化血研に業務停止110日‐過去最長、製販業取消し相当
血液製剤など8製品停止へ
厚生労働省は8日、化学及血清療法研究所が長年にわたって国の承認と異なる方法で血漿分画製剤を製造し、当局の査察に対して不正な製造記録を作って組織ぐるみで隠ぺいしてきたとして、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき業務停止命令を出した。停止期間は18日から5月6日までの110日間。製造販売業許可取り消し相当の悪質な事例に相当すると判断し、これまで過去最長だった105日間を上回る厳しい処分を下した。化血研は、製造販売する血液製剤、ワクチン等35製品のうち8製品を出荷できなくなるが、他の製品で代替できない27製品は対象から外す。
行政処分の対象となったのは、長年にわたって血漿分画製剤を承認書と異なる方法で製造し、虚偽の製造意図書、製造記録を作り、厚労省の査察に対して組織的に隠ぺい工作を行ってきた事実。さらに昨年9月、厚労省が行ったワクチン等に関する報告命令に対し、適切な報告を行わなかったのみならず、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の立入調査に虚偽の製造記録を提出したことである。
厚労省は、これら不正が重大な医薬品医療機器等法違反に当たると認定し、製造販売業許可の取り消し処分に相当する悪質な事例と判断。ただ、直ちに製造販売業の許可を取り消した場合、多くの血液製剤、ワクチン等が患者や国民に届かなくなることを考慮し、薬機法に基づく行政処分で対応することとし、化血研に過去最長となる110日の業務停止命令を出した。
今回、過去最長の業務停止命令を出したことについて、医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の須田俊孝課長は「本来、製造販売業許可の取り消しに相当する悪質な事例であることを受け止めてもらい、ガバナンスを備えた組織で、きちんと製剤を供給していく体制を抜本的に考えてほしいということ」と説明した。
さらに、「守るべきは製剤であって化血研の組織ではない。組織を優先させることは許されない」と厳しく指摘した。
その上で、化血研が薬害エイズ事件の被告企業であることに言及。「違法行為がルーチン化し、薬害を経て見直されてきた薬事法の歴史を全く無視する形で、組織ぐるみで平然と隠ぺいを繰り返してきた」と批判し、こうした事実が過去最長の業務停止命令を出した背景にあると説明した。
厚労省が長年にわたって不正を見抜けなかったことの責任については、「重く受け止めて反省しなければならない」との認識を述べるにとどめた。
今回の業務停止処分により、化血研は製造販売している35製品のうち、血液製剤6製品(乾燥濃縮人アンチトロンビンIII、人免疫グロブリン、トロンビン、人血清アルブミン、抗HBs人免疫グロブリン[抗HBs抗体]、抗破傷風人免疫グロブリン[破傷風抗毒素])、ワクチン等2製品(沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド、沈降破傷風トキソイド)の計8製品の出荷を停止する。
一方、他に代替製品がない乾燥濃縮人血液凝固第VIII因子、生体組織接着剤など血液製剤8製品、インフルエンザHAワクチンや沈降精製百日ぜきジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン、組み換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)などワクチン等19製品の計27製品については対象から外す。安全対策業務、製造設備の維持管理業務なども除外する。
厳粛に受け止め、深くお詫び‐化血研・宮本理事長
過去最長の業務停止命令を受け、化血研の宮本誠二理事長は記者団に、「厳粛に受け止めている。申し訳なく、皆さま方に深くお詫び申し上げる」と謝罪した。
塩崎恭久厚生労働相が同日、「化血研という組織で製造販売することはない」と発言し、組織の抜本的な見直しを求めている件については、「当然いろいろなことを考えているが、大臣の指示を受けて十分に検討していきたい」と述べるにとどめ、事業譲渡や経営統合の可能性についても言及しなかった。
110日という過去最長の業務停止命令を受けた理由について、宮本氏は「医薬品の事業者として、やってはならないことをした事実に対する110日」との認識を示した。
血液製剤を使用している患者やワクチンを接種している人に対しては、「私どもが事業として製造販売している血液製剤、ワクチンは、国民の健康、患者さんに不可欠な製品。そういう重要な製品において、こうした事態を招いて本当に皆さんにご迷惑をかけていることは深くお詫びしたい」と改めて謝罪した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2016年1月8日、厚生労働省は国の承認とは異なる方法で血漿分画製剤を製造し、組織ぐるみで隠蔽してきたとして化学及血清療法研究所に過去最長の110日間となる業務停止命令を出しました。なお代替品のない27製品は、出荷停止の対象から外されるとのことです。