薬剤師のためのお役立ちコラム 更新日:2024.05.23公開日:2021.10.13 薬剤師のためのお役立ちコラム

薬剤師におすすめの勉強法は?ノート・本・アプリの活用から勉強時間の確保まで

文:岡本妃香里(薬剤師ライター)

「薬剤師として自信をもって働くために、もっと勉強したい」、「忙しい中でどうしたら効率よく勉強できるのか知りたい」と、限られた時間のなかでスキルアップしたいと考える薬剤師は多いのではないでしょうか。今回は、ドラッグストアで4年勤務した経験をもつ筆者が、薬剤師として業務を続けながらスポーツファーマシストや化粧品検定1級、薬事法管理者などの資格を取得した体験をもとに、実践した勉強方法と効率的に学ぶポイントを紹介します。新人薬剤師や若手薬剤師の方の参考になれば幸いです。

1. 薬剤師の勉強方法① 本を活用して独学する

薬剤師の勉強方法として定番といえるのが、本を活用する方法です。一口に本といっても、さまざまなジャンルがあります。多くの薬剤師が勉強に活用しているのは、次のような内容の本が主になると思います。

 

<薬剤師が業務を勉強する際に読む本のジャンル>

・疾患とその治療方法

・服薬指導の仕方やコツ

・漢方薬の考え方や処方

・OTC医薬品の選び方

・最新の治療薬や話題の疾患

・同種同効薬の違い

 

どのジャンルも薬剤師として働いていくうえで、読んでおきたいものばかりですが、たくさんの本を読むにはそれなりに時間がかかります。どうすれば効果的に本を使って勉強を進められるのか、限られた時間を有効活用できるポイントを紹介します。

 

1-1. 最初からではなく気になるところから読んでみる

効率よく勉強したいのなら、本の冒頭からではなく、気になった項目からチェックしていくのがおすすめです。というのも、最初のページから順番に読み進めてもなかなか先に進まず、読むことが苦痛になってしまい、中盤から後半にかけて記載された情報を吸収できない可能性があるからです。

薬剤師向けの本の多くは分厚く、正直なところ「全ページを読むのは時間がかかってしんどい」と思うこともあります。すぐに仕事で使える知識を習得するためにも、最初から読むことにこだわらず「読みたいところ」「気になるところ」「仕事で生かせそうなところ」から読み始めるのがおすすめです。

 

1-2. 気になったところには付箋を貼る

本を読んでいるうちに新しく知ったことやもっと深く知りたいこと、後からもう一度見直したいところには、気が付いたら付箋を貼りましょう。読み返したいと思った時に、「あれは、どこに書いてあったっけ?」とページをめくって探すのはもったいない。

 

いくら探しても見つからなければ、諦めて本棚に戻してしまうことになるかもしれません。これでは知識の復習をする機会を失ってしまいます。瞬時に欲しい情報にアクセスできるように、読みながら付箋を貼っておくと効率的です。

 

1-3. 何度も確認したいページはスマホでスキャンしておくと便利

「通勤時間に本を読みたいけれど、持ち歩くのは重くて大変」と悩んでいる人は、読みたいページをスマホでスキャンして持ち歩いてみてはいかがでしょうか。スキャンといっても、専用のアプリを使って写真を撮るだけなので簡単です。

 

読みたいページだけを保存しておけるので、バッグの中身を圧迫することがありません。スキャンの手間を省きたいのであれば、電子書籍を活用するのもよいでしょう。電子化された情報を活用することで、勉強しやすい環境を作れます。

2. 薬剤師の勉強方法② アプリを使う

勉強用のアプリを活用すれば、場所を選ばずスマホひとつでいつでも学習環境が整います。手軽に勉強できるのはもちろん、気になったところをスクリーンショットすれば、ささっと見直しができます。

 

2-1. 添付文書をアプリで確認

薬の知識を高める基礎となるのは、やはり添付文書。用法用量や禁忌などを覚えるだけでなく、一般名と商品名を一致させるのにも役立ちます。

 

添付文書を見たいときにもアプリが便利です。インターネット検索でも確認できますが、スマホの画面は小さく、細かい文字をチェックするには不向きです。その点、アプリなら、スマホに適したサイズで表示されるので、ストレスなく全体を読み取れます。お気に入り登録機能や検索機能が充実したアプリなら、さらに使い勝手が良くなります。

 

2-2. 疾患と治療について学べる「MSDマニュアル家庭版」

薬の知識と治療方法をリンクさせるためには、症状や原因など疾患についても詳しく知っておかなければいけません。インターネット検索で情報を得ることも可能ですが、なかには信頼できない情報もあります。その点、「MSDマニュアル家庭版」アプリがあれば、正しい情報を適切に学べるため便利です。

「MSDマニュアル家庭版」アプリでは、さまざまな疾患の原因や症状の情報はもちろん、医療に関する最新ニュースやコラムなども配信されています。疾患や薬に関する動画もあるため、臨床の勉強にぴったりです。

3. 薬剤師の勉強方法③ 薬剤師向けの勉強会に参加する

薬剤師にとって、勉強会は学びを深められる貴重な機会です。最前線で活動する薬剤師の話や、常に薬と向き合っている製薬企業の話などを聞けるため、知識アップデートできます。勉強会は調剤薬局や病院で開催されるものと、自分で申し込んで参加するものがあるので、興味があるものに参加してみましょう。

 

3-1. 薬局や病院で開かれる勉強会に参加する

もっとも気兼ねなく参加できるのは、薬局や病院で開かれる勉強会です。顔見知りが多いので「新人の自分なんかが参加しても大丈夫なのだろうか?」と不安に思う必要がありません。主に製薬企業が開催する勉強会で、その多くは踏み込みすぎずわかりやすい内容となっています。そのため、勉強会デビューにはちょうどよいでしょう。

「どういう理由でこの薬を開発したのか」「どういう作用機序ではたらくのか」「今までの薬と何が違うのか」などをわかりやすく説明してくれるので、薬に関する知識がぐっと深まります。

 

3-2. 自分で勉強会を探して参加する

自分が興味のある分野を中心に学びたいなら、日本薬剤師研修センターのホームページに記載されている勉強会をチェックしてみるのがおすすめです。

 

勉強会の内容はさまざまで、一般的なガイドラインに即した治療方法を学べるものから、排卵検査薬や医療機器の使い方、海外の医療情報が提供される会など多岐にわたります。勉強会は頻繁に開催されているので、自分に合ったものを選んでみましょう。

4. 薬剤師の勉強方法④ 研修認定薬剤師の資格取得に向けて勉強する

研修認定薬剤師は、薬剤師としての基本知識を習得するうえで役立つ資格です。国家試験レベルの基礎的な内容を学ぶことで取得できる資格であり、「そろそろ大学で学んだことを少し忘れてきて不安」といった人がおさらいの機会としても活用できます。資格取得条件に所属学会や経験年数の規定がないため、チャレンジしやすい資格です。

 

資格の取得に必要な単位は、オンラインのeラーニング講座や集合研修などを受講することで取得できます。「薬剤師の資格を取ってからも勉強を続けています!」というアピールにもなるため、資格を取っておいて損はないでしょう。


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5. 薬剤師の勉強方法⑤ 学んだ内容はノートにまとめておく

インプットした内容は、都度アウトプットできるようにしておくことが大切です。そのためには、学んだことをメモやノートとして記録する習慣を身につけましょう。

 

自分の手を使って書くことで記憶に定着しやすくなるほか、「前に勉強したアレなんだっけ?」と振り返った時にすぐ見返せます。ノートを上手に活用するために、次の3つのポイントを押さえておきましょう。

 

5-1. 簡単にメモを残しておく

書くことは大切だとわかっていても、「いちいちキレイにノートを書いていられない」という人もいるかもしれません。そんなときは、新しく覚えたことや気になったことを走り書き程度でよいのでメモをしておきましょう。

メモをとる際に活用したいのが、色分けによる分類です。知ってはいたけど忘れかけていたことは黒、新しく覚えたことは赤、もう一度見直して深掘りしたいことは青など、簡単に色分けしておくと、メモを見直したときにひと目で区別できますよ。

 

5-2. ルーズリーフを活用しよう

薬や疾患の情報は、日々めまぐるしく新しくなっていきます。次々と入ってくる情報をもれなく、かつ見やすくまとめるためにはルーズリーフの活用がベターです。通常のノートにまとめる場合、同じ項目に追加したいことがあっても紙面に余裕がないかもしれません。しかし、ルーズリーフなら、簡単に追加でき「書きたいことがあるのにもう書けない」という事態を避けられます。

 

また、ノートに収められた情報が過度になり、必要なときに見直せない状態になると、使いづらいノートになってしまって勉強する気力がなくなる場合があります。覚えたところはファイルからはずして捨てることもできるため、常に見やすいノートを保てます。

 

5-3. ノートアプリでサクッとまとめる

アプリやWebサイトで学んだことは、スマホ上のノートアプリにまとめておく方法もあります。スクリーンショットをそのまま貼り付けておけるので、手書きの手間がありません。
手書きノートとは違って写真も簡単に入れられるので、手書きでは時間がかかる臓器の図や構造式などもメモに残しやすくなるでしょう。ノートを誰かと共有できるアプリもあるので、みんなで学んだことをシェアしてみるのもおもしろいですね。


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6. 忙しくても勉強時間を確保する方法

本やアプリを活用することで、スキマ時間でも効率的に勉強できます。自分に合う勉強方法を見つけたら、勉強する時間をどうやって確保するかも考えてみましょう。

 

6-1. 通勤時間の電車の中で勉強する

通勤時間は勉強する絶好のチャンスです。短時間であっても、スマホに取り込んだ資料やアプリを見るだけで、復習したり、新しい知識を得たりできるでしょう。勉強したことをまとめたノートを持参してチェックするのもおすすめです。帰宅中の車内では、その日の仕事で気になったことや、わからなかったことを調べる時間にあてるのもいいですね。

 

6-2. 寝る前に30分だけと決めて勉強する

寝る前に30分だけと決めて勉強する習慣をつけると、それだけで月に15時間も勉強に時間を割けます。「今月は15時間を目標に勉強しよう」と思うと難しく感じますが、毎日少しずつ勉強するだけで、知識の積み重ねにつながります。30分あれば十分にその日の見直しやまとめなどができます。スキマ時間の勉強に集中できない人や、日中には勉強時間が確保できない人におすすめです。


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6-3. 週末にまとめて時間を作って勉強する

「車通勤だから通勤時間では勉強できない」、「毎日少しずつ勉強しようと思っても続かない」といった人は、週に1度「今日は勉強するぞ」という日を作ってみてはいかがでしょうか。勉強する日だとしても、1日中、続ける必要はありません。数時間、数十分だけでもOK。「休みの日はついついだらけてしまう」という方は、コワーキングスペースやカフェ、図書館を利用するのもおすすめ。気分転換にもなって勉強に着手しやすくなるでしょう。

7. 知りたいところから学ぶのが吉!スマホを使えば効率化も

薬剤師の勉強方法としては、本やアプリを使ったり勉強会に参加したりする方法がメインでしょう。仕事をしながら毎日のように何時間も勉強するのは体力的に難しいので、うまくスキマ時間を使って勉強していきたいですね。自分の気になっていることから学んだり、自分の勉強しやすい環境を探してみたり、色々と試す中で自分に合った勉強スタイルを見つけて実践してみてはいかがでしょうか。


執筆/岡本妃香里(おかもと・ひかり)

薬剤師ライター。薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアでOTCメインの薬剤師として4年間勤務。その後ライター業に転身し、正しい医療知識や医薬品の使い方、選び方などを広めるため執筆を続けている。自身が薬剤師としての働き方に悩んだ経験から、資格にとらわれない働き方も発信。スポーツファーマシストや化粧品検定1級、漢字検定準1級や薬事法管理者などの資格も取得し、伸び伸びと幅広く活動をしている。