国産放射性薬を実用化へ ~ 臨床試験の支援スタート 厚生労働省
厚生労働省は、2026年度から福島国際研究教育機構(F-REI)の放射性医薬品実用化推進研究事業として、放射性同位元素(RI:ラジオアイソトープ)を用いた国産放射性医薬品の創出に向け、臨床試験の支援をスタートさせる。臨床試験を担うアカデミアを1件公募して企業導出につなげ、癌などの診断・治療に用いる医薬品の実用化を目指す。
放射性医薬品は診断薬と癌治療に用いられており、最近では治療と診断を一体化した「セラノスティクス」の実用化に注目が集まっている。
F-REIは、福島復興再生特別措置法に基づき23年度に浪江町に設置され、東日本大震災発生後の福島県など東北地方の産業復興・振興に向け、被災地としての知見を生かした研究開発や人材育成などに取り組んでいる。
設置から7年間の研究開発等における中期目標として放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用を明記し、放射線とRIの利用に関する基礎基盤研究を行うこととしている。
創薬医療分野では、放射性薬剤を癌に特異的に集積させる治療法「標的アイソトープ治療」の医薬品等の研究開発に関する先行的取り組みが加速されるよう実施しつつ、新たなRI医薬品の開発なども行う。
治療用放射性医薬品市場をめぐっては、グローバル大手製薬企業が参入し、研究開発が活発化している。スイスのノバルティスがグローバルで展開する「ルタテラ」「プルヴィクト」などのベータ線を放出する薬剤が市場を席巻しているが、F-REIが狙うのはアルファ線核種標識治療薬である。
既に福島県立医科大学を代表機関とする「画期的なアルファ線核種標識治療薬の開発コンソーシアム」で、疾患の診断・治療に役立つバイオマーカーやそのバイオマーカーに特異的に作用する化合物・抗体の探索、候補化合物の一部をアスタチン-211などアルファ線放出核種で標識することによるRI標識化合物の設計・合成、RIで標識されたRI薬剤の非臨床試験などに着手している。
そのため、厚労省医政局は26年度予算案として1億8800万円を計上し、癌など国民の関心が高い疾患の診断・治療を目的に、アルファ線放出核種等を用いた放射性医薬品に関する臨床試験の実施を支援する。
臨床試験を担うアカデミアをF-REIが1件公募し、福島県内の医療機関で臨床試験を行い、製薬企業への導出につなげたい考えだ。
臨床試験の開始に向けた進捗として、F-REIは「26年度予算案成立後に開始できるよう公募に向けた準備を進めている」と説明。「研究開発した医薬品が社会実装され、放射線に対する印象を良いものにしていきたい」と目標を語っている。
医政局研究開発政策課は、「どれほどの期間が必要かは公募してみなければ分からないが、継続的支援が必要となる」として毎年度予算を要求する見通しを示しつつ、中期目標期間内での達成については「期間終了前に臨床試験が終わる場合はその時点で事業を止めるのか、新たに公募を行うかは未定」としている。
東北地方の産業復興・振興というF-REIの設立目的を踏まえ、厚労省も「同機構を支援することで、福島で開発された医薬品を世の中に送り出したい。放射線にはネガティブなイメージを持つ人が多いが、医薬品分野で役立つことを伝えられれば」との考えを示している。
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出典:薬事日報



薬+読 編集部からのコメント
厚生労働省が、2026年度から福島国際研究教育機構(F-REI)の放射性医薬品実用化推進研究事業として、放射性同位元素(RI:ラジオアイソトープ)を用いた国産放射性医薬品の創出に向け、臨床試験の支援をスタートさせます。