薬学的有害事象等防止加算は、2026年度調剤報酬改定で新設された調剤管理料の加算です。患者さんの副作用や相互作用、投与禁忌などのリスクを早期に把握し、薬剤師や薬局が積極的に薬学的管理を行うことを評価しています。本記事では、薬学的有害事象等防止加算が新設された背景や調剤時残薬調整加算との違いについて解説するとともに、点数や算定要件、レセプト摘要欄への記載事項についてもお伝えします。

1.薬学的有害事象等防止加算とは?
薬学的有害事象等防止加算とは、併用薬との重複投薬や相互作用などを確認した結果、疑義照会によって処方変更がされた場合に算定する調剤管理料の加算です。2026年度調剤報酬改定により、服用薬の一元管理に基づく薬剤調整の評価として新設されました。
また、薬学的有害事象等防止加算、および調剤時残薬調整加算の新設に伴い、重複投薬・相互作用防止加算、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は廃止されています。
参考:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
1-1.2026年度調剤報酬改定で新設された背景
2026年度調剤報酬改定で薬学的有害事象等防止加算が新設された背景としては、「オンライン資格確認の普及によって、重複投薬や相互作用の確認を機械的に行えるようになっているのではないか」との指摘があったことが挙げられます。
重複投薬や禁忌薬剤を機械的にチェックする環境が整ってきたことを前提にすると、従来の重複投薬・相互作用防止加算や在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の評価を見直す必要があります。そのため、これらが廃止され、薬学的有害事象等防止加算が新設されることとなりました。
参考:調剤について(その2)|厚生労働省
1-2.調剤時残薬調整加算との違い
薬学的有害事象等防止加算が重複投薬や相互作用の確認による処方変更を評価する加算であるのに対し、調剤時残薬調整加算は7日分以上相当の残薬調整を行った場合に算定できる加算です。
算定点数や区分は類似しており、いずれも在宅患者さんに対して実施した場合やかかりつけ薬剤師による対応は50点、その他の場合は30点を算定します。
2.薬学的有害事象等防止加算の点数
薬学的有害事象等防止加算は、薬剤服用歴や電子処方箋の仕組みを活用して、併用薬との重複投薬や相互作用などを確認し、処方医に疑義照会を行った結果、処方変更が行われた場合に以下の点数を算定します。ただし、残薬調整による処方変更は除きます。
| 区分 | 点数 | |
|---|---|---|
| イ | 在宅患者さんへ処方箋を交付する前に処方内容を処方医に相談し、処方に係る提案が反映された処方箋を受け付けた場合 | 50点 |
| ロ | 在宅患者さんの処方変更が行われた場合(イの場合を除く) | |
| ハ | かかりつけ薬剤師による照会の結果、処方変更が行われた場合(イおよびロの場合を除く) | |
| ニ | イからハまで以外の場合 | 30点 |
3.薬学的有害事象等防止加算の算定要件
薬学的有害事象等防止加算の主な算定要件は以下のとおりです。
| 算定タイミング | ● 処方箋受付1回につき算定 ● 同時に複数の処方箋を受け付け、複数の処方箋について薬剤を変更した場合であっても、1回に限り算定 |
|---|---|
| 算定が認められる処方変更の内容 | (ア)併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む) (イ)併用薬、飲食物などとの相互作用 (ウ)その他、薬学的観点から必要と認める事項 |
| 区分ごとの対象患者 | (ア)薬学的有害事象等防止加算のイは、以下を算定している患者さんについて、処方箋の交付前に処方しようとする医師へ処方に係る提案(残薬調整に係るものを除く)を行い、提案に基づく処方内容の処方箋を受け付けた場合に算定 ● 在宅患者訪問薬剤管理指導料 ● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料 ● 在宅患者緊急時等共同指導料 ● 居宅療養管理指導費 ● 介護予防居宅療養管理指導費 |
| (イ)薬学的有害事象等防止加算のロは、以下を算定している患者さんについて、処方変更が行われた場合に算定 ● 在宅患者訪問薬剤管理指導料 ● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料 ● 在宅患者緊急時等共同指導料 ● 居宅療養管理指導費 ● 介護予防居宅療養管理指導費 |
|
| (ウ)薬学的有害事象等防止加算のハは、以下を算定している患者さんについて、処方変更が行われた場合に算定 ● 服薬管理指導料「1のイ」または「2のイ」 |
|
| (エ)薬学的有害事象等防止加算のニは、(ア)から(ウ)まで以外の場合において、処方変更が行われた場合に算定 | |
| 情報提供・記録 | ● 重複投薬が生じる理由を分析し、必要に応じてその理由を処方医へ情報提供 ● 処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容を薬剤服用歴などに記載 |
| 算定できないケース | 調剤管理料を算定していない場合 |
4.薬学的有害事象等防止加算のレセプト摘要欄への記載事項
薬学的有害事象等防止加算を算定する場合、処方医に連絡・確認を行った内容の要点をレセプト摘要欄に記載することとされています。内容ごとのシステム用コードは以下のとおりです。
| レセプト電算処理システム用コード | レセプト表示文言 |
|---|---|
| 820101910 | 内容の要点(薬学的有害事象等防止加算):同種・同効の併用薬との重複投薬 |
| 820101911 | 内容の要点(薬学的有害事象等防止加算):併用薬・飲食物等との相互作用 |
| 820101912 | 内容の要点(薬学的有害事象等防止加算):過去のアレルギー歴、副作用歴 |
| 820101913 | 内容の要点(薬学的有害事象等防止加算):年齢や体重による影響 |
| 820101914 | 内容の要点(薬学的有害事象等防止加算):肝機能、腎機能等による影響 |
| 820101915 | 内容の要点(薬学的有害事象等防止加算):授乳・妊婦への影響 |
| 830100984 | 内容の要点(薬学的有害事象等防止加算):その他薬学的観点から必要と認める事項;********** |
参考:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省
4-1.薬学的有害事象等防止加算のイを算定する場合
薬学的有害事象等防止加算のイを算定する場合、処方箋が交付される前に処方医に対する相談を行った年月日をレセプト摘要欄に記載することとされています。ただし、残薬調整に関するものは含まれません。
| レセプト電算処理システム用コード | レセプト表示文言 |
|---|---|
| 850100601 | 相談年月日(薬学的有害事象等防止加算のイ);(元号)yy“年”mm“月”dd“日” |
また、薬剤の変更内容についてもレセプト摘要欄に記載することとされています。
| レセプト電算処理システム用コード | レセプト表示文言 |
|---|---|
| 820101916 | 薬剤の変更内容(薬学的有害事象等防止加算のイ):同種同効薬への変更 |
| 820101917 | 薬剤の変更内容(薬学的有害事象等防止加算のイ):剤形の変更 |
| 820101918 | 薬剤の変更内容(薬学的有害事象等防止加算のイ):用量の変更 |
| 820101919 | 薬剤の変更内容(薬学的有害事象等防止加算のイ):用法の変更 |
| 830100985 | 薬剤の変更内容(薬学的有害事象等防止加算のイ):その他;****** |
参考:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省
5.薬学的有害事象等防止加算の算定は質の高い医療の提供につながる
薬学的有害事象等防止加算は、在宅患者さんやかかりつけ薬剤師を持つ患者さんに対しては50点、その他の患者さんに対しては30点を算定します。この点数の差は、患者さんの薬物治療に対してより深く関わっていることへの評価とも受け取れるでしょう。
特に、在宅医療やかかりつけ薬剤師については、患者さんの生活背景や服薬状況、併用薬や残薬など多くの情報を把握・管理した上で薬学的判断を行うことが求められます。薬学的有害事象等防止加算を算定することは、より質の高い医療の提供につながるといえるでしょう。

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。
あわせて読みたい記事



