小学校から「くすり教育」を ~ 市販薬の乱用背景に要望 日本薬剤師会、くすりの適正使用協議会
日本薬剤師会とくすりの適正使用協議会(RAD-AR)は、2028年度以降に順次実施予定の次期学習指導要領をめぐり、小学校から「くすり教育」を導入するよう求めている。一般用医薬品や処方薬の過剰使用によるオーバードーズが社会問題化する中、小学校段階から医薬品の正しい使い方を系統的に学べるよう教育の充実を要望。10年前の改訂では実現しなかった小学校への導入を改めて働きかける。
学習指導要領は概ね10年間隔で改訂される。28年度以降に実施予定の次期学習指導要領は24年12月に諮問され、今年8月に審議のまとめが公表された。現在、パブリックコメントを募集しており、年内に答申が行われる予定だ。
日薬が文部科学省に提出した要望は、体育・保健体育における「医薬品の正しい使い方に関する教育の充実」「市販薬の過剰使用問題への対応」「学校薬剤師の活用」など4項目。23日付で各都道府県薬剤師会長に通知し、意見を提出するよう要請した。
現行の学習指導要領では、中学校、高校で医薬品を正しく使用することや主作用・副作用、承認・販売の制度などについて学ぶことが記載されている一方、小学校には医薬品に関する記述がない。日薬は、小児を含む幅広い年齢層で医薬品が身近に使用されているとして、小学校段階から発達に応じて正しい使い方を系統的に学べるよう追記を求めた。
市販薬の過剰使用についても、その危険性や依存性を小学校段階から学ぶことが重要と指摘。覚醒剤などの薬物乱用だけでなく、市販薬の過剰使用についても小中高の学習指導要領に追記するよう求めた。また、緊急避妊薬のOTC化を背景に、教育現場での性教育実施など子供が自他を大切にし、安全に生きる力を育む「生命の安全教育」の充実も要望した。
一方、次期学習指導要領では教員の働き方改革も一つのテーマとなっている。小学校では担任教員が授業を担当するため、新たなくすり教育の追加は教員の負担増につながるとして、教育現場に一定の抵抗感もあるという。そこで日薬が提案しているのが約3万人に上る学校薬剤師の活用だ。
学校薬剤師部会を担当する富永孝治理事は、「中学校・高校でも学校薬剤師や教員の関与が十分でなく、指導要領にあっても十分に教育が実施されていない」と指摘。「小学校では健康づくりを中心に据えつつ、発達段階に応じて医薬品の適正使用教育を導入し、薬の正しい使い方を系統的に教えていく体制が必要」と訴える。
RAD-ARも、小学校の学習指導要領に医薬品を正しく使うことに関する記述を加え、小中高を通じた系統的なくすり教育の実現を求めると共に、「薬物乱用」の項に医薬品の乱用を追記するよう要望する。
俵木登美子理事長は、「攻めの予防医療を国が強力に推し進める中で、国民のヘルスリテラシーの向上やセルフメディケーションの推進に向け、薬についての学びの場を中高だけではなく、小学校でも実施すべき」と強調。薬物乱用についても「小学校ではシンナー、中学校では覚醒剤や大麻を取り上げているが、医薬品による薬物乱用もしっかり取り上げていただきたい」と要望した。
両団体の要望は当初、次期学習指導要領への反映が難しいと考えられていたが、オーバードーズ問題への社会的関心の高まりを背景に状況に変化も見られる。薬剤師の本田顕子参議院議員が自民党政務調査会文部科学部会長を務めていることもあり、小学校段階でのくすり教育が実現するか注目される。
出典:薬事日報


薬+読 編集部からのコメント
日本薬剤師会とくすりの適正使用協議会(RAD-AR)は、2028年度以降に順次実施予定の次期学習指導要領をめぐり、小学校からの「くすり教育」の導入を求め、医薬品の正しい使い方を系統的に学べるよう教育の充実を要望しています。