
薬剤師・薬局の仕事は、一般の利用者の立場からは分かりにくい部分も多いかもしれません。薬剤師・薬局に関する素朴な疑問について、薬剤師さんに詳しく解説してもらいました!
薬剤師になって後悔していることはある?
後悔はないけれど、想像以上の力仕事で、知的で静かなイメージとはギャップがありました

薬剤師になったこと自体は、まったく後悔していません。しかし、白衣姿で薬を扱う薬剤師って意外に「体を使う仕事」が多くて、事前のイメージと実際の仕事内容には大きなギャップがあったというのが本音です。
薬剤師の仕事の基本は、調剤室での作業です。処方箋を受けてから患者さんに薬をお渡しするまで、ほとんどの時間を立ったまま過ごします。歳を重ねると、長時間の立ち仕事で腰や足が痛むこともあり、意外と体にこたえます。しかし、ここまでは想定内でした。
では、何が大変だったか。例えば、輸液製剤や精製水を卸さんが届けてくれた後の棚入れ作業や在庫移動です。輸液製剤は、1箱に10個以上入って全部で10kg以上になるものもたくさんあります。精製水は、勤務先で採用していたものでは最大1箱20kgでした。知的なイメージに反して、体力勝負の力仕事も多いのが薬剤師の仕事です。
力仕事とは違いますが、「体を使う」という意味では、手術室からの緊急払い出しというものもあります。手術中に「至急、○○を持ってきて!」という連絡が入るのですが、この時は手術室までダッシュです。
それから、病院薬剤師は本当によく歩きます。外来や病棟への医薬品の払い出しや運搬などのため、平常時で1日2万歩以上にはなっていました。私が勤務していたのは病床数90床のあまり大きくない一般病院でしたが、規模によってはもっと多くなるかもしれません。腰や足の痛みには、ボディメカニクスに基づいた立ち方の工夫、就寝前の腰痛体操、着圧ソックスで対処していました。
輸液製剤などの重い物を扱う上では、スタッフ同士の協力が不可欠です。「女性だから」「男性だから」といった性別は関係ありません。女性スタッフばかりの職場も珍しくありませんし、「今日は女性だけ」という日もあります。男性薬剤師が持病で腰痛を抱えているケースも少なくありません。大切なのは、性別に関係なくお互いの状況を理解し、チームとして助け合うことでした。作業しやすいように、置き場所を工夫することなども役立っていたと思います。こうしたことから、日頃の体調管理も仕事のうちだと思って、食事や睡眠には注意を払っていました。
肉体的な大変さがあっても、それを上回るやりがいを味わえるのが薬剤師の仕事です。患者さんから「ありがとう」という言葉をもらったり、自分の専門知識で人の役に立てたりすることは本当にうれしいもので、日々の仕事への意欲につながっています。
参考:薬剤師 – 職業詳細|厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)job tag

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
ウェブサイト:https://www.knowledge-ring.jp/