希少癌治験にDCT導入~2施設とパートナー契約
国立がん研究センター中央病院は、希少癌を対象とした二つの医師主導治験でオンラインを活用した分散型臨床試験(DCT)を開始した。現在、四国がんセンター、島根大学医学部附属病院とパートナー契約を結んでおり、2施設に通院している患者は一度も同院に来院することなく治験へ参加することが可能となる。患者登録は8月から開始予定。
対象となる試験は、局所進行・再発類上皮肉腫に対するタゼメトスタットの第II相医師主導治験を含む2件。もう1件の詳細は公表されていないが、いずれも既承認薬を使用するため安全性を確保できるとし、DCTの導入を決めた。日本医療研究開発機構(AMED)臨床研究・治験推進事業の「希少がんプラットフォーム試験へのDCT導入に関する研究開発」を通じて、DCTにおけるオンライン診療等の体制を構築して行う。
タゼメトスタット試験の患者登録は8月から開始予定。
癌の治験をめぐって、地方在住患者は移動のための時間的、経済的負担で参加を断念するケースが多く、特に希少癌の治験は都市部に偏在していることから、希少癌の患者団体からもアクセス改善について強い要望が寄せられていた。
DCTに参加するためには、患者宅近くの医療機関(パートナー病院)を受診し、治験へ参加する条件を満たすか検査を行う。条件を満たした場合、オンラインでパートナー病院の主治医同席のもと、同院の医師から患者に治験に関する説明を行い、治験参加への同意を得る。
治験薬は、中央病院から患者宅に直接配送し、医師の指示のもとで内服を行う。検査は決められたスケジュールでパートナー病院で検査を受け、結果は中央病院に共有される。
パートナー病院は現在、四国がんセンターと島根大学病院の2施設と連携を結んでおり、今後全国に拡大していく予定。癌ゲノム医療中核病院・拠点病院・連携病院のいずれかである必要があり、予め、あるいは患者の申し出により施設間契約を締結する。
パートナー病院の青儀健二郎氏(四国がんセンター臨床研究推進部長)は、「地方にいながらにして最新の治療薬に触れられる可能性があるので、ぜひ利用してほしい」と患者の参加を呼びかけ、田村研治氏(島根大学病院腫瘍内科教授)も「今回の取り組みは、今後の新しい抗癌剤開発のモデルになると思う」と期待を述べた。
同院の中村健一氏(国際開発部門部門長)は、DCT導入によりコスト増の可能性を指摘する声に対し、「登録期間の短縮やモニタリングコストが削減できることから結果的にコスト削減につながるのではないか」と述べた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
国立がん研究センター中央病院は、希少癌を対象(局所進行・再発類上皮肉腫に対するタゼメトスタットの第II相医師主導治験を含む2件)とした二つの医師主導治験でオンラインを活用した分散型臨床試験(DCT)をスタート。現在、四国がんセンター、島根大学医学部附属病院とパートナー契約を結んでおり、2施設に通院している患者さんは一度も同院に来院することなく治験へ参加することが可能となります。