患者との対話、VRで視聴~臨場感ある事前学修実施
昭和大学薬学部は、入院患者と薬剤師の病棟での対話を摸した仮想現実(VR)映像教材を開発し、4年次に学内で行う実務実習事前学修で昨年度から活用している。体験した学生から、従来の2D映像に比べてVR映像を使用(画像は昭和大学提供)した方が、病棟での初回面談や症状確認を想像しやすいとの評価を得た。同じVR映像教材を使って実務実習を終えた6年生がどれだけ臨床実践能力を修得できたかの評価もできたという。
開発したVR映像のシナリオは、肺癌の疑いのため精査や加療目的で入院した患者に、薬剤師がベッドサイドで初回面談と持参薬確認を行うもの。カメラは薬剤師目線で患者と対話する模様をVRで映像化し、初回面談と症状確認で7分、持参薬確認で7分の計2本の映像を制作した。
4年次の実務実習事前学修で、病棟での担当患者との実践を想定した実習を5日間実施。その一部としてVR映像教材を使用した教育を行っている。
学生はVRゴーグルを装着して映像を視聴する。映像の中に入り込んだかのようなVRの臨場感で、患者と薬剤師の対話(画像は昭和大学提供)を体験できる。首を動かすことで視野が広がり、患者の表情や仕草、身体の様子、塗り薬やOTC薬が置かれたベッド周りの状態など周囲等を観察して非言語情報の収集も行える。
VR映像を体験した学生にアンケート調査を実施したところ、従来の2D映像に比べてVR映像を使用した方が、初回面談や症状確認の様子を想像しやすいとの評価を得た。不安な患者の気持ちやベッドサイドに置かれたOTC薬など、非言語情報の収集は42%の学生が実践できていた。
近年、薬学教育では、教育の成果を評価することも重視されている。こうした背景から、同じVR映像教材を実務実習終了後の6年生に見てもらい、患者状態の把握や持参薬の確認、非言語情報の収集を的確に行えるかを評価した。その結果、実務実習前の4年生と比べて実践的臨床能力が向上している可能性が確認できた。
同大薬学部は、5年次に診療チーム参加型実務実習を実施している。学生が指導者のもとで担当患者を受け持ち、患者状態の把握、効果や副作用のモニタリングを行い、医療チームの一員として最適な薬物治療を提案する経験を通じて、実践的な臨床能力を養成する。実務実習での学びを深めるために、VR映像を活用して学内事前学修の充実を図った。
熊本市で開かれた日本薬学教育学会大会で同大薬学部准教授の亀井大輔氏は「VR映像教材の導入は、患者応対のイメージ化や非言語情報等を収集することへの意識づけとして、教育効果がある可能性が示唆された」と強調。今後の発展として「シンプルな技能修得の目的だけでなく、患者応対スキルの修得や教育効果の評価にも応用できると考えられる」と語った。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
昭和大薬学部(東京・品川区)が、入院患者と薬剤師の病棟での対話を摸した仮想現実(VR)映像教材を開発。昨年度から4年次に学内で行う実務実習事前学修で活用されています。体験した学生からは、従来の2D映像に比べてVR映像を使用した方が、病棟での初回面談や症状確認を想像しやすいとの評価を得ているそうです。