定時期なのかは検討したい」と述べた。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
次期薬価制度改革に向け、新薬創出等加算制度の考え方について、薬事日報社の取材を受けた厚労省の紀平薬剤管理官は「創出した薬剤に対する加算ではなく、次の開発につなげているかが加算の前提となっている」と強調しました。医薬品が持つ価値だけではなく、保険財政に与える影響とのバランスを考慮し、薬価を検討していく仕組みが重要としています。新薬創出等加算の品目要件、企業指標などの見直しについては「現行ルールの評価を行った上で検討したい」との考えを示しつつ、製薬業界には、新薬創出等加算制度が持つ趣旨を改めて理解するよう求めました。