アビガンの承認取消要望~安全性・有効性を疑問視
薬害オンブズパースン会議は4日、富士フイルム富山化学の抗インフルエンザ薬「アビガン錠」について、承認取り消しと国による備蓄中止を厚生労働省に求める要望書を公表した。承認の経緯、新型コロナウイルス患者に対する安全性・有効性を疑問視したもので、コロナ治療薬としての承認を目指した動きを総括した上で、国民に説明するよう求めている。
要望書では、同剤について他の抗インフルエンザ薬に対する非劣性が示されなかったにも関わらず、新興・再興インフルエンザウイルス感染症に対する備蓄薬として承認されたと指摘。
その上で、同社が実施していたコロナ患者に対する国内第III相試験の被験者組み入れが3月末に終了したことを踏まえ、「コロナに対する有効性を示せないまま終了した」として、抗インフルエンザ薬としての承認取り消しと備蓄中止を求めた。
コロナ患者に対する同剤の安全性と有効性を確認する観察研究を藤田医科大学が進めていたが、同大学が昨年4月に公表した中間報告を引用し、軽症患者や60歳以上患者の致死率が国内患者が登録されたレジストリデータと比べて極めて高いとした。
また、催奇形性等のリスクがあるにも関わらず妊婦に投与されていたこと、投与対象外である自宅療養者に使用されたなど、管理体制も問題視した。
有効性に関しては、国内のランダム化プラセボ対照単盲検比較試験の結果、有効性を明確に判断するのは困難として、薬事・食品衛生審議会で継続審議となったことなどを指摘した。
これらを踏まえ、同会議は「観察研究という枠組みで使用したことの非科学性、非倫理性は重大」と非難し、「企業や藤田医科大任せにせず、再発防止のための総括報告書を作成して国民に説明すべき」と訴えた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
4月4日、薬害オンブズパースン会議が富士フイルム富山化学の抗インフルエンザ薬「アビガン錠」について承認取り消しと、国による備蓄中止を厚生労働省に求める要望書を公表。承認経緯、新型コロナウイルス患者に対する安全性・有効性を疑問視したものです。要望書では、同剤について他の抗インフルエンザ薬に対する非劣性が示されなかったにも関わらず、新興・再興インフルエンザウイルス感染症に対する備蓄薬として承認されたと指摘されています。