医療

濱口センター長、次世代型ワクチンに意欲~1回の接種で長期効果

薬+読 編集部からのコメント

AMED(日本医療研究開発機構)のワクチン開発司令塔組織「SCARDA(スカーダ=先進的研究開発戦略センター)の濱口道成センター長がWeb医事新報の取材に応じ、「当面は新型コロナウイルス感染症をターゲットに、mRNAワクチンを国内で開発・製造する体制を作ることが目標」との抱負を語っています。3月に開設されたスカーダでは、政府指定の重点感染症を対象に、パンデミックなど有事の際に安全性と有効性が確保されたワクチンを迅速に国内外に供給することを目標としています。

途上国への供給も視野

日本医療研究開発機構(AMED)のワクチン開発司令塔組織「先進的研究開発戦略センター」(SCARDA:スカーダ)の濱口道成センター長(写真)は、本紙のインタビューに応じ、「当面は新型コロナウイルス感染症をターゲットに、mRNAワクチンを国内で開発・製造する体制を作ることが目標」との抱負を語った。「低コストで製造可能」「室温保管に対応」「様々な変異ウイルスをカバー」「1回の接種で長く効果が持続できる」などの特徴を持つ次世代型mRNAワクチンの開発を後押しし、アジアやアフリカなど開発途上国への供給も目指す。

3月に開設したスカーダは、政府が指定する重点感染症を対象に、パンデミックなど有事の際に安全性と有効性が確保されたワクチンを迅速に国内外に供給することを目標としている。平時から感染症ワクチンの開発やワクチン開発に資する新規モダリティの研究開発に関して、研究費の配分を通じて支援する。

 

次のパンデミックを見据えた新型コロナウイルスワクチン開発の公募を常時行っており、1回目の開発戦略策定は6~7月を予定している。濱口氏は「日本政府はお金を投資して海外製ワクチンの輸入や国内でのワクチン開発を行い、国民の皆さんにワクチンを届けてコロナの感染を抑える初期対応を行ってきたが、今は慢性的なフェーズに入ってきた」と話す。

 

実用化されているmRNAワクチンは、「これまでのワクチンよりも開発や製造にかかる時間が短く、緊急危機対応としてこんなに素晴らしいワクチンはない」と評価する一方、「ウイルスに変異が起きてくるとワクチンの効果が持続しないことが分かってきている。オミクロン株に対しては接種後半年間で10%の人しか効いていない」と課題を指摘する。

 

スカーダは、既存製品の弱点を克服した日本発の次世代型mRNAワクチン開発・製造を後押しする方針。国内でも第一三共など製薬企業の一部がmRNAワクチンの開発を進めているが、濱口氏は「われわれがフォローしてワクチンの製造体制を実装化させていきたい」と話す。

 

また、「現在4カ月の接種間隔を1年、3年、5年と長期にわたって効果を持続できるようにすることも大切」と述べ、様々なウイルス変異が起こった場合でも予防効果を示し、1度の接種で効果が長く持続するワクチンを開発する必要性を訴える。

 

日本から開発途上国に新型コロナウイルスワクチンの供給を目指す。既存のmRNAワクチンはマイナス20~60℃の温度管理を必要とするが、濱口氏は「開発途上国では既存のワクチンを使うことができず、室温保管に対応したワクチンが必要」と話す。

 

中長期的には「コロナをレッスンとして捉えて、作用機序の違う幅広いワクチンを国内で作っていくことを目指したい」との構想を語る。国内アカデミアから優秀な研究者を集めてスカーダで育成していく枠組みを作り、新規創薬手法(モダリティ)によるワクチンの研究開発を推し進める。

 

さらに、地球温暖化によってエボラ出血熱やラッサ熱といった致死的な感染症が国内で流行するリスクを警戒。「パンデミックは、21世紀になって10年に1回は確実に起こっている」と述べ、新興・再興感染症に対する備えもスカーダの重要課題に位置づけている。

 

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出典:薬事日報

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