医療

電子服薬情報提供書運用へ~誤送信防止や業務効率化 京都大学病院

薬+読 編集部からのコメント

電子トレーシングレポート(服薬情報提供書:TR)サービス「AAdE-Report」の本格運用が、京都大学病院でスタートします。紙のTRをFAXで送受信する方法に比べ、誤送信による個人情報漏洩や転記間違いを防止でき、2023年3月から開始した近隣6薬局との試行により、院内の業務効率化につながることが実証されています。

京都大学病院は、ファインデックスと共同で開発した電子トレーシングレポート(服薬情報提供書:TR)サービス「AAdE-Report」の本格運用を近く開始する。クラウドに設置したTR管理システムを介して薬局薬剤師からのTRを電子的に受け取る仕組みで、紙のTRをFAXで送受信する方法に比べて誤送信による個人情報漏洩や転記間違いを防止できる。昨年3月から近隣6薬局と始めた試行で、院内の業務効率化につながることを実証した。今年早期に京都府薬剤師会の会報などを通じて、広域の薬局に参画を呼びかける計画だ。

同サービスでは、TRを送信したい薬局薬剤師がインターネットにつながったパソコン等の端末で2段階認証によりログインし、28種類のTRフォーマットから使用するものを選び、副作用の発現状況など報告したい内容を入力する。自由に記載できる欄もある。これまで紙のTRで運用してきたフォーマットを電子化した。TRは処方箋情報に紐付いており、患者名など基本的な情報は自動的に入力される。

 

処方や検査値など、処方箋に記載された情報も閲覧できる。画面に表示されたQRコードで処方情報等を薬局の調剤システムに取り込める。

 

薬局が電子的に送信したTRは、同院薬剤部の医薬品情報・医療連携室の薬剤師が毎日午後にログインして目を通す。画面上でボタンを押すと、TRはPDF形式で電子カルテに添付される。医師は次回診察時に電子カルテを開いた時にTRを閲覧する。薬局薬剤師の提案など医師に強調して伝えたい内容は、コピーして電子カルテの自由記載欄に転記する。必要に応じて電子メール機能でも医師に内容を連絡する。電子カルテへの送信作業が終わると薬局側の画面にはカルテ送信済と表示され、TRが院内で伝達されたことを確認できる。

 

薬局薬剤師と病院薬剤師のチャット機能も備える。それぞれ気軽に質疑応答できるもので、電話に比べて不在時でも連絡できるほか、記録を残せる利点がある。

 

これまで同院は、薬局からFAXでTRを受け取るとスキャナーで画像化し、電子カルテに添付するだけでなく、TRの記載内容を薬剤師が手作業で院内システムに転記していた。手書きの自由記載内容を手作業で転記する作業には時間を要し、患者や転記内容を間違えるリスクもあった。

同院が受け取るTRは月間400件台。癌患者や吸入指導を行う患者などを対象に、病院から薬局への情報提供に力を入れており、それに応じる形でTRの送信も多い。近隣6薬局を対象にした試行開始でTRの半数強は電子化された。その結果、TR1件当たりの処理時間は試行開始前の6.9分から、開始後は4.2分へと短くなった。

 

同院医薬品情報・医療連携室の吉田優子氏(写真㊧)は「転記ミスや患者誤認の回避、業務時間の短縮によって、安全で効率的になった。TRの内容を抜き出して医師に伝えることにも時間を割けるようになり、効果的になった」と語る。

病院全体で個人情報の漏洩を防ぐため、紙での情報伝達を減らす取り組みが進んでおり、その一環として今回の仕組みを構築した。同室の上森美和子氏(写真㊨)は「セキュリティの問題は意識する必要がある」と指摘する。

 

今後の展望について、同院薬剤部長・教授の寺田智祐氏は「外来でのやりとりがベースになって、入院前の患者や退院患者の情報連携にも引き継がれていくことを期待している」と話す。

 

実際に、同サービスを病院薬剤師から薬局への退院時の情報提供や、病院間の転院時の情報提供に活用可能か検討を進めている。

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出典:薬事日報

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