
医療に欠かせない職種でありながら、どこか影が薄いと言われてしまうこともある、薬剤師という哀しき存在……。「あるある話」を通して、もっと知ってください。私たち薬剤師のこと!
薬剤師が大きな達成感を得られる瞬間【薬剤師のあるあるシーン#16】

皆さんは「一包化(いっぽうか)」という調剤方法をご存じでしょうか。
薬の種類がたくさんあったり、「朝だけ」「夕方だけ」など服用のタイミングが複雑だったりすると、毎日正しく飲み続けるのはなかなか大変です。特に高齢者の場合、お手伝いしてくれる家族がいつもそばにいるとは限りません。その結果、飲み間違いが起きて薬の効果が十分に得られない……といった事態も起こりかねません。
そうした方のために、服用のタイミングが同じ複数の薬を1回分ずつ1つの袋にまとめる調剤方法が「一包化」です。
最近は、一包化を自動でする「全自動錠剤分包機」を設置している調剤薬局も少なくありません。ちなみに、以前勤めていた精神病院の薬局で全自動錠剤分包機を使ったことがありますが、結局、機械のカセットに入っていない錠剤は手作業で追加(手まき)する必要がありました。
しかし、そうした機械を設置していない薬局もまだまだ多いのが実情です。私が以前勤務していた病院の薬局もそうでした。もちろん、機械がなかったとしても、一包化が必要な患者さんはいます。高齢の患者さんでは、7~8種類もの薬を服用している方も珍しくないのですから。
例えば、そうした方の2週間分の薬を一包化する場合、まずはすべての錠剤をPTPシート(ヒートシール)から一つひとつ手作業で取り出し、機械にセットしていきます。錠剤の総数が300錠を超えることもあります。黙々と地道な作業をやり遂げ、長く連なった薬包を見たとき、「できた!」という大きな達成感が込み上げてくるのです。

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
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