日薬 岩月会長「箱出し調剤実現が必須」~地域の医薬品安定供給に
日本薬剤師会の岩月進会長は8日、徳島市内で講演し、「地域の安定的な医薬品提供体制を構築するには箱出し調剤の実現が必要」と訴えた。医療費抑制が大きな社会課題となる中、使用期限切れで廃棄される医薬品を減らすために、「処方単位と包装単位の一致に取り組まないと持たない」と強調。既に国内外の各製薬団体に包装単位変更の理解と協力を要請していることを明らかにした。
岩月氏は、医薬品の処方単位と包装単位が一致していないことで、「例えば100錠購入して84錠調剤し、16錠が残る場合、全国6万軒の薬局で計算すると100万錠もの残薬が発生する。これは医薬品不足をさらに深刻化させる要因になる」と強調した。
医薬品を包装箱単位で調剤する箱出し調剤は、欧州など海外で導入されている。日本でも1カ月分などの処方単位に合わせた包装単位に変更することで、使用期限切れによる医薬品の廃棄は減少すると見られる。一方、製薬企業にとっては工程変更や設備投資の負担が生じるため、実現は容易ではない。
岩月氏は「全てを一度に変更するのは難しい」と述べ、「新規収載品や高額医薬品、麻薬などから段階的に変更してもらえないかと各製薬団体に要請している」と話した。
医療現場でも、医師や看護師の多くが医薬品の処方や使用の単位と包装単位にずれがあることを十分に理解していないという。岩月氏は、多職種に対しても「包装単位のことをきちんと説明し、在庫が残らないような処方日数で薬を出してもらうことも一つの方法と考えている」と説明した。
また、日薬が7月に策定した「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」にも触れ、地域の薬剤師会がその地域で流通している医薬品を把握して行政担当者や多職種と共有することで、「患者が薬を受け取れず困る事態を防げる」と指摘。
「病院や診療所と違って地域の薬剤師会はレセプト提出前の段階で患者名を匿名化し、医薬品データのみを抽出、集計することで、個人情報保護法に抵触せず地域で実際に流通している医薬品を把握できる」とし、「医薬品フォーミュラリの導入や処方単位と包装単位の一致など、在庫管理の効率化を進める必要がある。これができるのは薬剤師だけ」と呼びかけた。
人口減少が進む中、離島や過疎地域では医療機関や薬局の維持が困難になっている。一度医療インフラが失われると元に戻すことは極めて困難で、岩月氏は「過疎地域での医薬品提供体制をどのように維持するかが大きな課題」と語った。
割に合わない仕事であっても、地域の医薬品提供を担うことは、憲法第25条で定められた国民の健康を守る薬剤師の役割とし、地域に残り続けないと薬剤師の職能自体が失われてしまうと表明。「都市部の利益を地方に還元し、存続が危ぶまれる薬局を支援する仕組みも必要」と提案した。
このほか、緊急避妊薬のOTC化について岩月氏は「従来のOTCの概念を大きく変えるもの。病気の治癒や症状の軽減を目的としたものではなく、多様な社会的課題に関わる医薬品を薬局や薬剤師が担うことが適切かどうか、今後の大きな試金石となる」と投げかけた。
出典:薬事日報


薬+読 編集部からのコメント
日本薬剤師会の岩月会長が「地域の安定的な医薬品提供体制を構築するには箱出し調剤の実現が必要」と講演で訴え、処方単位と包装単位の一致に取り組むため、すでに国内外の各製薬団体に包装単位変更の理解と協力を要請していることを明らかにしました。